非出づる國
あらすじ
西暦二千三十年 絹更月四日の朝……
この日 人々はいつもと変わらぬ朝を迎えていた
だがこの様子
ただならぬ気配と感じとっていた者どもがいた……
およそ千年ほど遡りたると
この地には人の形をした鬼どもが
こっそりと人に紛れ人と違わぬ生業で
暮らしていた
まだ世が騒然としていた時代の事
その中にあっていち早く組織的な秩序を保ち
体を成していた者どもがいた
円枩院玄叡
(えんしょういんげんえい)
である
玄叡は民の護りを自らの務めとし
いっさいの災禍の霊除に
己が身を賭していた
その地を禁足とし
淀みの地 なる領を有し
何びとたりとも 足を踏み入れること
能わず
永遠に 禁足の地と成せり
さらに
その中に世にも奇妙な「域」を
出現させていくのであった
時を同じくして
嘗てこの地の民に長きに亘り
絶大な権力と信望を集めた
大天ノ国守
(おおあまた の くにのかみ)も
その力に翳りがみえ出すと
各地の治めを
その土地の者どもらそれぞれに
移譲していった
その中にあって
大天ノ国守をいち早く擁立し
地界の束ねを目論む翁を
長とする
守 総代組
(かみ ふさしろノそ)が
この時代
遅れる事十数年余り
ようやく大いなる野望の下
政の表舞台に
現れるのである。
やがて
守 総代組による地の治めも
ようやく終ろうとしていた
その頃
巷では奇妙な噂が囁かれ出した
人鬼の存在だ
守 総代組は
その探索に
子飼いの者ども
八角衆を当て
その人鬼を追ううちに
更に希有な者どもらの
存在に辿り着くのである
時を同じくして
更なる集団が動き出していた
彼らは 元来
世俗とは一切の関わりをもたず
誰もがその存在すら目にすることなく
噂だけが恐れとともに巷を
徘徊していた
が
ひとたび
大いなる乱れが世に生じたる時
その絶大な力で混乱の世を
鎮めに導く
謎多きその集団
白形衆 (しらなりしゅう)
彼らもまた
この時代
忽然と姿を現すのである
かくして者どもらを
巻き込み
未だ嘗てない
大きな時の潮流となり
その者どもらの
目論みは
やがて時を超え
継がれていくとは
この時
誰もはかり知ることが
できなかったのである




