口説き文句バトン(拾いました)
皆様の活動報告等で見掛けるアレです。
本編で出てこない設定に基づいた話なんかもあります。
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【注意】
これは常人には精神ダメージがかなり大きいバトンです。
見る時は5回ほど深呼吸をし、覚悟を決めてから見てください。
以下のキーワードを絡める(もしくは連想させる)口説き台詞を自分で考え、悶えながら回答して下さい。
答える生け贄もとい勇気ある人々にこの言葉を送ります。
【恥を捨てろ、考えるな】
*リアルで言ったら変人扱いされるようなキザ台詞推奨*
■キーワード1 『雪』
■キーワード2 『月』
■キーワード3 『花』
■キーワード4 『鳥』
■キーワード5 『風』
■キーワード6 『無』
■キーワード7 『光』
■キーワード8 『水』
■キーワード9 『火』
■キーワード10 『時』
■このバトンを回す生け贄5人
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「……何でしょうか、これは?」
旅の商人が落とした紙片を一読して、怪訝そうな声で男はつぶやいた。
「あ」という声とともに駆け戻ってきた商人が慌てた様子でその紙をひったくる。
「……えーと、その、これは……し、知り合いの劇作家からの頼まれものでっ」
肩で息をしながら、いかにもごまかしています、という態度の商人だったが、男はあえて見逃してやった。常連ならまだしも、あの険しい山脈を越えてここまでやってくる新顔の、しかも若い商人は珍しいので。……まあ何か面倒そうな事情でもあるならば別だが。
商人が主張するには、件の劇作家が新作の恋愛劇を書くにあたって、べたべたに甘い口説き文句を集めているのだとか。
「……この、『生け贄』というのは?」
「ぶっちゃけて言えば、ぼくと同じ目に遭う人のことですね」
「同じ目、というと?」
首を傾げると長く伸ばされたプラチナの髪の間から緑色の目が覗く。
そのしぐさや雰囲気には、――一見ほかの村人と大して変わらない服装をしているのに――妙な色気と品がある。よく見れば顔の造作も女性的で整っている。
足抜けか年季明けでもした男娼あたりだろうかと商人は見当をつけた。
だがこの村にいる者たちへの詮索はやめたほうがいい、と他の行商人に釘を刺されていたのを思い出した。
「……っ砂を吐く思いをして口説き文句を集めることですよ!」
こんなこっぱずかしい依頼を寄越した知り合いへの鬱憤を込めて商人は叫んだ。
ちなみに件の作家と商人とは直接の知り合いではない。
にもかかわらずこの依頼を引き受けたのは、……引き受けざるを得ない状況だったからだ。
そしてこんな辺境まで来ているのは、今までの自分の取引先では、既にこの話が出回ってしまっており、他の誰かによりめぼしい話があらかた獲り尽くされてしまっていたからだ。
「……もしくは、恥を曝して口説き文句を吐く方に回るか。そうだ、これを見たからには、生け贄になってもらいましょうか、兄さん」
「…………兄さん?」
緑の目が瞬く。ものすごく意外なことを言われた、という表情だ。
「……あなたのような弟を持った覚えはないし、兄さんという……まあいいです。でも、私はこの村からめったに出ないんですが」
「ええ。だから、恥を曝してもらおうじゃありませんか」
「……恥、ね……」
力仕事には向かなそうな細い指が、優雅に口許に当てられる。
「最愛の人にささやく愛の言葉を恥だとは思いませんが、それでも、聞きたい、というのでしたら記憶を掘り起こしてみましょうか?」
形の良い唇が紡ぐ声はひどく冷たいものだった。




