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雪の好きな人

作者: りん

真子は小さい頃から雪が好きだった。降り始めただけで嬉しそうにしていた。だが私は、寒いのはあまり得意ではない。

 最近とくに寒くなってきたからそろそろ降るだろうか。よくある筒型の灯油ストーブの前に座りながらそう思う。

「あ」

窓から外を見た真子が言った。

 私は、ストーブの前で座ったまま「どうした?」とだけ言う。

「外。雪が降りはじめました。初雪ですね」

その声は少し嬉しそうに聞こえる。明日の朝降り積もった雪で雪だるまでも作ろうと考えているのだろうかと思ったがそれは言わなかった。

「寒いんだ。ストーブの前で一緒に温まろう」

私は、振り向いて言った。

「もう少しだけ見たら、そうします」

そう言いながら真子は嬉しそうに窓の外を眺めている。

「そうか」とだけ言って、私はストーブの前に座っている。

 雪が好きなのだ。小さい頃からそうだった。このまま止めずなにも言わなければ見続けているだろう。真子は七歳くらいの頃にそれで一度風邪を引いたりもしたのだ。

 その年は暖かく雪の降るのもいつもより一月ほどは遅れていたはずだ。真子は毎日外を見ては「雪が降らない。まだ降らない」と喋っていた。

 そうして、ついに降りはじめた時にさっきみたく「あ」と言って薄着のまま玄関から飛び出してはしゃいでいたのだ。

 次の日に私が真子の家へと遊びに誘いに行くと、彼女の母から、真子は風邪を引いたという話と共に、その理由を聞いたのだ。

 真子は念願の初雪を踏み損ねたのである。風邪を治して家から出てきたのは3日後だったが、彼女の悔しそうな顔は今も覚えていて、雪が降るたびに思い出しては、真子に話して笑っている。

 家の中にいるとはいえ、窓の側は冷えるだろう。私は立ち上がり棚からココアの粉を取り出して、2つのカップに入れる。ストーブの上に置いてあるヤカンからトポトポとお湯を注いだ。

「冷えるだろう。一緒に飲もう」

私はココアの入ったカップを持っていき、真子に渡す。

 真子は窓の側で指先の赤くなった手でそれを持つ。

「熱いから気をつけて」

私が言うと「そんなに子供じゃありませんよ」と返された。

一口飲んで、にこりと笑顔になり私のことを見る。

「明日、積もったら雪だるま、作りましょうね」と彼女は言った。

 私は静かに笑いながら外を見る。音もなく降りてくる雪がもう庭を真っ白く染め始めていた。

「明日は積もるな。うん、一緒に作ろうか」

そう言いながら一口飲んだココアは、私にはあつかった。

読んでいただきありがとうございます。

わかりにくいとこもありましたでしょうが、最後まで読んでいただくだけで嬉しいです

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