8話 ゲームセンターで…
〈登場人物〉
?? 由梨 26歳
九十九 南 ?歳
奈津女たちが水族館に賛成しているとき、
何かを察した由梨は南を連れて、買い物の続きをしようとしていた。
「どこに行こうとしてたんだっけなぁ~」
そういって、南の手にあるマップをのぞき込む。
わざとらしく店を探す由梨に南が話しかける。
「――由梨さん。
なんで自分まで連れ出したの?マップが欲しかったら渡していたのに……」
「だって。――南さん海苦手だって言ってたじゃん」
「!」
その時、館で自己紹介をしたときのことを思い出す。
〈水たまりぐらいだったら余裕なんだけど、深さがあるところはちょっとしたトラウマがあってね〉
確かにあの時。
南は自分の苦手なものを紹介していた。
その時のことを、由梨はしっかりと覚えており、
しかも南が1人で待たないよう、自然な形で連れ出したのだった。
その事が理解できたとき南は由梨に
「ありがとう」
そう伝えた。
最初に聞いた〈どうしたの?〉という声よりも大人びた声。
本当に南の口からでた言葉なのかと驚き、由梨が南の顔を覗こうとした時には、
「よっしゃーじゃあどこ行こうかね~」
いつもの、陽気な姿だった。
気のせいか?そう思った由梨はそのまま、南と一緒に行動をした。
「じゃあ、まずはゲーセンとかどう?」
由梨が3階を指さして、南に聞く。
すると、南はノリノリで
「いいね~自分意外とクレーン系は得意だよ!」
「おぉ~ウチもだよ。よしじゃあ、行ってみよ~」
ゲームセンターは3階の奥にあり、とても大きいことがマップにも記載されていた。
いざ到着すると、2人が思っていた以上に広かった。
「ん~!――広い!」
「広すぎるレベルだね」
そうして、2人で笑っていると、後ろの方から豆知識のような言葉が聞こえてきた。
「ここって、この花弁市の中で一番デカいゲームセンターらしいよ!」
カップルらしき方の女性がそう伝えていた。
「たしかにデカいね」
盗み聞きしていた南は笑った。
そうして、2人はなんとなく景品を見て回り、両替機で1000円札を100円玉にくずした。
「この1000円分でより個数を取った人の勝ちね!」
「よっし。制限時間は?」
「ん~15分で!」
そうして、お互いがスマホのタイマーを15分に設定して、同時にスタートさせた。
まず、由梨は小さい台に向かった。
(こういうのは、小さいもので多くとった方の勝ちだって知ってるもんね~)
そうして、熊のぬいぐるみの台で200円かけて、緑色の熊を取った。
その次に、お菓子の台を見つけて、300円で4つのチョコマシュマロを手に入れ、
最後、猫がイチゴをもっているぬいぐるみの台を見つけて、思わず500円全てを使い、取った。
縦横約40㎝ほどの小さなぬいぐるみに一目ぼれしてしまい。
結局、由梨は6つの景品を取った。
(うぅ~絶対南さん沢山取ってるよ~)
そう思い、トボトボと『終わったら集合』と伝えた、ゲームセンターの出入口付近で3分程待っていると、南が3台分ほど離れた所から手を振って現れた。
「由梨さーん何個取れた?」
「ウチは6つ……南さんは?」
そう、悔しそうに質問する由梨。
すると、南は目を丸くして伝えた。
「自分も6つ。ぁ!もしかして…」
「引き分け・・・?」
すると、由梨は大喜び。
「わーい。
負けなくてよかった~負けちゃったらウチのプライドがズタボロだよ~」
それと同時に由梨がジャンプをすると、ポケットに入れておいた、黄色の熊が床に落ちた。
それを、南が拾う。
すると、嬉しそうに由梨の方を向く。
「自分も熊取ったんだ。ほら、ピンクの熊」
そして、由梨はとある提案を持ちかける。
「最後に記念として、熊のぬいぐるみ交換っこしない?」
「色違いの熊のぬいぐるみで?」
「うん。ウチもともと、ピンクの熊狙ってたんだけど、黄色の方が引っかかってとれたんだ。それにさ」
そういって、背伸びを少しして、下から見上げるように南の目を見つめる。
「南さんの目って、この熊と同じ黄色だし。そのピンクの熊。私の髪の先の色と同じなんだよ」
「――じゃあ交換で」
そうして、熊を手から手へと移動させ交換が成立した。
だが、南は由梨の目を見られない。
その事を不審に思った由梨は南に聞く。
「なんで、目合わせてくれないの?」
「いや。気にしないで。
ほら、そろそろ、集合場所伝えておいた方がいいんじゃない?」
「あ、確かに~」
そうして、ルインに目を落とした由梨。
南はこの時とても焦っていた。
(あなたがきれいすぎて、ずっと見てられない……なんて絶対言えない!)
「集合場所、1階のサービスカウンター辺りでいいよね?中心だし、合流もしやすいでしょ」
「うん。いいと思う」
(平常心。平常心。でも、ここまで焦ったのも数十年ぶりだな)
そうして、ゲームセンターをでた2人。
エスカレーターに乗りながら、由梨がグループルインに、
自分:集合場所はサービスカウンター付近でヨロ!既読3
と打ち込み、サービスカウンターで待つことになった。
「既読もついたし、そろそろ来るかもね」
そう、南と話しながら2人で楽しい時間を過ごしたのだった。
由梨はこの記憶力をどこで身に着けたのでしょうか…
そして、南は意外と女性慣れしてないようです。
次回は謎の男が出てくるのでお楽しみに!
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ