請愛【しょうあい】
ーーー彰宏と麗加が出会ったのは1ヶ月ほど前。
婚約の話を持ち掛けてきたのは野沢グループからだった。野沢グループは銀行を運営しており、西グループと手を組むことで野沢グループは経済的な面や仕事をしていくうえで、利益があるから、話を持ち掛けてきたのだ。
その利益は野沢グループだけではなく、西グループにもあるため、二つ返事で決まったこと。そこに子供の意見なんてあるはずもない。
政略結婚なんて当たり前の世界。
小説や漫画の中では親に歯向かい、政略結婚に抗い運命の人と共に一生を過ごしパッピーエンドで終わる話ばかり。だが、現実は甘くない。
金や地位、権力を使いありとあらゆる手を使ってでも、破産させないようにしなければならない。そのため、恋愛という茶番に付き合う時間なんてないと思っていた。
しかし、麗加は出会ってしまった。本気で好きだと思える人に……。
ーーーそれは彰宏と出会う1週間前のことだった。
家にいることが嫌いな麗加は、散歩をするためによく街の方まで行っていた。
お金持ちのお嬢様だから、普通なら護衛を付けるものだが、それを嫌う麗加は無理を言って1人で散歩できるようにしてもらったのだ。
その日は天気予報士の言う通り、夕方から雨が降ってきた。麗加は持ってきた傘をさして街を歩く。傘を持って来ていない人が雨宿りのために店の屋根の下に集まる。
そこに中学生ぐらいの女の子がいた。雨と腕時計と交互に見ていることから、急用があるが傘がないため戸惑っている様子だと分かる。
そのとき、1人の男が女の子に自分の傘を差し出し、使うように促したのだ。半ば強引に傘を渡し、女の子は受け取ると足早に男を通り過ぎていった。




