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W WORLD I    ※投稿休止中  作者: 織音りお
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第3章 第1話 「さんにんめ」

第3章に入りました!


風音、きらら、そして気になる

3人目の“運命の魔力者”は一体誰なのか。


楽しんで頂けると嬉しいです(*^^*)

 風音が三人目の“運命の魔力者”を見つけたのは、ちょうど梅雨が訪れた頃だった。

 五月初旬の連休明け、魔の実技検査と課題提出を無事生き抜いた生徒たちにとって、じめじめと鬱陶しいこの季節は何かと気だるい。学内はすっかり中だるみの色に染まっていた。

 

 きららと島原、そして垣内の三人も無事に実技検査は(課題については察して欲しい)乗り切った。

 風音の特訓の成果か、三人とも“鍵と錠”の魔法は完璧。島原に至っては、障害を飛び越えるところで自ら土の橋を創生し、教師陣を大いに驚かせた。

 風音も風音で、期待を裏切らないあたりがさすがだ。風を司る魔力者だからというのもあるが、飛行魔法はお手のもの。トップの速さで実技検査をクリアし、日に日に神童の名を広めている。


「ーきらら、あの人って何て言うの?」


 唐突に風音が聞いてきたのは、そんな雨の日。

 きららと二人で、教師に頼まれた薬品を取りに化学薬品室へ向かう途中だった。


「えー、誰ぇ?」

 きららが風音の視線の先を追う。

「ほら、窓際後ろから二番目の、毛先だけ小紫色したあの人。ワインレッドに近い色の縁ありメガネしてる」

 風音が示す先には、まさに言った通りの女生徒が頬杖をついて授業を受けている。

「あー、なんか知ってるかも!確か変わった苗字してるんだよねー。何だっけ、あぁそうだ、霙谷みぞれだにとかだったかなぁ」

「ふぅん。霙谷みぞれだにっていうと、大手医療機器メーカーの?」

 

 霙谷みぞれだに、という苗字はあまり聞かないものなだけに、風音の記憶に残っていたその企業と結びついた。編入試験の面接対策として、大手企業名もかじったおかげだ。

 霙谷医療機器といえば、世界でも知られた大企業だったはず。独自の研究施設も広大な土地を誇り、様々な医療分野で功績を残している。


「そう・・・なの、かな?」

 きららが微妙な表情で頷いた。

 

 ーあぁ、知らなかったのね。


「ま、魔力があるってだけじゃやっていけないものね、この学校」

 長い廊下に飾られた絵画の数々を一瞥して、風音はふっと息を吐いた。

 広い敷地に、研究施設の数々、生徒たちの寮。それを守る管理体制も然り。それでいて、学校内いたるところに名画や彫刻が置かれている。学長の趣味なのかは分からないが、そこそこ値が張るものばかりだろう。

 国から補助金が出ているとはいえ、この学校の維持には相当なお金がかかっている。


「確かに、お金持ちさん多いかもなぁ〜」

 きららはまるで他人事だ。

「で、どうして霙谷みぞれだにさん?あの人がどうかしたの?」

「あー、それはね、」

「あ、まさかあの人、風音ちゃんにガンつけてきたとか⁉︎」


 ーは?


「それで風音ちゃんは後で仕返ししちゃおうとかそういう感じ?」

「ー・・・は?」

 

 今度は声に出た。


「いや何かもう風音がおとなしいことは薄々知ってたけど、まさか昔の女番長スケバンみたいな真似するとは思わなかったってゆーか」

「悪いんだけどきらら、何の話よそれ。意味分かー」

「あっ、ごめん違った、逆⁉︎気に食わないから先に名前調べておこうとか恐ろしいこと考えてーって痛ァ!」

「勝手に話進めて迷走しないの!」

「えっ、どっか違ったの!」


 風音にはたかれた頭を押さえながらど天然な表情かおで聞き返すきららに、風音は沈痛な面持ちでつぶやいた。

女番長スケバンって・・・まさかそこまでとはね」

 まぁきららはお鈍さんだから仕方ないか、と続けた言葉は投げやりだ。その様子にきららがぷくっと頬を膨らませる。

「ごめんねあたし頭悪いから理解できなくて!しかもプラスで妄想癖あるからそうなっちゃうんだもん文句ある⁉︎」

「はいはい。ちゃんと説明してあげるから、静かにしてもらえる?授業の邪魔になるでしょう?」

「先に話振ったのは風音ちゃんだよ!」

「ええ。そうよ?名前を聞いて説明しようと思ったけれど、一人で妄想繰り広げてたのはきららでしょう。それでわたしに文句を言われてもねぇ」

「・・・っ!」


 冷静な風音の言葉に、きららは返すことができずむすっと黙り込んだ。

 どうせ勝てるわけがない、相手は風音だ。

 それなら無駄に体力気力を使うより、潔く黙ったほうが利口だ。風音が編入してきて一ヶ月で学んだ。


 “ー本当に大事で譲れないこと以外で言い合って意地はってもねぇ。相手が上手なら、無駄に疲れるやり方はあまりオススメしないけど”


 今のところ、きららの対風音勝率はもちろんゼロだ。


 はぁ、ときららは肩を落とした。

 風音がきららの思っていた“お嬢様”と全然違っていることは、だいぶ最初のあたりで分からされた。

 そもそも、学校内を案内して魔獣と闘ったあたりから、風音はきららに対してあまり“お嬢様”ぶらなくなった気がする。

 

 まぁ、あたしに対して本当の自分で接しているんだったら、いいのかな?


「ちょっときらら、何廊下で立ち止まってるの。いくら原液じゃないとは言っても危険薬ばかりなんだから、手伝ってよ」

 いつのまにか化学薬品室に入っていた風音が、ひょいと首だけを覗かせた。真っ直ぐな髪の毛がさらりとこぼれる。

「あっ、ごめん今行くね」

 きららは慌てて風音の元に向かった。




***




「それで、さっきの続きなんだけど」

 

 放課後、きららが帰る支度をしていると風音が切り出した。

「さっきって・・・えーっと、」

霙谷椿みぞれだにつばきについて」

「ああ、そーだったね!ーって名前覚えるの早すぎだよ」


 あたしなんて未だにクラス全員の名前知らないし、ともごもご口の中でつぶやいてみたけれど、風音は容赦がなかった。


「それは確実にきららの記憶力と意識の問題ね。ま、わたしは得意ではあるけれど」

「全体的に得意じゃん、風音ちゃん。なに、その記憶力」

「え?それは努力の賜物じゃない?向こうの世界にいたときから、親戚やら高位の家柄の家々と面識があったからね。必死に覚えなきゃいけなかったのよ。そのおかげかしらね?」

 そう言って肩をすくめる風音は、憎らしいほどに綺麗。

 風音の中に本物のお嬢様を見る男子どもが多いのも、まあ、頷ける。実際口を開かなければ、あくまでも口を開かなければ本当に才色兼備という言葉が似合うのだから。

 

「きらら、聞いてる?」

「あ、うっ、うん!もちろん!」

 慌てて頷く。

 風音の冷たい視線を避けながら、きららはそれで、と続きを促した。


「話を戻して単刀直入に言うとね、霙谷椿みぞれだにつばきーあの人、わたしの探している“運命の魔力者”だと思う」


「ーえっ⁉︎」

 風音から出た思いもよらぬ言葉に、きららは思わず身を乗り出した。

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