一頁 トマトジュースの憂鬱
孤独なヴァンパイアの心情を、コミカル要素を含めつつ書いてみました。
ドラキュラ伯爵直筆の手記調で進んでいきます。
ヴァンパイアという種族は、つくづく哀しい存在だと感じる。
豊かな草木の茂る広大な平原の地には、かつての王の宮殿を思わせる格式の高い古城があり、そこに住む我輩はドラキュラ伯爵と人々から呼ばれている。
人間達の平均的な寿命と言われているその何倍もの年月を、この城で過ごしてきた。
これまで若い女の血を飲むことで若さを保ってきたが、現代の厳重なセキュリティーの前ではそういうわけにもいかず、渋々トマトジュースを飲む毎日が続いている。つらい。
そろそろトマトジュースも限界だ。直近五十年くらいは騙し々々やってこれたが、もう限界だ。
トマトジュースごときでは若さを保てなくなってきた。このままでは人間と同じように老化が進んでしまう。このままではいけない。なんとかしなければ…。
我輩は考えた。そして考えた末に、ある事に気付いたのだ。
なぜ皆は「老い」を忌み嫌うのか。
なぜ若いほうが良いのか。
なぜ若いだけで美しいと言えるのか。
否!
逆に考えるのだ。
老いることが神聖なのだと。
老いこそが人生の極みなのだと。
老いて何が悪い。足腰が弱くなる?顔にシワが増える?誰がそれを「悪い事」だと決めたのだ?間接痛のどこが醜いと言うのだ?
逆に考えるのだ。
シワシワの顔が美しいのだと。
シワシワの首筋や手の甲が「美」なのだと。
そう考えると、「老い」も怖くなくなってくるのではないか。むしろ「老いたい」と思うようになってくるのではないか。
老いこそが「生命の美」なのだ!
そんな思いを馳せながら、今日も我輩は薄暗く寒い城で一人、トマトジュースを啜るのであった。
明日は献血に参加してみようと思う。