縫い止められた紅
流れ落ちる、紅。
時を止めた瀑布の中に取り残された少し褪せた色。
少し欠けたそのたった一葉が白い中に透けて見えるというわびしさが、実にいい風情だ。
熱燗をきゅうっと呷りたいところだが、残念ながらスコッチしかない。
「雪見酒もなかなかどうして」
「ちょ、各務、早まるな! 諦めるにはまだ早い! 火を起こして救助を待とう!」
「…身投げなぞしないぞ? てめぇも一杯どうだ? 凍った滝と紅葉を肴に雪見酒としゃれ込もうじゃねえか」
「遭難してるのにお前のその緊張感の無さは何なんだ?! 心配して損したわ! でも寒いからテントに戻れよバカ! 後、雪で足場が不確かだからあんま滝には近づくなよ!? 落ちたらマジでシャレにならないからな!」
「お前が俺の分もあわあわしてるからな。逆に落ち着く。ほら、てめぇも呑め。間接キスがどうのと女子みたいな事で騒いだら取り敢えず殴る」
「殴るのか! …言わないが衛生面では気を遣え。口内の菌は」
「講釈は要らん。さっさと呑んで返せ」
「ん。…にしても紅葉か。時期外れだな。って、各務?」
「興がそがれた。テントに戻る」
「道覚えてるか? って、そっちじゃない! ほら、こっちだ!」




