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3年も鍛冶の修行をしてるのにナイフ一本も打てない私にも一つだけ特技があるんです。
それは様々な魔法の効果が、込められている魔力結晶を精錬すること。
普通ならばハンマーで叩けば割れてしまう物なのですが、とある魔道具を使うことによって金属のように叩いて様々な形にしたり小さな結晶を集め一つに出来たりします。
小さく不純物が多いと本来の力を産み出すことは出来ませんし叩けば叩くほど不純物は外に出て澄んだ色のラクリマになるの。
先日、師匠の元へ修理に持ち込まれたフレイムバード、そこには真っ赤な透き通ったラクリマとしては大きな物が柄の部分に嵌め込まれていた。
「あの、この結晶を精錬したのって」
「ドランク様ではないですよ、あの方は精巧で繊細な仕事をされますがラクリマを扱うのは苦手なようです」
「でも普段はしてますけど」
「苦手なだけで出来ないわけじゃないですから、でも純度の高いソレを精錬することは出来ないらしいです」
私は不思議に思います明らかに純度の高い、いえ、そんなレベルでは計り知れないほどの深い深い赤が、そこにはありました。
ラクリマは鉱山で、たまに純度の低い物が取れたりダンジョンでモンスターの中から出てくるのですが特殊な環境で取れるラクリマは純度が高く値段も、それに増して高いのです。
「まぁ、それを手に入れたのも精錬したのもドランク様の奥方様ですよ」
「え!?師匠の奥さんが」
私の驚き様が面白かったらしくドュークさんが腹をかかえて笑ってらっしゃいます。
「確かに娘さんも遊びにいらっしゃいますけど奥さんとは会ったことありませんし、あの仕事のとき以外はダメドワーフさんが」
私は、つい出してしまった本音に恐る恐るドュークさんを見ると更に笑い出してしまいました。
「あっはっは大丈夫だよ、それよりも、こんなに笑ったのも久し振りだしドランク様に、そんなこと言えるのは君ぐらいだよドランク様もドランク様で嫌な感じはしてないみたいだし珍しい」
「あのぉ、さすがに師匠のまえでは」
村を案内するように師匠から言われドュークさんを案内しながらお話をしていたのですが、この村、大したものが何もないことに気づきました。
ご案内できるところは案内してしまいましたし冒険者ギルドとか村の中には鍛冶屋、レストラン、雑貨屋に食料品店、ほんとうにそれぐらいしかないのです。
基本的にはダンジョンぐらいしかないのですから。
「あのドュークさんが見たい物とかありますか?街の人が珍しいものなんてありませんし」
「そうだね確かに何もないけど良いところだよ」
そこに谷からの冷たい風が私を少し包み込むと何かが近くにいるような気配がし、先日ドュークさんが襲われたことを思いだし彼の前に立ちます。
その変な行動に不思議そうに私を見るのですが当然です別に何かあったわけでもないし自分でもどうして、そんなことをしてしまったのか分かりませんがコレは、そう!女の直感なのです。
「あの、誰かが近くにいるような気が」
それにしても冒険者の。みなさんはダンジョンに入ってしまわれてますし周りには人がいるような感じは全くないのですが、ふと、そんなことを思ってしまいましたが私ちょっとおかしいのでしょうか?
「凄いなルーンは僕だって居るのか居ないのか分からないほど気配がしないのに」
すると彼が笛を取りだし吹きますとアレ?音が出ていませんけど壊れてしまっているのでしょうか少し待つと何か物音だけがするのですが何も見えません。
「えっとドュークさん」
ちらりと彼の姿を見て、もう一度、音がする方を確認すると何やら小さな黒装束の方がいらっしゃいまして私の身長が160センチほどでしょうか更に小さく背からは何かヒョコヒョコ動いている。
顔は覆面で隠されていましたが目は師匠のように鋭い方のようです。
「この子は僕のボディーガードのサラだよ許嫁である女性の父上殿が、この間つけてくれてね」
「おい小娘なぜ僕が居ることに気づいた」
はて?声は、どう考えても女性ですし胸も少し膨らんでおります。
そして、これはケモノビトと呼ばれる方の様ですが、そんな鋭い眼光で見ないで下さいますか師匠を怒らせたときを思い出して心臓が飛び出しそうになります。
「どうしてかと言われましても女の勘としか」
「ふざけるなっ」
今にも飛びかかってきそうなサラさんをドュークさんが優しく止める。
「君の魔法も気配の消し方も完璧だったよサラ」
「ですがドューク様」
「彼女には何かがあるとしか思えないんだ君も見ただろう?僕の剣を触った彼女を」
その言葉にサラも奇妙に感じたのである自分が前にフレイムバードを触ったときは持ち主では無い者に触れられ炎に包み込まれたことを手を放した瞬間に、それも収まり大事にはいたらなかったのだが尻尾が少し焦げたのだ。
納得はしてなさそうでしたがサラさんは私を一睨みすると、その場から無くなったように消えるのです。
「えっ!?」
居たはずなのに、もう目で見ることは叶わなくなってしまって私も尻尾を触りたかったと少し残念に思いました。
私のお腹が鳴り少し恥ずかしそうにすると彼は《くすっ》と笑うと街に一つの『金の卵』へと向かうように歩く。
今日は春の陽気がポカポカと天気が良い一日で私の心も晴れやかです!