1/12
透明な門(大寂門素描)
寂しい夜 生ぬるい空気 風はない
鈴虫と水のせせらぎのうねり道
ふと大きな門が闇夜に浮かぶ
一本の街灯に控えめに照らされて
まるで二本の大木のようだ。
高さ五メートルに立派な瓦屋根
木造の柱は手を回せないほど。
白塀越しの木々はいわゆる詫び寂び
右手にはシラカシ 光沢のある尖った葉
金色の満月が奥で光っている
左手には門に垂れる竹笹の類
鈴虫に音を譲って微動だにしない
なぜこんな大きい門が必要なのか
閉じているのを一度も見たことがないが、
閉じない、素通しの門に価値はあるのか?
こいつを潜ったところで何もない
同じような道と街灯が一つ。
お前はなんのために突っ立っているのだ
ただ格好が物々しいばかりで
その実ただいるだけの役立たず
されど悲しきかな、大寂門!
脇にある二本の標識の方が
お前よりずっと目を引くのだから
用水路でカエルが鳴き始めた
鈴虫の合間にまばらに眠たげに
僕はあえて門を潜らずに
いつもみたいに踵を返した
間もなくして車が追い越していった




