請愛【しょうあい】
その様子を人通り見ていた麗加は、男が店の屋根から出ようとしたときに傘を男の上でさしていた。
「お入りください。先程、女の子に傘を渡して傘が無いのでしょう?私で良ければ目的地まで送りますよ」
男は麗加を見て固まる。それもそうだ、目の前に麗しい女が立っていたら目を奪われてしまう。
「あの~……」
「あ、すいません。お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えてもよろしいですか?」
「えぇ、勿論いいですよ」
そして、2人は1つ傘の下を歩いていく。話題は先程の出来事について。
「自分の傘をお渡しするなんて、優しいのですね。私には真似出来ないないです」
「いえ、僕は大したことはしていませんよ。僕は僕のやりたいようにやっているだけです」
「……やりたいようにやる、ですか」
「ん?何か言いましたか?」
「い、いえ。何でもありません」
ボソッと呟いた言葉を男は拾うことはできなかった。麗加は無意識のうちに呟いたことに自分自身、驚いた。
それだけ麗加の心には響く言葉だったんだろう。
「そういえば、まだ名前を言ってませんでしたね。僕は黒川 昴です。日の下に卯と書いて昴です」
「私は麗しいに加えると書いて麗加です」
「名前通りのお人ですね。僕、麗加さんを見た時、見惚れまちゃいました」
あどけない笑顔を見る限り、お世辞ではないと言える。素直な男と窺える。然う斯うしているうちに昴が目的とする店へと着いた。
「ここまでありがとうございます。お礼がしたいので、またお会いできないでしょうか?」
「お礼なんて要りませんよ」
「いいえ。僕がしたいんです。させてください!!」
「………分かりました」
昴の強い目に負けた麗加は、また昴に会うことを約束する。
「ありがとうございます。お暇な時間はありますか?」
「13~15時の間であればいつでも」
「では、明日の13時30分。ここでお待ちしております」
はい、と二つ返事をすると2人は別れた。




