表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

ハズレの毎日、たまに当たり

流星の部屋は、六畳のワンルーム。

風呂なし。トイレ共同。壁が薄くて、隣の怒鳴り声がBGMみたいに響く。

でも、ひかりにとっては天国だった。雨風しのげて、冷蔵庫には賞味期限ギリギリの半額弁当がある。

「これ、昨日の唐揚げ。レンチンしてないけど、いけるっしょ」

「余裕。屋上でカップラーメン食ってた日よりマシ」

流星はホストをしているけど、ナンバーにも入ってないし、酒も弱い。

「営業中に吐いたら、お客さんドン引きで帰った」って笑って話す姿が、なぜか嫌いじゃなかった。

「ひかりって、なんで家出したん?」

「親が再婚して、新しい父親がクソで」

「殴るとか?」

「殴られるより、触られるほうがキツかったかな」

「……ごめん、変なこと聞いた」

「いーよ、もう慣れてるし」

流星は黙って、煙草に火をつけた。

この部屋では吸えないから、わざわざ窓を開けて外に煙を逃がす。

そういうところだけ、妙にやさしかった。

「運、良くなりたいよな」

「うん。でも、運ってさ、誰かと一緒にいると変わる気しない?」

「……どうだろ。ひかりといると、今のとこまだ全部負けてるけど」

「じゃあ、今日こそ当てようよ。2人で」

「行くか。新台入替の日だし」

その日、ふたりで並んだのはいつものパチ屋。

流星は「牙狼」、ひかりは「沖ドキ」。どっちも荒れる台だ。

数時間後――

結果、流星:-28,000円、ひかり:+3,500円。

「勝ったー!」

「嘘だろ!?」

「ほら、運、移ったかもよ?」

「いやいや、それは俺の運が吸われた説だろ」

笑いながらパチ屋を出るふたり。

風が冷たかったけど、なんだか心は少しだけ、温かかった。

そして、流星はこのとき初めて気づいた。

この子が笑うと、自分の胸のどこかが、ふっと軽くなることに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ