26話 守れ
〈登場人物〉
神楽 咲玖 170歳
九十九 南 300歳
デス 1003番 300歳
奈津女たちが帰った少し後。
咲玖は図書室に籠って本を読み始め、南は今日の掃除を終えていないことを思い出し、
急いで掃除を始めた。
まずは手始めに玄関先から始めようとほうきを手に取り掃き掃除をしていると、
――ピンポーン
とすぐ近くにある扉からベルの音が鳴ったのだ。
来客の予定もなければ宅配を頼んだわけでもなく、
心当たりのないインターフォンの音に不信感を抱きながらも左手にほうきを持ったまま、扉を開けた。
「お前……」
南が開けた先に居たのは、来ていた上着を腰に巻いて、息の上がった様子のデスの姿だった。
少し息を整えるデスを横目に南は溜息の後続けた。
「少し前にショッピングモールで爆弾発言連発してくれたの覚えてないのかよ。
その中に、自分と咲玖さんに犯行予告したのはそっちだよな。
こんなにしょっちゅう来られたらこっちも迷惑なんだが」
南が低いトーンで話を続ける中、大きく息を吸い込んでデスは声を出した。
「単刀直入にいう。お前ら3人を殺しに行く奴が変わった」
デスは切羽詰まった様子で話を続けた。
「俺は元からお前らを殺す気なんて微塵も無い。
でもそれが閻魔にバレちまって、今回の件から下ろされた。
だから、近いうちにお前と咲玖と……なつめを殺しに来る」
殺される標的。そして1番デスも嫌がっていたターゲットこそ空閑奈津女。
彼女だったのだ。
南は何も言わずに1度目をつぶり、落ち着いた様子を装いながら小さく一言呟いた。
「分かった」
それを聞いたデスは悔しそうに下唇を噛んだ。
南は目を開けるのと同時に何かを決意したように言った。
「自分は1度。主人の命を守れなかった。だけど、次こそは何に変えても」
両手に強く力を入れる。
ほうきがパキパキと音を立てるがそんなの気にせず、力を入れ続ける。
「必ず。守る」
「――守れ」
南の力が入った声にデスもか細い声で、だが顔は真剣。
そんな様子で声を絞り出した。
「俺も、できる限りなつめを見ておく。
だからお前は咲玖を優先的に守れ」
「あぁ。助かる」
そんな真面目な話を終えた後。
気が抜けたのか、デスはヘナヘナと扉に寄りかかった。
南はそれを見て少し笑った。そして気になったことをニヤニヤと笑いながら聞いた。
「いつの間に主2号から卒業したんだ。咲玖さん」
「いやぁ~何の話か分からないなぁ」
すっとぼける様に手を後ろに組んで目線を左上に持っていくデス。
少しとぼけ続けたデスだが南の顔に目線を戻してニヒッと笑って見せた。
その2人の様子はまるで喧嘩後、仲直りをした子供の様だった。
「それじゃ。僕はそろそろ行くねぇ」
「その一人称変えんのやめろ気持ちわりぃ」
「猫被って何がいけないのさー」
そう言って背中を向けて歩いて消えるデス。
南は扉をぱたんと閉めると、掃除に戻った。
「さ。次はどこやろうか」
――2時間後
屋敷内をくまなく掃除した南は、使っていた雑巾を絞って干した。
濡れた手をタオルで拭き、時計で時間を確認する。
時間はあっという間の4時半。
南はハッとした様子で、買い物袋と財布を持つと屋敷を出て行った。
向かった先は屋敷のすぐ近く。奈津女も行ったあのスーパーだ。
「夕飯は、久しぶりに唐揚げでも作るかな?」
そんな独り言を呟きながら肉や付けそいのカット野菜などをかごに入れていく。
一通りの食材をレジで会計を終えてスーパーを後にした。
屋敷に帰ってからは、手を洗い、料理を早速作り始めた。
肉の下味をつけ、衣をつけ、揚げる。
カット野菜を軽く洗って、2枚のお皿に盛り付け、ドレッシングをかける。
そうして出来上がった料理を満足そうに机に並べると、咲玖が匂いにつられるように歩いてきた。
「おいしそう」
「よかった。今日は唐揚げですよ~」
箸を渡して2人は手を合わせて〈いただきます〉と声を揃えて言った。
器用に箸を使いこなす咲玖。目の前ではフォークで食べる南。
咲玖は本当に小さい頃から日本で生活をして箸を日常的に使っていたが、
100年以上の時を異世界で過ごしていた南にはまだ箸というのは慣れていないものなのだ。
咲玖は唐揚げを掴んで口に運び米もパクパクと口に入れていく。
南も良く食べてくれる咲玖を見てほほ笑む。
「南。お代わり頂戴」
「はーい」




