第4章:ようこそ、アルカネリアへ!
迷い込んだ異世界――アルカネリア。
仲間となった緑のスライム〈ミドピー〉と共に旅を続ける奏汰は、
偶然出会った少女・ミリアを助けることになる。
だがその行動が、運命の歯車を再び動かしてしまう。
青く光る右目、覚醒する月の力。
暴走する力の中で、奏汰は“ツクヨミ”という名を聞く。
それは、かつて世界を滅ぼしたとも語られる月の神――。
仲間の絆と運命の力が交錯する、物語の転換点。
『第4章:ようこそ、アルカネリアへ!』始まる。
第4章:ようこそ、アルカネリアへ!
それにしても――ここは一体どこなんだ。
このままじゃ、ずっと迷子のままだぞ。
……ん? これは――地図か?
「これって地図だよな! やったぞミドピー、地図があった!
……ん? この赤いバツ印は何だ? “エルムヘルム”って書いてあるけど……」
「ピーピー」
「ん? どうした、ミドピー」
「ピピー」
……子どもが泣いてる? 女の子か。手を縄で縛られてるな。
「ピピー」
「助けてやれって言いたいのか?」
「ピー」
「勘違いするな。俺がお前を助けたのは、人間じゃなかったからだ。
心が腐った人間なんて、助ける価値ないだろ。
……さっきお前の母さんを殺したのも人間だったじゃねえか」
「ピー」
「おい、待て!」
ミドピーは小さく跳ねて、勝手に走り出した。
「おい、やめろって!」
「ピーピー!」
……ったく、また余計なことを。
「‘*+>;:[/。「^+¥*」」
「口が塞がれてて、何言ってるか全然わかんねえな……」
縄を見つめ、ため息をつく。
……仕方ない。
「暴れるなよ。静かにできるなら、解いてやる」
少女は黙ってうなずいた。縄を解くと、怯えた瞳でこちらを見上げる。
「あ、ありがとう……お兄さん」
「もういいだろ。じゃあな」
「待って!」
「無理だ。これ以上、面倒なことはごめんだ」
「お願い……待って……!」
!!!
「なんなんだよ、いったい」
「あの……その……」
なんなんだよ。日が暮れる前に宿探さなきゃいけないのに。
「友達が……赤い変な服を着た人たちに連れて行かれちゃって」
「なに……?」
「赤い人たちに住んでる場所を聞かれて、“エルムヘルム”って教えたら、いきなり捕まって……」
「じゃあ、この地図の赤いバツはまさか……」
「ピー?」
「困るなぁ。邪魔されちゃ……」
!!!
「お前は――!」
「この人! この人たちだよ、お兄さん!」
「勝手に逃げられちゃ困るんだよ」
「お前らが“赤い人”ってやつか」
「ふ、失礼だなぁ。これでも有名な“ダクネフ教団”なんだけど?」
知らねえよ……俺、この世界来たばっかだぞ。
でもどうする……武器もねぇ、戦えるわけが――。
「そのガキはこっちのもんだ。お前は……死ね!」
「くっ……!」
どうすれば――!
「ピーーーーー!」
「え!? お前!」
ミドピーの体が震え、光り始める。
「ピピー!」
スライムの形が――変わっていく!?
「くっ、スライムごときが……調子に乗るな!」
「ピピピピ〜!」
「……なんだ、その姿は……まるで――」
「ピーーーーー!」
「ドラゴン……!?」
こいつ、まさか……!
「ピピピピピピ!」
「くっ……暑い! このスライム、体液が……炎のブレスみたいだ!」
「オラァッ!」
「ピー!」
「ミドピー!!」
「フフ……ハハハハハ! スライムごときが調子に乗るなよ!」
「ピーー……」
「ハハハハハ!」
「ここは“ダクネフ教”の縄張りだ。勝手に暴れちゃ困るんだよ。
それに……この女、エルフ族だろ?
エルフは高く売れる。死なれちゃ困るんだよ!」
くそっ、呪文も使えねぇ……どうすりゃいいんだ。
「はははは!怖くて声も出ねえか?
まぁ無理もないな。見りゃわかる。お前は弱くて、ビビりで、勇気もねぇ!」
「……ちっ」
「無能なヒューマンってことだ!」
「うるせぇーーーー!」
「おっと?逆らうか?その無力な力で?」
「うるさい!!」
「ピー!」
「へへ!オラァ!」
「ぐっ……あ゛あ゛あ゛あ゛ー!」
くそっ、足が……動かねぇ!
「お兄さん!」
……俺はまた、何もできずに失うのか。
仲間を……目の前で……。
いやだ、そんなの。
「絶対に嫌だ!!」
「ハハハハハ!威勢はいいが、結局雑魚!さっさと諦めて死ね!」
「くっ、首が……!」
「ん?なんだその目は?いきなり青く――うわぁっ!」
「え?どういうこと? お兄さんの右目から……白い狐の女性が!」
「離せ」
「は? 誰だ貴様、何言って――」
「聞こえませんか。“離せ”って言ったのです」
「なっ……!? 今、あいつの右目から……出てきた!?」
「大丈夫ですか、奏汰様。……気絶している?
フフ……頑張ったのですね」
「まさかお前……九尾の狐のひとりか!」
「あなたに教える必要はありません」
「ん? また、あいつの目から何か……!」
「えっ、奏汰様に……こんな力が!?」
「力を共有したというのか! 気絶してるやつが、どうして――!」
「天の雷撃!」
「ぐあぁぁぁぁ!」
「お兄さん!」
「ピー!」
「奏汰様!」
……どこだ、ここは。
「奏汰よ」
「!? 誰だ……?」
「我の名はツクヨミ。月を司る者なり」
「ツクヨミ……? いや、意味がわからねぇ……」
「お主はこれから、多くのものを背負う。
絶望も、希望も、そして共に歩む仲間も。
信じる心が、道を照らすであろう」
「俺が……そんなこと……」
「大丈夫。いずれお前にも、輝く未来が訪れる」
「おい、待て! まだ話が――」
「待てっ! ……はっ!」
「大丈夫? お兄さん、すごいうなされてたよ」
「ピーピー」
「あ、ああ……大丈夫だ」
……今のは、夢か?
……いや、そんな場合じゃ――!
「この狐さんが倒したんだよ」
「お前、いつから……」
「良かった、奏汰様……あなたが私を呼んでくれたのですよ」
「俺が……?」
どういうことだ……記憶が、ない。
「ピーーー」
「いってぇぇぇぇえ!」
「奏汰様、この少し変わったスライムさんはいったい……?」
「こいつは、道に迷った時に拾ったスライムだ」
「こんにちは、スライムさん! お名前は?」
「ピーピー」
「ミドピーさんですか! 可愛いお名前ですね〜」
「お、おい、なんで分かるんだよ」
「私はどんな生き物とも話せるんです♪」
さすが神の狐……。
「ありがとな、狐……あと、あの時はごめん」
「ん〜、“狐”じゃなくて名前で呼んで欲しいですね〜」
なんでちょっとすねてんだ……。
「リーリア、と呼んでください!」
「ありがとう、リーリア」
「はいっ!」
「……じゃあ、お兄さん、私もう行くね!」
「は? さっき言ってた“ガキ”はどうすんだ」
「あー、あれね。大丈夫!」
「何かあったのですか?」
俺はリーリアに事情を話した。
「なるほど……そんな事が。
でももう大丈夫。お兄さんたちを見て、私も自分の力で仲間を助けたいって思えたの。
それに、気づいたから。じゃ、またね!」
……あいつがそう言うなら、俺から行く必要はない――。
「おい、お前の名前は?」
「……ミリア、だけど」
「じゃあミリア、先に言っとく」
「は、はい」
「俺はお前らを助けようと思ったわけじゃない。
自分に危険が迫ったら、迷わず逃げる。いいな!」
「人数は多い方が安心ですからね!」
「うん!」
……なんでそんなに嬉しそうなんだ。
これから助けるのはガキだぞ。
後で裏切られても俺は知らねぇからな……ほんと。
「よくわからん」
「あれ? 今、お兄さん笑った?」
「笑ってねぇし!」
「私も今、同じことを!」
「笑った笑った〜!」
「ピーピー!」
「笑ってねぇからーーーーーー!!」
ここまで読んでくれてありがとう!
今回は、いよいよ異世界での本格的な冒険と、
奏汰の“月の力”が初めて明確に現れる回になりました。
彼が感じている「怒り」や「迷い」は、
人間不信の中でも、心の奥に残っている優しさが
少しずつ表に出てきてる証でもあります。
そしてリーリア登場。
物語はここから一気に“仲間の絆”の章に入っていきます。
次回は街〈エルムヘルム〉で、
奏汰・ミドピー・リーリア、三人の運命が動き出します――。




