請愛【しょうあい】
翌日、麗加は会う約束をしていた店である≪light≫という喫茶店の前に来た。
待ち合わせより5分程、早く着てしまった麗加は店の前にいるのは迷惑だと思い、店内へと入る。チヤリンと客を知らせる鐘が店の中に響く。
「いらっしゃいませ」
聞いたことのある声に麗加は声の主を探す。
「来てくれて嬉しいです。ありがとうございます」
ウェイトレスの格好でカウンターに立つのは、昨日会った昴の姿。
「いえ、お約束をしましたので来るのは当たり前です。それより、ここで働いているんですね」
「はい、でも見た通り稼ぎはありませんがね」
苦笑いを見せる昴の目の前に座る麗加。
麗加は辺りを見渡すと、客は自分以外いないのに加え店員さえいない。
店の雰囲気は悪いものではなく、少し暗めの照明に茶色が映え白の色は強調することで、シックで落ち着く。
だが、人が入ってこないのは周りのせいだろう。
この店の周りにあるものといえば、ゲームセンターや夜の店というものばかりで、近よりがたい通りとなっている。客が来ないのも頷ける。
「何かご注文はありますか?お金はいりませんよ」
「でも、それでは……」
「お気になさらず」
ニコリと営業スマイルを見せる昴。麗加は強くお金を払うとは言えなかった。
「では、コーヒーを下さい」
「分かりました。少々、お待ちください」
昴はカウンターで作業をする。
「麗加さんはおいくつなんですか?」
手を動かしながらも話すときは目を合わせて話す。
「23です」
「え、同い年だったんですか!?僕も23なんですよ」
「そうだったんですね。大人びいて見えたので、てっきり私の2・3コ上なのではないかと思っていました」
「それは僕のセリフですよ。綺麗過ぎて同い年には見えませんでした」
2人は目を合わす。
「プ、アハハ」
「ウフフ」
2人して声を出して笑っていた。店内に誰もいないため笑い声は店内に鮮明に響く。
久しく声を出して笑ったことがなかった麗加の中で、何かが目を覚ましたような足音が聞こえたような気がした。




