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1ー1

トンテンカン


ガンッガンッ


ジュー


ここは田舎にある錬金鍛冶見習いの少女ルーンが住む工房と店舗が一緒になった小さな家。


錬金鍛冶とは様々なアイテムや材料を調合させ武器や防具に魔法の効果などを追加するのです。


炉には真っ赤な炎が燃え盛り部屋の温度を上昇させ少女は額に滲む汗を拭いながら毎日、毎日休むことなく一心不乱にハンマーを打ち下ろす。


「やーん!また失敗だよぅ」


半泣きになりながら見事に失敗した自分のナイフになると思われた鉄の棒を見ながら肩を落とした。


「ハッハッハまだまだじゃのう」


「師匠笑わないでくださいよぉ、おかしいなぁ初歩の初歩、鉄のナイフ作るだけなのに」


ルーンよりも小柄な立派なアゴヒゲをたずさえたゴツイ体つきのドワーフが彼女の師匠であるドランクであり、ルーンがここで修業を始めてから3年ほどの月日が経っていたのだ。


「そんな簡単に何でも作られちゃ商売あがったりだぞ」


豪快に笑いながら工房で朝から木のジョッキで酒を呑んでいる師匠を睨みながら工房兼、店舗である店へと足を運ぶ。


(おっかしいなぁ配合も同じ材料も同じなのに何で出来ないのかな?)


ドランク錬金鍛冶と書かれた店で弟子として主に仕事は雑用だが働かせてもらって賃金を貰えて感謝もしている。


人間の女の子がするような仕事ではないのですがルーンが、この道に入ったのには、ある理由がありました。


カランコロン


入り口につけられた鈴が鳴ると、お客様が入ってくる。


「いらっしゃいま・・ってなーんだダンか」


「おい、お前!俺は客だぞ、それはないだろ」


この人は冒険者のダンで中々に腕の立つ若者であるらしいが見飽きてるほど見た、この顔は客というより友人なのでありました。


こんな辺境の地なのに、お客さんが来るのには訳があり勿論ドランクさんの腕が良いってのもあるし近くに良い鉄が採掘されることもあるが男の子が1度は憧れる冒険者にとって必須の『ダンジョン』があるのだ。


そして、ここは王国領ギリギリの辺境であるワイズと呼ばれる村です。


「それで今日は何の用?」


「ったく、店番らしいこと言ったかと思えばってもう良い」


ダンが取り出したのは彼の愛用の剣であるロングソードなのだが見事なまでにボロボロでありました。


新品の販売は勿論、修理や補修なども受け持つ店なので、この手のものも良く持ち込まれるのです。


「もうっまた無茶したんでしょ!」


「うっ・・」


「師匠ー?」


奥で酒を呑んでいる師匠に声をかけるとフラフラとした足取りで、いつも通りに店へと顔をだす。


(これでやっていけちゃうんだから不思議よね)


「おうダンじゃねえか、また壊したのか?」


「すみませんドランクさん、またお願い出来ますか?」


「お得意様だからな明日の朝までにやっとくわ」


そしてダンの剣を受けとると工房へと引っ込んで行く。


彼はルーンに、いつも言ってるのだが俺達が鍛えた武器や防具が壊れれば使ってるやつが死ぬかもしれねえ、だから俺も命を削って武器を作るんだと、いつも口癖のように言っていた。


(いくらハンマー持ってないときは死んでるときって言ってもなぁ)


裏でテーブルに項垂れながらイビキをかいている師匠を見ながら呆れていると目の前に立ってるダンを見る。


「もう終わったんでしょ?用件は」


「いやさ、お前この後、暇か?飯でも行かないかと思ってさ」


「んー?行きたいんだけどさ師匠のご飯も作らなきゃいけないし」


そんなことを言っているとイビキをかいてたはずの師匠が酔っぱらってる様子で叫んでいる。


「おー行ってこいや、ついでにエール買ってこーいエールエール」


「はぁ、もう無くなったのか」


ドワーフは世界に知らぬ人がいないほどの大の酒好きである。


「あんまり店を留守にすると師匠の酒代すらなくなるから、あんまり長い時間は無理だけど良い?」


「あぁ分かってるさ」


ルーンは店に準備中の札をかけるとダンと店を後にして外で食事をするときに必ず行く『金の卵』と呼ばれているレストランへと向かうのです。


「そーいやさルーンだって女の子なのに何で鍛冶師なんだ?」


「あぁ、それ?そうだなぁ熱いし身体中痛いし、だけどロマンがある職業だからかなダンは何で冒険者になったの?」


「俺は貧乏だったし頭も悪かったしコレしかなかったからかな」


二人は歩きながら何でもないような話をしながら店へと歩く。


そして店の前に着くと、この村一番のご馳走が食べれる店の前で匂いを嗅ぎながら今日はどんなランチセットが食べれるかダンと一緒に立っていた。


「ちょっとアンタなら、いつでも食べれるでしょ?そんなヨダレが垂れそうな顔しなくても」


「まぁ、そうなんだけどさ俺達って、いつ死んでもおかしくないだろ?だから美味いもの食える瞬間は、いつでも幸せなの」


「そっか」


彼ら冒険者はモンスターから素材が取れたりダンジョンで手に入れたアイテムなどが高値で売れる代わりに少しでも無理をしたり下手をしたら死んでしまうのである。


「でも、ここの村は恵まれてると思うぜドランクさんの武器や防具があるんだから!あの人の腕なら街でも通用するだろうに」


それは私がドランクさんを紹介してもらうときに思ったんだ何でって聞いても《うるせぇ俺の勝手だろ》と誤魔化しているが何かあるだろうなとは思うんだけど、それ以上は聞けなかった。


「私も頑張るから!」


と鼻息を荒げてダンを見ると彼は私の、その顔が余程おかしかったのだが声をあげて笑いだした。


「あはは、お前が、ちゃんと鍛冶師としてやっていける頃には俺は一流になってるからな楽しみにしてるよ」


私が、まだ見習いですらないことは分かってるから良いんだけど使う人を守れるようになりたいんだ。


「絶対なるから」


私が真剣なのが分かったのか彼も笑うのをやめた。


「あぁ」


その一言だけ言うと先に店へと入っていく。



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