第3章:再び、異世界へ!
少しだけ日常回です。
異世界から戻って一週間、奏汰にとっては久しぶりの“普通の時間”。
だけど、その静けさの中にこそ、これから訪れる変化の予兆が隠れています。
今回は、奏汰の過去と「家族との絆」に焦点を当てました。
姉・美優との会話の中で、彼の本当の心が少しずつ見えていく章です。
次の展開に向けて、どうか少しだけ穏やかな時間を一緒に感じてください。
第3章:再び、異世界へ!
初めて異世界に行った日から一週間ほどが経った。
あの狐が俺の家に来ることもなくなり、再び前と変わらない日常を過ごすようになっていた。
「あともう少しでやっと……やっと終わるんだ。
やっとあの環境から抜け出せる……。
……いや、変わらない。場所が変わっても、この目がある限り、何も――何をしても。」
俺はいったい何をすればいい?
……いっそのこと、異世界で生活すれば――。
「いや、何を言ってるんだ俺は!
ていうか、世界を救ってくれとか言われても、そんなの俺には無理だろ。」
関係ない。俺には関係ないんだ。
「あれ……なんでこんなに……眠くなって……」
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「奏汰……奏汰?」
……ここは……?
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「……奏汰……聞こえる?」
「……母さん?」
振り向くと、懐かしい笑顔。だが、その輪郭は霞んでいる。
「あなたに伝えたいことがあります。
私たちが――“異世界”から来たことを。」
「え……異世界?」
「ええ。アルカネリア。
あの世界で、あなたのお父さんは“天命士”と呼ばれていた。
月の光に選ばれ、命を護る者だったの。」
「父さんが……?」
「でもあの戦いの夜、彼は皆を逃がすために残ったの。
人々が避難し終えるまで、決して背を向けなかった。」
白い光が赤に変わり、戦火の幻が浮かぶ。
「けれど……その時彼は“呪い”を受けたの。
守れなかった命、失った仲間――その全てが嘆きとなり、
今も“嘆きの天命士”として、闇の中でさまよい苦しんでいる。」
「父さんが……」
「奏汰。お願い。あの人を救ってあげて。
あの人は、あなたが“光”を継いでくれることを信じているの。」
「でも俺にはそんな力は無いんだ……そんな俺に……何ができるんだ……」
「あなたの右目は、彼の力の証。
月が再び満ちる時、その光が道を照らすでしょう。」
母の姿が薄れていく。
「待ってよ、母さん! 母さん!」
「――信じて、奏汰。アルカネリアで、必ず“真実”と出会う……」
白い光が弾け、俺は息を吸いながら目を覚ました。
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「母さん……ん?」
インターフォンの音。
まさか……いや、まだ18時だぞ。
「ただいま〜!」
「……え?」
「奏汰〜? いるんでしょ〜?」
「なぜだ……なぜこの時間に……」
「奏汰〜返事してくれないと、お姉ちゃん泣いちゃうぞ〜?」
「……姉ちゃん?」
「何その返事〜!
せっかく弟のために、出来るだけ早く帰ってきたっていうのに!」
「なんでこんなに早く……」
この、今にも爆発しそうなくらいテンションが高い女は――皇 美優。俺の姉だ。
「今日さ〜、いきなり撮影中止になってさ〜。
マジで神様感謝だわ〜!」
姉はモデルの仕事をしながら大学に通う。
まさに俺と真逆の世界――いわゆる陽キャというやつだ。
今、家で生活できているのも姉のおかげでもある。
「ねえ〜聞いてる?」
「あ、うん。聞いてる聞いてる。」
「奏汰も、あともう少しで卒業だね〜」
「……うん。」
「ねえ、奏汰。」
「何?」
「別に無理して高校行かないといけないわけじゃないからね。」
「え?」
「お姉ちゃんは、奏汰が楽しそうな顔をしてくれるのが一番嬉しいの。
確かに、楽しい学校生活を送ってほしいって気持ちはあるけどね。」
「……」
「でもさ、無理すれば無理するほどしんどくなるだけ。
お姉ちゃんは、そんな辛そうな奏汰を見たくない。
つまり……困ったらちゃんと相談すること!
お姉ちゃんはいつでも奏汰の味方だからね!」
俺は今まで、“誰かのために”なんて考えたことはなかった。
けれど今、決意した。
「ありがとう、姉ちゃん。」
「分かればよし!
今日はもう作るの面倒だから、ラーメン食べに行こ〜!」
「……元気だな。」
――行こう。異世界へ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
この章では、**“人の優しさと、それを信じられなくなった心”**をテーマに描きました。
奏汰にとって美優は唯一の家族でありながら、どこか距離のある存在でもあります。
彼がもう一度「誰かを信じること」ができるようになるのか――
次回から、物語は再び“月の力”と“運命の戦い”へと動き出します。
次回、
第四章『封印の光、再び』
どうか、お楽しみに。




