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W WORLD I    ※投稿休止中  作者: 織音りお
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第2章 第4話「Let's train!:中編」

 「貫け!《バレット・ショット》‼︎」

 島原の手から放たれた無数の弾丸が、二匹のゴブリンの体を貫く。それはゴブリンの小さな体に穴を空けるが、二匹は動じない。何事もなかったように、平気な顔で向かってくる。

 このゴブリンの体は、どうやら霧のようになっているらしい。貫かれて飛散した水滴は消えるが、その体はすぐに元通りになってしまう。

「くっそ、どーすりゃいいんだよっ!」

 キリのない攻撃をかわしながら、島原は顔を歪めた。

「コイツらには何も当たんねーじゃん!」

 ゴブリンは薄い羽根を羽ばたかせると、島原の頭上に飛び上がる。

「島原危ないっ!」

 きららの叫びと同時に、ゴブリンがものすごい勢いで突っ込んできた。小さいが鋭い爪がギラリと光る。

「・・・・・・っ!」

 島原は床を転がって、間一髪でそれを避けた。

「うんうん。動きはすごくいいわ。島原君って、運動神経いいのね」

 風音は楽しそうに頷いた。見れば、何やら手帳にメモを取っている。

 そして壁にかけられた時計を確認すると、風音は両手を口元にあてた。

「島原くーん!」

「なんだよっ⁉︎・・・くそっ、防御魔法!《ファスト・ガード》!」

 ゴブリンの放った霧の矢が、島原の透明な盾に跳ね返された。そこまで強度はないが、瞬時に形成できて誰でも使えるこの防御魔法は、なかなかに有用性が高い。

「普通の攻撃では、霧属性のゴブリンは倒せないわよ!あなたの属性魔法を使わなきゃ!」

「属性魔法⁉︎・・・ってぇな!《バレット・ショット》!」

 続けざまに攻撃を加えながら、島原が声を張り上げる。

「神宮寺さん!属性魔法って、土の魔法ってことか⁉︎」

「そう!島原君の属性、土属性の魔法!」

「っしゃ、やってみる!」

「頑張って!」


 島原陸斗の属性、土属性の魔法は、攻守でいえば守りに優れた魔法だ。魔法使いによって個人差はあるが、土属性の魔法には規模が大きく守りに徹するものも多い。

 しかしこの場合、風音は別に防御魔法を使えと言っているのではなかった。

 属性同士の相性を考えろと言っているのだ。


「霧の相手を倒すってことはっ!」

 床を転がりながら、島原は必死に考える。

 相手にしているゴブリンの属性ーー霧属性に対して、土属性の魔法は確かに優位だったはず!(俺の記憶だからだいぶ怪しいけどな!)

「《バレット・ショット》!」

 またもゴブリンの体に穴が空く。飛散した水滴は、空気中に消えていった。もちろん、ゴブリン本体はすぐに元に戻っているけれども。

 

 いや、でも飛散した水滴は消えてんだよな?


 島原はふっと閃いた。

 本体の穴はすぐに塞がるが、飛散した水滴、つまり飛散した体の一部はそのまま消えてしまう。

 それなら、元に戻れないくらいバラバラにしてしまえばいいんじゃねーの?


 いや、でも、待てよ。


 俺の出せる弾丸の数には、限りがある。

 今も最大のペースで打ち込んでいるんだ、これを上回ることは今の俺にはできない。

 それより、神宮寺さんは土属性の魔法を使えと言った。

 俺の使える土属性の魔法で、なんか有効なのがあんのかよ⁉︎


 ああ、もう、分かんねぇ!


 その時、きららが声を上げた。

「島原!土は、水を吸い込むんだよ!」

「ア”ァ⁉︎なんだって⁉︎」

 何言ってんだ、と島原は怒鳴るように聞き返した。きららはひるまずに声を張る。

「だから!土は!水を吸収すんの!」

 きららの隣で、風音がにっこりと微笑んだ。


 ーーあぁ、なるほど。

 すとんと答えが落ちてきた。


「なんだ、そんなことかよ」

 俺はやっぱり天才だな、とにんまり笑う。

 そして島原は両拳を床に突き立てた!


「《土鬼の双拳》‼︎‼︎」


 ゴン、という重たい音とともに、床から褐色の二本の腕が伸びる!

「いっけぇええええ‼︎‼︎」

 そのまま、二つの拳がゴブリンを両側から押しつぶした!

「キィッ」

 小さな悲鳴をあげて、ゴブリンの体は飛散する。そしてその水滴は、拳の表面に吸い込まれて消えた。

 遺されたもう一匹のゴブリンが、怒ったように向かってくる!

「もう一発!」

 島原はすぐに次のモーションに入った。

「いくぜ、《土鬼の双拳》‼︎‼︎」

「キィィッ!」

 為す術もなく、ゴブリンは瞬く間に消滅した。

 

 島原は立ち上がると、三人に向かって大きくガッツポーズをする。

「っしゃ!」

「島原!すごかったよ!」

 きららが駆け寄ってハイタッチした。

「だろ⁉︎俺、やっぱ才能あるんじゃね⁉︎」

 いつにも増して調子にのっているが、まぁ、今回ばかりは仕方ない。

「でも、よくあんな魔法思いついたな」

 垣内が感心したように言うと、風音も頷いた。

「島原君、あの魔法は独学?それとも、自分で考えたの?」


 土属性の魔法も、他の属性魔法もその数は限りなく多い。ある意味では無限とも言える。それは基本的なものから、かなりの上級魔法使いが考えた魔法もあるからだ。自分で考え出した魔法を使う魔法使いも多い。既存の魔法を独学で学ぶとなると、自分が使えるか否かの選りすぐりが必要だった。


「あぁ・・・あれは、兄貴が考えてくれたやつなんだよ」

 島原はそう言うと顔をほころばせた。

「あ、あのメガネの優しそうな!」

 どうやらきららは会ったことがあるらしい。

「お兄様も、魔法を?」

「いや、兄貴は魔力がないから、魔法使えねぇんだ。家では、俺一人だけ」

「そう、なのね・・・・・・」


 魔力が子供たちに宿り始めたのは百年前からだったわよね、と風音は思い返した。

 こちら側の世界で、魔力が宿るのは遺伝でも何でもない。一家全員魔法使いだという事例はほぼ聞いていないし。あくまでも向こう側から漏れ出た魔力が、たまたま、適応できる子供たちに宿っただけだ。

 親から魔力を引き継ぐ向こう側とは違う。こういう時に、自分が違う世界の住人なのだと再確認するのだ。


「兄貴はさ、魔法が使えないけど、昔からいろいろ教えてもらってんだ」

「すごいよね、島原のお兄ちゃん!」

 へへ、と島原は照れくさそうに笑う。

「あの魔法も、兄貴が考えてくれたんだよ。土属性なら、こんなのどうだって。他にもいくつか考えてくれて。俺、兄貴が考えた魔法しか使えねぇもん」

「そうだったのね。とても素敵な魔法だったわ」

 風音はにっこりと微笑んだ。

 あなたのお兄様には是非会ってみたいわね、と心の中で付け加えて。


「それじゃあ、次、垣内君いきましょうか」

 風音は、手帳にはさんだ白い紙を二枚抜き取った。

「今の島原君みたいに、垣内君もきららも、属性魔法を上手く使ってね。本番の実技検査では、そのあたりは臨機応変にしてもらえばいいと思うけれど」

「分かった」

 垣内は三人と距離を取る。

「じゃあ、いくわよ!《召喚魔法アリヴィ・アンヴォカシオン》!」


 そうして現れたゴブリンは、二匹どころではなかった。

 島原の時より小さく、ざっと十匹以上はいるか。


「さっさと仕留めろってことかよ」

 これはスピード勝負だな、と垣内は制服のブレザーを脱ぎ捨てる。そして両手を前にだすと唱えた!


「《放電網ディシャージ》!」


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