14話 宴(前半)
〈登場人物〉
空閑 奈津女20歳
?? 由梨 26歳
九十九 南 ?歳
神楽 咲玖 170歳
「そろそろ、飲みに行きますか?」
奈津女が提案すると、3人は頷いた。
由梨が辺りをキョロキョロとみる。
「――この家窓少ないよね。夜景がきれいに見える場所ってあるの?」
「この館で一番夜景がきれいに見える場所なんて一択でしょ!」
南はニヒッとながら、天井を指さす。
「え?」
3人は南について行き、階段を上っていく。
お酒を南。ジュースを由梨。おつまみを奈津女。グラスを咲玖が持って上っていると、その先から光が見える。
(さっきまで暗かったのに、いきなり光が……)
奈津女がおつまみの袋を強く握る。
すると、先頭を歩いていた南がいきなり立ち止まった。
「よっし。じゃあ由梨さん。この酒瓶持っててもらっていい?」
「あ、うん」
そうして、両手が空いた南はなにやら壁を触っている。
そして、バサッという大きな音の後、少し強い光が辺りを覆う。
奈津女がまぶしさのあまり顔を伏せる。
そして、すぐに由梨の声が聞こえてきて顔を上げる。
「うわーすごいよ奈津女!」
「☆本当だ!」
4人の目の前にあったのは、きれいに輝く星空だった。
「ここは?」
「屋上。俺と南が月に一度。満月の日に酒を飲むときに使ってる場所」
「きれいすぎない⁉」
「でしょ~」
南は自信満々に腰に手を置きながら胸を張っていた。
屋上には柵があるわけではなく、ただただ。きれいに広がった夜空を眺めるためだけの場所と言える所だった。
「よし!じゃあ始めますか!宴を」
「わーい!」
由梨はノリノリだったが、その内心では少しの心配事も重なっていた。
(奈津女は今年で20歳。まだ、お酒慣れをしていないあの子が一番お酒に弱いはず。
ウチもあんまり酔わないようにしないと!)
そうして、夜空の下、宴が今宵始まる。
まず、一番最初に取り出したのは缶ビールだった。
4つ取り出し、みんなで同時に缶を開ける。
プシュッと言う音が同時に響く。
カンパーイと4人が言うと由梨はグビッと一気に飲み込んだ。
「ちょっと、由梨さん大丈夫⁉」
南が慌てながら由梨の様子を見る。
すべて飲み終えた後、笑顔で南の方を向く由梨。
「ダイジョブ大丈夫~ウチ意外とお酒強いんだよね~」
「そ、そうなのか……」
南は驚きな声を小さくしていった。
咲玖は細い声で由梨に話しかける。
「奈津女さんは全然ダメだけど……」
「――」
奈津女の顔は一口飲んだだけでほんのり赤くなっていた。
「ちょっと!奈津女⁉」
由梨は奈津女の肩を持ち前後に軽く揺らす。
すると、まだ意識はあることに気づいた。
「あ~大丈夫ですよ。まだ生きてます」
「死なれちゃ困るよ」
そう言って南は笑っていた。
すると、咲玖が何かを思い出す。
「そういえば、俺の部屋に来たのって〈あだ名つけるため〉じゃなかったっけ?」
由梨は〈あ、そうだ〉といって、ノートのようなものをカバンから取り出す。
「酔っぱらって忘れたらいけないから、ノートにメモって行くねー」
「さすが、由梨さん」
「エへヘ~」
そう言ってノートの見開きのページを開けて鉛筆を手に持つ。
「じゃあ、司会はウチがやっちゃうね~。
誰からやっていくか決めるために、あみだくじとか作ろうと思ってたけど……奈津女優先でいい?」
咲玖も南も異議なしと言うように首を縦に振る。
「では、空閑 奈津女のあだ名を考えてください!ちなみに、ウチはもう考え終わってます!」
「じゃあ、一番初めに由梨お願いします」
そう奈津女に指名された由梨はスッと立ち上がり、発表をする。
「奈津女の事をこれからは、ナツと呼びたいと思う!」
「おぉ~いいね~」
南が反応をして、咲玖はグッと親指を立てる。
「わぁーい。ナツ~」
(なんか、聞き覚えのある呼び方ですね)
そう頭の端で考えながらも奈津女はルンルンとしながらあだ名を連呼している。
「気に入ってもらえたようで何より!」
由梨が嬉しそうに奈津女を見つめる。すると、南が手を挙げた。
「お。じゃあ、次南さん!」
「はい」
そう言って由梨は座り、南が立ち上がる。
「奈津女さんの事。
どうしても『さん付け』にしたいから奈津女さんってそのままの呼び方にしたいんだけど、大丈夫?」
「はい。大丈夫ですよ~」
(あ~奈津女少しずつふわふわしてきたねぇ~)
そう考えた由梨は、咲玖の方を見つめる。
すると、咲玖はスッときれいに手を挙げる。
(ナイスタイミング!)
「じゃあ、咲玖さん」
「はい」
そう返事をした後、立ち上がると、少し恥ずかしそうに発表した。
「な、奈津女って呼びたいと思いますッ」
「え?……あだ名」
「まぁいいんじゃない?奈津女さんは嬉しそうだし」
そう言われた由梨は奈津女の方を見る。
すると、酔っているせいか顔が赤いのにプラスして恥ずかしそうにしていた。
でも、その口元は笑っていることを確認すると話を続ける由梨。
「よし!じゃあ次は咲玖さんのあだ名を考えようか」
「自分は使命上あの呼び方は変えたくないから咲玖様で行くね」
そして、由梨はコクリと頷き奈津女の方を見る。
「奈津女は考えた?」
「え~ん~と……考えてはいるのですが。少し恥ずかしい……」
最後の方をボソッと言うと下を向いてから、由梨の方を向いた。
「決まりました!私。今日から咲玖って呼びたいです!」
「⁉」×3
3人は驚きのあまり声にならない声を出している。
由梨がやっと声を出せるようになると第一声は……
「いいねぇ~奈津女にしては、珍しい呼び方にするじゃん!」
そう言っていると、由梨に続いて南も咲玖も話し始めた。
「咲玖様の事をそんなに気安く、呼んで頂ける方と出会えるとは……」
南はそう涙目になりながら言っていた。
うれし泣きをされた奈津女は少しアタフタしている。
咲玖はというと
「――」
言葉にできないような。嬉しそうな。ワクワクしたような。そんな顔をして下を向いた。
「よし。ウチが咲玖さんを次からはさっくんって呼び方にしたいと思います~」
「咲玖っていうあだ名の後だからだろうか。
ギャルって感じが強くて変に感じる。これは異常なのだろうか……」
「大丈夫だ南。俺もビックリしてる」
「うん。大丈夫だと思うよ。ウチが言うのもなんだけど、ふざけすげてて笑う」
そういいながら、由梨は笑顔で酒を飲んだ。
「ちょっちょっ(汗」
そうして、南はまた止めに入った。
今回は少し長めに書かせていただきました。ご了承ください
予定時間より10分遅くなってしまい申し訳ございません
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ