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1ー4

最近、師匠はご機嫌ななめで、それもこれも先程持ち込まれた鉄の何てことない物なのですが・・。


「くっそ剣ってやつは冒険者の命綱みたいなもんだぞ、こんなもん売りやがって」


実は近頃、ただ単に鉄を溶かして形に入れ刃をつけただけの量産品が増えていたのです。


駆け出しの冒険者にとっては、まともな形をしている剣をナイフほどの値段で手に入れられてよいとは思うし割りきって、お金が貯まるまで弱いモンスターを倒してれば良いのでしょうがダンジョンの入場料+生活費を稼ごうと思うと多少は無理をしなければ生活は出来ないのです。


もちろん量産品が決して悪いとは私は思いませんけども長くやっていくのでしたら同じ値段で買えるダガー辺りで充分なのではないのかなとは思います。


師匠も高い武具ばかり作っているわけではなく週に一度ぐらいは一日かけて駆け出しの冒険者が買い求め安い武器を作っていてナイフは次に買うことになったとしてもサブの武器になるので無駄ではないと誰もが周知の事実でダンも冒険者ギルドからの依頼で初心者冒険者に説明もしているのです。


前に冒険者ギルドに、そのような話をしたそうなのですが量産品も需要があり一般人が護衛用に持つのには充分ですしギルド側も初心者には多少のお金を払えば訓練を受けたりも出来ますが、それすら節約してパーティを組んでるからと慢心して全滅したと話を聞くことも多かったのでした。


持ち込まれた剣の出来は酷く師匠が買い取って新しい物を買ってもらったのですが正直ガラクタなので、お店としては大損害ですが仕方ありません。


それでも良いものを使ってくれてる方が多いのでワイズ村の冒険者ギルドでの死亡者は少なく最初の年に1割と言われている生存率が、この村では何と5割ほどなのです!


もちろん優秀な職人である師匠が居るだけではなくギルドパーティの方々も物凄く怖い顔をされておりますが、とても優しく面倒見の良い方が多いのでした。


それでも自分の力を過信したり年長者の言うことを聞かなかったりと5割以上は減りませんが大きな街や都市部には悪質なギルドパーティなども居るらしいので、とりあえず田舎者万歳です。


もともと、ここに居を構えていたわけではないために他所から来る人達のことを疎んだりする人も少ないし比較的、若い人達が多いためか冒険者が他所からきても何もないのですが、たまに他の場所で有名なギルドパーティさんが、いらっしゃいまして田舎者だと馬鹿にされますがコツコツと戦いを重ねた方々なので比較にもならないほどお強いらしいのです。


「はぁ、また他所から来た人達が揉めてますね」


師匠の使いっぱしりである私は思いませんが今日も武具に使う素材を依頼した師匠の代わりに取りに行く途中です。


いくら温厚で優しい方々といえども冒険者なのですから甘い人達ではありませんし死ぬような修羅場をくぐり抜けてきた方々に何やら喧嘩を売っているのを見ますが今回は何やら違うみたいでワイズの方々が負けている様子。


「おいおい俺達に何か偉そうなこと言っといて、この程度かよ、やっぱり田舎者の集まり大したことねーのな」


私の村を馬鹿にされるのは気分が悪いので文句を言いに行こうと足を一歩踏み込むと彼らの周りが吹き飛び瞬く間に吹き飛ばされていきます。


「はい?」


まだ私は何もしていませんし、もしかしたら秘められた力でも開放されたのかと手のひらを見ていると一人の女の子が声を発するのでした。


「貴様らは冒険者だろう?こんなところで油を売ってる暇があったらダンジョンで暴れてくれば良いだろう?それとも何か?ダンジョンにも入れないでビビってるやつらばかりか?」


彼女も冒険者でしょうか?それにしても綺麗なドレスに身を包み隣には執事のような男性が立っています。


「おいこらクソガキあぶねーだろーが!何てことしやがる」


「ほお、まだ足りんか?おい」


隣の男性が不思議な色をした矢を彼女に渡すと弓を引き始めるとキリキリと弓が鳴ります。


「私の弓矢は特別でな次は怪我では済まんぞ?」


彼女が彼らを睨み付けると立ち上がり周りの仲間たちを連れて解散させてしまったのである。


「ほふぇ、私の真なる力じゃなかったんだ」


そんなことを思っていたのが急に恥ずかしくなり後ろを向きながら口笛を吹いているのですが誰も居ないのだから、そんなことすることもないかと吹くのを止めたのです。


「おい!そこの女」


いきなり私の方を向きながら何か叫んでいますが随分口が悪い方のようで私もムッとしてしまいますよっと。


「随分、口が悪いようですが?」


「あっいや、すまない、そのようなつもりでは」


態度を変えて私に一礼するところを見ると悪気はないようなので許してあげます人形のように綺麗な方なので勘違いもされるのでしょう透き通るような白い肌に整った顔立ち、そしてクルクルとした可愛らしい青い髪をする女の子を見ます。


「何かご用でしょうか?」


「先程の無礼をまずは詫びさせてもらいたい私はハイルディ・ルノワールと申しますハイルと呼んでください」


名字があるところを見ると貴族が豪商の類いですかね、それならば失礼のないようにしなければと姿勢を正します。


「私はルーンと申しますハイルディ様」


「いや、様などは要らないがルーン殿、ドランク様の工房はどちらか知っていたら教えて頂きたい」


どうやら師匠の店を探していた様子なので、ご案内しましょうと、お嬢様と執事さんの二人を連れて店へと行くことになりました。


あれだけ大騒ぎが起きたのに、この村では誰も驚かないとは・・・師匠といい村の人々といい呑気すぎなのです。


帰る途中、酒場でエールが入ったジョッキを持ちながらテーブルに伏せている師匠とダンを見つけて溜め息ばかり出てしまうのでした。

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