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第一歩

サークル活動本格的開始

「具体的には?」

「30代~40代の女性が普段何を買っているか監視するの。で、3日くらい張り込んだデータを頂戴!」

「監視って・・・職質でもされたらどうすんだよ。変態扱いだよ!警察沙汰になったらどうすんだよ!」もっとほかに方法があるんじゃ・・・と心の中では思っても実際に浮かばないから反論もできない。でもこのままで僕の貞操が危ない。

「そのときは仕方ないから取れたとこまでのデータでいいわ。」

「僕はどうなってもいいのかよ・・・。」

「冗談よ。そのときは・・・」な~んだ、対策案もあるのか。やっぱりしっかりしてるところもあるんだな。

「そのときは・・・?」

「まぁ~なるようにしかならないでしょ!」

「えー・・・。」ないのかよ。

「そんな小さなこと考えててもしかたない。あなただけじゃ心配だから私も一緒に張り込んで上げるわ。感謝しなさいよ。」

「しねーよ。」

「じゃあ1人でやる?」

「・・・お願いいたします。」ぐぬぬ・・・

「じゃあ明日の10時に清水商店街入り口で待ち合わせ。」清水商店街とは僕らの暮らしてる清水町の商店街であり、まさに復活させようとしている商店街のことだ。

「3日間書道教室はどうするの?他の3人には明日から3日間は書道教室は休み!各自バザーの準備をすること!ってメールしとくから大丈夫!」

「わかった。じゃあまた明日。」そうして僕は桐生書道教室を後にした。

というか娘が勝手に教室を休みにしていいのだろうか。

その夜、水月さんからメールが来た。

「千春の調子はどう?あの子のこと心配なんだけどあたしもこんな性格だからなかなか素直になれなくて。でも松田君、帰る時千春と何か話してたみたいだし、頼りにしてるみたいだし。松田君がいれば安心だね。今後とも千春のことよろしく!」よろしくってなにか勘違いしてるような気がするけど・・・、どうせやるなら糸井さんとリサーチがしたかったなぁ・・・むしろ糸井さんのリサーチを。気づくとここには糸井さんの裸体を想像し、にやにやする変態がいた。僕はぶるぶると首を横に振り雑念を振り払った。こんな調子じゃ本当に職質されかねないな。とりあえず僕は

「しかと任されました。」と送った。

さて、明日は商店街復活プロジェクトの重要な1ページ目を飾ることになるから、しっかりと休養をとっておこう。明日に備え僕は早めの眠りへとついた。

[次の日]

んんーー気持ちのいい朝だ。さっさと着替えて先にこの3日間に使う資料を作っておこう。

気づくと時刻は9時半。そろそろ待ち合わせの時間だ。行ってみるか。

腕時計を見ると、まだ10分前だが、すでに桐生さんは到着していた。

「遅い!!!リーダーは30分前が原則!!」

「そんなのいつ決まったんだよ。」

「リーダー法第36条」

「は?」

「リーダー法36条」

「なんだよそれ。そんなんねーよ。」

「あるわよ。はい。」僕は桐生さんから一冊の本を渡された。表紙にはリーダー法と書いてある。ぱらぱらっと中身をみると、手書きでびっしり訳の分からない法律がたくさん書いてある。

「あるのかよ」というかこの努力をもっと他の方向に向ければいいのにと本当につくづく思う。

「36条違反により、本日のお昼は松田くんのおごりとなります。」

「本当だ、36条にそう書いてある。」僕は該当ページを読みながら言う。まったくふざけている。

「さぁ、本日最初のターゲットは乳母車を押しているあの女性よ!」

たしかに目の前には乳母車を押した30代後半と見られる女性がいた。

「なんで隠れながら調査する必要があるの?」

「バカね、こういうのは隠密行動が常識よ。忍者の基本じゃない。」

「どっから忍者が出てきたんだよ。」

「しっ!対象Aドラッグストア侵入。」侵入って相手は買い物してるだけだろうに。対象Aと呼ばれた女性はこの商店街唯一のドラッグストアに入っていく。

「まずは赤ちゃんのおむつをかごに。どーぞー」

「どーぞーって」にしても桐生さん、実に楽しそうである。

「続いて脂肪を燃やしやすくする的なドリンクをかごに、あやつは子供を産んだ後だからか、体脂肪を気にしている様子どーぞー。」

「失礼だ、どこまでも失礼だこの人。」でも、確かにこうして人の買い物姿を見ているとその人がどのような暮らしをしているか考えてしまうな。ふと回りを見回すとあからさまに怪しい自分たちをみる周囲の冷たい目が・・・。

「桐生さん、いったん退却!」僕は桐生さんの手を強引に引っ張りその場を立ち去った。

「いきなりどうしたのよ!」桐生さんは僕の手をふりほどき、いきり立ったように言った。

「いいですか、周りから見たら僕らめちゃめちゃ怪しいんです。通報も時間の問題だったかもです。」自分もさっき気づいたのだが。

「なるほど!そういうことなら任せて!」桐生さんバッグ

の中から小さなレンズのついたものを取り出した。

「これでこっそりと撮影するのよ。私たちは知らん顔で買い物しているふりをしていればいいいの。」

それはどうやら小型カメラだったようだ。

「それ盗撮じゃないですか!だめですよ。」

「女性のパンツなんかとらないわよ。」

「そういう問題じゃないし。」

「どうしてもと言われれば撮ってあげないこともないわよ。」悪い顔だ。

「いりませんよ!」ダメ、絶対の精神で断固として反対した。

「あたしのでも?」さらに悪い顔をしている。

「何言ってんですか!」これは・・・もしや暴走?そう思った僕は素早くカメラを取り上げた。

「没収です。」

「あ、私・・・」桐生さんは我に返ったようで顔を真っ赤にしている。

「消去完了。」僕はぼそりとそう言った。

「は?」桐生さんは素に戻り、僕の言葉にぽかんと口を開けていた。

「だからさっきの記憶を消去したんです。」といいながら僕の顔も赤くなっていた。

「思い出したら殺す!そんなことより、気を取り直して調査再開よ!」

桐生さんの暴走のトリガーは何なのか、全くわからなかった。

「次のターゲットはあのおばさんよ。」おばさんはこの商店街で唯一生き残る個人商店に入っていった。黒と紫のカーテンで覆われ、外観は見るからに怪しく、中は不気味なネオンが光っているのが外からでも少しわかる。この商店街で生き残っているというのはお客さんが入っているはず。繁盛してなきゃとっくにシャッターだからな。何か理由があるはずだよな。

「前から思ってたんだけど、この店って何屋なの?怪しいから入ったことはないんだけど。」

「あんたこの店知らないの!」ありえないとでも言いたそうな口をしている。

「だから聞いたんだけど。」

「この店はね、・・・怪しい店よ!」

「えー、わかってないじゃん・・・」あきれた声で僕は言った。

まぁ・・・桐生さんだし。

「何よ、その目は!いいのよ、今からわかることなんだから。」

「ってことは・・・。」

「もちろん、今から入って存続の理由を確かめるのよ。」桐生さんは僕の手を掴むと紫のヴェールに包まれた謎の店へと入っていく。

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