表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

三題噺

アフロ、まな板、シベリア

作者: 深空 方

「ただいまー!ふぅ~、寒い寒い~」

勢い良くドアを開けて帰宅した彼女はアフ子、この家の娘だ。

装いはモコモコしたダウンジャケットに、下はかなり厚めの防寒ズボンととても暖かそうだ。髪型は、もちろんアフロ。

それもそのはず外は絶賛ブリザード、雪の壁立ちふさがるここは港も凍りつくシベリアだ。

この寒さではただかぶるだけのフードなど役に立たず、より頭に密着するアフロヘアーで凍えるような外気をシャットアウトするのが常識だ。

更にこのアフロヘアーは取り外すことが可能。その日の気分とコーディネートによって色や形も様々に使い分けることができるのだ。

アフ子は雪の被ったアフロを自室に放り出し、部屋着に着替えると居間へ向かった。

ソファーに寝転がり置いてあった週刊誌に手を伸ばしたアフ子の耳にザク、ザクと野菜を切る心地よい音が届いた。

「母さん、今日の夕飯は何?」

空ではないが何か物を入れるのには十分な腹具合のアフ子には、献立を聞かずにいることができるわけがなかった。

「今日の夕飯はアフ子の大好きなシチューよ。それも、じゃがいものたっぷり入ったやつ」

そう、彼女は朝昼晩三食シチューでも三日くらいまでなら問題ないレベルのシチュー好き。じゃがいもも、好きな食べ物の中で六位くらいに入る。

そんな嬉しい事を聞いてしまってはいてもたってもいられず、用がなくとも台所に入ってしまうのは人間の性というやつだ。

少しでも早く鍋の中の宝物を見たい、そんな気持ちが彼女を動かす。

しかし、それは絶望への一歩一歩を踏みしめているのと同義だということをアフ子は気づいていなかった。

そして台所に立ち入ったアフ子は見てしまう。見なければ幸せだったその光景を。

「か、母さん・・・。それ・・・」

「え?なに?」

「それ・・・。それ・・・」

「ん?なにかおかしいものあったかな?」

「私の・・・」


「私のお気に入りのアフロ・・・」


あろうことか、彼女の母はアフ子のお気入りのアフロをまな板として使っていたのだ・・・!

楽しんでもらえたら何よりです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ