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請愛(しょうあい)  作者: ZERO
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請愛【しょうあい】

叶うのなら、貴女と……。

叶うのなら、貴方と……。

____許して……。



女はただ、許しを請うことしかできない。




ーーー高級なドレスを身に纏い、髪もメイクも決まって女を美しく魅せている。



「お綺麗ですよ、麗加様」


「…ありがとう」



作った笑顔で鏡越しにメイドに見せた。女は鏡に映る自分の姿に少しだけ、顔を歪ませる。


女の名前は西(にし) 麗加(れいか)、23歳。ホテル業界の中で5本の指に入る社長を父に持つ。簡単に言えば、金持ちのお嬢様ということだ。



___コンコン。




「はい」


「失礼します。麗加様、そろそろお時間です」


「今、行くわ」



麗加は重い腰を上げて、迎えに部屋まで来た父親の秘書の後に続き部屋を出た。いってらっしゃいませ、とメイド達の中を歩いて行く。




行きたくなんてない。それが麗加の気持ちだ。だが、そんな言葉が通る筈がないことは麗加がよく知っている。


車へ乗り込むと目的地へと走っていく。運転手と会話を交わすことはない。ただ黙って車から見える建物や通り過ぎる人を悲観的に見るだけ。



車を走らせて20分程して、大きな屋敷へと入っていく。玄関前に車を止められ、車から降りると支配人が麗加を迎え入れる。





「お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」




麗加は案内されるがままに歩みを進めて行く。すると、大きな扉が目の前に現れる。支配人がその大きな扉を開き、中へと促す。



色とりどりのドレスを身に纏う女やスーツなどを身に纏う男が、自分を着飾って見せている。

名のある企業や財閥の娘や息子、その親などが集まっていて聞き慣れた会話が飛び交う。それを耳にするたびに麗加は吐き気を覚えるほど、自分の立っている立場というものを嫌っている。



周囲の話し声や笑い声をシャットダウンするように、テーブルに並べられた料理やスイーツに目を映して食べたい物を皿へと乗せていく。



「麗加さん」



低く艶のある声が麗加の耳に届いた。


声の主の方へ顔を向けると、そこにはタキシードを着こなした男が立っていた。



「彰宏さん」


「今日もすごくお綺麗です。白のドレスを着こなすことが出来るのは貴女以外いませんよ」


「大袈裟ですよ」




麗加は笑顔で対応する。


野沢(のざわ) 彰宏(あきひろ)、それが彼の名前だ。野沢グループの次期社長となる財閥の一人息子。歳は麗加の1つ上。艶のある黒髪は無造作に流されていて、前髪は目にかからないように切られている。

目はクッキリと二重でまさに好青年という言葉がしっくりくるような男。



若きイケメンの次期社長で通っている。




「彰宏さんも、タキシードを着こなされていて、格好良いですよ」


「麗加さんに格好良いなんて言われると嬉しいな」



クシャッとした笑顔を見せれば、少しばかり幼さが感じられる。麗加が作った笑顔で彰宏に応じた後、会場の照明が消えマイクを握る司会者の男を照らし出した。


「大変長らくお待たせいたしました。主催者でございます、野沢グループ現社長の野沢(のざわ) 貴史(たかし)様と奥様の景子(けいこ)様のご登場です!」



大きな拍手の中、照明に照らされながらステージの上を歩く男女。スタンドマイクの前へと進めば、拍手は段々と小さくなり静かになる。そして、紹介された野沢貴史が口を開く。




「皆様、本日は私共が開催するパーティーにご出席くださいまして、誠にありがとうございます。この場をお借りいたしまして、皆様にご報告がございます」



貴史の言葉に会場が騒めきだす。


麗加は持っていた皿をそっとテーブルへと置いた。


会場に響く声が貴史から景子へと変わる。



(わたくし)達の息子、野沢彰宏と西グループのご令嬢でございます西麗加様との結婚をご報告いたします」



照明が麗加と彰宏を照らす。



「お二方、どうぞ。ステージへお上がり下さい」



司会者の男がステージへと促す。

足を一歩前へ出そうとした時、手を差し伸ばされる。彰宏を見れば、どうぞと目で訴えていた。麗加は作った笑顔を貼り付け、その手に自分の手をそっと乗せた。



2人は作られたステージまでの道を、大きな拍手を浴びながら進んでいく。ステージに上った麗加が見たもの、それは好奇な目。そして、焦りや妬みと言った黒いもの。




「尚、結婚式は7月の予定です。詳しく日時が決まり次第、ご連絡させて頂きます。ご報告は以上です。皆様、今夜は楽しんでいってください」



軽く頭を下げれば再び拍手が鳴り響いた。麗加にはただ、嫌な雑音を聞いているようで、耳を塞ぎたくなった。









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