再び
外が騒がしい。ああ。そうか。またはじまったのか。
2065/5/3
日本中に突如サークルと呼ばれるソレは現れた。
ソレが何なのか、誰も知らない。
ただ分かる事はそのサークルは突然現れ俺たちを苦しめてるという事。
このサークルが現れたのは今から約1年前の今日、そう、あれは俺の誕生日だった。
EPISODE1.再び1
2064/5/3
「健太ー、いつまで寝てんのよ、さっさと朝ごはん食べに来なさいーっ」
いつもの光景。
俺のムシムシした部屋が母親の怒鳴り声と共に換気される。
「あぁぁぁ。もう分かったよー。勝手に部屋のドア開けるなってー。」
母親がブツブツ文句言いながら1階へ下りていく。
学校休みなのにと俺は呟き、半分寝ぼけ気味な体を起こして階段を下りる。
妹「うわ。お兄ぃ、寝癖キモイ。。」
今年中学はな上がったばかりの妹(絢)は最近口が悪くなったようだ。
「お兄ちゃんにキモイいうなキモイを、、、俺、今日誕生日なんですが、、、」
俺の返答を軽く無視した絢は母親が作った甘すぎる卵焼きを頬張る。
父「そうだな、健太、誕生日だな。夜は健太の好きな焼肉にしよう。まま、ご馳走でした。」
父親は新聞を読み始める。
絢「やったー焼肉ぅー、お兄ぃが毎日誕生日だったらいいのになぁー」
「お前はまず、お兄様おめでとうございますだろ、ばか」
母「はいはい、ご飯中に暴れなーい!!」
俺の朝ご飯が食卓に並んだ。
ピーナッツバターがたっぷりついた食パンに甘すぎる卵焼きとソーセージ。
いつもの朝ご飯。
テレビ「速報です。沖縄県××市に突如大きなサークルの1部が現れました。色は青く、横幅はまだ不明、詳しい原因を警察と大谷研究所の方々が集まり調べています。このサークルはとても危険です。決して近づかないで下さい。相次いで発見されてるいるこのサークルですが今世界中の-...」
「最近このニュースよく流れてくるよな、サークルってなんなんだよ」
父「新聞も最近この話ばっかりだよ。ん?あれ?これ家の裏...?」
「なーに言ってんだよ、ここは東京だよ?ないない」
絢「ないないー」
俺と絢は呆れながら父親の朝刊を覗く。
朝刊には、東京都杉並区の××で謎の巨大なサークルの一部が出現したと書いている。
絢「え?智也君の家ですやん、、。」
俺と絢は急いで家を飛び出した。
家の裏では大勢のマスコミ、警察やらテレビ関係者ですでに溢れかえっていた。
人をかき分け絢の腕を引っ張りながら進む。
ソレを見た俺と絢は息をのんだ。
そう。ソレは家を飲み込んでしまっていて元々ピンク色の目立つ家の外装はその色であった事を忘れてしまったかの様な真っ青な青色に変わっていた。
絢は警察を振り払い智也君の名前を叫びながらソレに足を踏み入れようとした。
止めようと絢をつかむとその瞬間俺の中にたくさんの人が折り重なりその上に乗って泣いてるまだ小さい女の子の映像が流れた。
「やめろ!入るな、危険だ」
誰かの大きな声に驚き振り返る。
そこにはスーツを着て足を引きずった背の高い男が立っていた。
絢は男の大きな声に驚き後ろに下がった。
絢「お、、幼馴染のお家なんです、どどどどどうなってるんですか、助けてください!」
絢の目には今にも溢れそうな涙で潤んでいる。
男はその質問に悲しそうな顔をして語り始めた。
男「ごめんね。私にもまだ全てはわからないんだ。ただ君の幼馴染君にはもうきっと会えない。私の家もこの間サークルに飲み込まれたんだ。仕事が終わって家に帰ったらもう家が青く染まっていた。急いで家に入ろうとしてサークルに足を踏み入れたら、全身に感じたことのない痛みや耳鳴りがしてほんの一瞬でこのざまだ。」
男が足をめくると俺は思わず絢の目をふさいだ。
そこにあったのは、焦げたような黒色をして溶けたようにも見えるとても足には見えないモノがそこにあった。
ふと俺は絢を見るとソレに少し触れたズボンの裾は少し黒くなり溶けていた。
男は続けた。
男「私には家族がいる。だが私はサークルに入れず家族も助けられない。警察も沢山来たが、誰も近づけず完全お手上げ状態だ。君たち自身体験して分かるようにサークルに少しでも触れただけでそこは黒くなり溶ける。そのうちこの家も跡形もなく溶けて無くなるだろう。私の家は私の家族と共にたった三日で消滅した。今は、青いサークルの一部だけが残っている。ニュースでも言っていただろう。サークルは危険すぎる。私たちには何もできないんだ。」
俺たちは男の言葉に今俺たちの目の前で起きている状況を理解せざるおえなかった。
絢は俺のTシャツの裾をギュッと掴み泣いている。震えているのがよく伝わる。
もちろん俺も頭が現状に追い付かず現実だけが進んでいる。
?「次はここだったかーくそーやられたか―見れなかったなー。」
後ろから聞きなれた声が聞こえてくる。
「あきら?え、美琴と奏もどうして?」
あきら「おーこれはこれは健大君、健大もサークル見に来たんか、ハハッ」
美琴「けんちゃんー、休みの日に会えた―うれしっ」
奏「・・・」
三人は俺の腐れ縁みたいなもので、家も近く、よく遊ぶ仲間だ。
奏「健大、女の子泣かしたの。悪っ」
「おいおい、妹の絢だよ、昔あった事あるだろが。」
「それより、サークルってなんだよ。ニュースもみんなして。」
俺の言葉に三人も男も驚いたようだった。
あきら「健大、マジ?知らないの、え、」
俺と絢は首を傾げた。
男「そうか。サークルとは君たちの今目の前にあるソレの名称だ。誰がつけたかわからない。これはあくまでも噂だが、100年前にも一度だけここ東京23区内で同じものが現れたらしい。その時は今とは違う。東京23区内を4つのサークルで囲まれたらしい。閉じ込められた人々はどんどん食料が不足していき、、ってこの先は言わなくてもわかるだろう。100年前も同じ様に突如光も音もたてず現れて数年で消えてなくなったとか。」
美琴「うわっ!そうそう!おじさん詳しいねー」
男「おじっ、、(咳払い)」
あきら「サークルがあった場所は100年もたった今じゃどこかもわからない。跡形なく消えてるんだ。でも今回は東京だけじゃない。この日本中にサークルが現れているというわけ、しかも完全な状態じゃないサークルの一部、変だよな。」
奏「健大が女の子とあれこれしてる間、俺たちはこの現象についてずっと調べてたんだよ。」
「だーかーらー、妹だって言ってんだろ。そもそも誘われてねーし、人をロリコンみたいに言いやがって。」
美琴「ってか、おじさん、足どうしたの。」
美琴の質問にあきらと奏はうなずいていた。
「その?サークル?みたいのに飲まれたって。」
俺は男のソレを見たくなくて、男に投げかけられた質問を大雑把に説明した。
男「ハハッ、ちょっと色々あってね。君たちもなかなか知ってるみたいだな。どうだ。君たちが今手に入れている情報と私の情報、交換しないか。私は家族を助けたい。家族をこのサークルでなくした今、私には何も失う物がない。がむしゃらにサークルが現れる場所に行っては情報を集めてきた。君たちが欲しい情報もあるかもしれない。」
男は真剣な顔をしていた。
絢「あのー、、」
やっと落ち着きを戻した絢が俺の背後から顔を出す。
美琴「けんちゃんの妹ちゃんだよね。なんだかんだ初めまして?だよね。うちは浮田美琴。美琴でいいよー宜しくっ」
絢「な、長瀬絢です。よ、宜しくです。あ、あの私達もそのサークル?の話聞かせてください」
あの人見知りの絢が今日は珍しく自分からよく話しかけている。
あきら「いいよ!あ、おっさんもいいっすよ、な?奏っち」
奏「なんで俺に、、、。っつかその呼び方やめろ。キモイぞあきら。」
男「お、おっさんって、、まあいいか。私の名前は木林悟だ。もう好きなように呼んでくれ。」
美琴「おっけー!じゃあ、さとるんね!んーこんな場所じゃあれだから、いつもの場所行こっ!!」
こうして俺ら六人はいつもの場所へ向かった。
「やっぱりな」
俺はその場所についてそこがどこかがすぐに分かった。
あきら「そうでーす。こちら、奏っちのお母さんの喫茶店です」
奏の家はつい最近お父さんが交通事故で無くなってしまい母子家庭になった。奏のお母さんは元々喫茶店を経営していて、昔はよく家族で行ったもんだ。
飛び切りおしゃれで重そうなドアが開くと鈴の音とともに奏のお母さんが迎えた。
奏母「あらー、いらっしゃい!懐かしい顔と、んー?新規の方かしら?」
悟「あっ、初めまして。えっとその、、、」
奏「あっちの方でサークルが出て見に行った時に知り合った、この人もサークルで家族なくしてるって。」
奏母「あぁ。あなたもですか。どうぞゆっくりしていってください。」
悟「奏君?だっけか。ありがとう。あなたもというのは、、、そちらも、、、?」
奏のお母さんからはさっきのまぶしいくらいの笑顔が消え、一瞬にして重い空気が流れた。
奏母「立ち話もなんですから、まずは皆さんおかけになって。」
昼前というのに、喫茶店の中はガランとしていて、あたかも俺たちを待ってたかの様だった。
この喫茶店は少し変わった形をしていて、店内は外からじゃ予想できないくらいかなり広い。
こだわったであろう小さなシャンデリアは若い世代の中で映えると有名であった。
俺たちは入り口から遠く広い席に案内された。
皆がそれぞれ席に着くと、紅茶を入れてきます。と言って奏と奏のお母さんは奥のキッチンに立ち去った。
重い空気は続いて結局二人が戻るまでは誰も話さなかった。
奏母「お待たせしました。」
俺たちの前に紅茶が用意された。ミーハーな人がこぞって飲みに来ると噂の人気な紅茶。
紅茶から漂う、フラワリーが俺たちに流れる重い空気を溶かしてくれているみたいに、皆は少しずつ話し始めた。
美琴「奏、ごめんね。うちとあっちゃん知ってた。あっちゃんのパパ大谷研究所の博士なの知ってるでしょ。遊んでる時にたまたま聞いちゃって、、。マジごめん。」
奏「別に大丈夫だよ。あきらの親父から電話来てたし。」
「奏、何があったんだ。俺らにも教えてくれないか。」
奏は話始めようとした奏のお母さんの一言目を遮るように話し始めた。
奏のお父さんは、国内で出張の多いい仕事をしていて小学生の時、ほんとはお父さんいないんじゃないかと噂されていたくらいだった。
__ことは半年前__
一か月振りにお父さんが帰ってくるとお母さんから聞いた奏は、少しでも早く会いたいと思い、電車に乗り最寄り駅から二時間かけて神奈川までいった。
待ち合わせの時間に、お父さんが来て近くの海鮮を食べに行く予定だった。
三十分、一時間、二時間、お父さんを待つ時間は苦ではなく時間があっという間に過ぎていった。
いつの間にか、夜になっていた。
お父さんのスマホは電波障害の為と繋がらず、待ち合わせの場所からタクシーに乗り、お母さんから聞いていたお父さんの職場に向かったという。
職場の近くにつくと白い白衣を身に着けた人が三人ほどいた。そこには建物なんて何もなくその一部が青く染まっていた。
奏はそれがサークルだとすぐに分かった。ネットサーフィンが好きな奏は世間より先にその情報をつかんでいた。そして、ソレにお父さんの職場ごと全て飲み込まれてしまったということもすぐに理解できた。
奏はすぐにお母さんに電話をし、怒りや悲しみを全部お母さんにぶつけるかのように今自分の目の前にある光景を全て話した。
お母さんはもうすでに泣いていて、奏の電話の前に大谷研究所から電話があったといった。
死体どころか建物も何もかもが消えていて、家に帰ってもそこから何日たっても実感すらわかなかった。
大谷研究所や警察の方からは、まだこの件はあまり公表しないようにと厳しく言われていて、サークルの部分は立ち入り禁止になっていた為、日本で再び初めて現れたサークルは先月まで公表すらされてなかった。
高校には交通事故として通している、と。
奏の話が終わると、奏は泣いていた。
おそらくずっとこのことが信じれなく、我慢もしていたんだろう。
奏のお母さんも泣き崩れ、話を聞いていた俺たちも気づいたら涙がこぼれていた。
その状況の中、口を開いたのは悟さんだった。
悟「俺にはわかる。痛いほどわかる。人がその人の死を実感できるのは、亡骸があるからだ。亡骸を見て死を感じ、触れた時の体温で死を感じ、火葬した時、骨上げをした時、骨壺を抱きかかえた時に死を実感できる。だが俺たちはできない。亡骸を見ることも、触れることも、火葬して骨上げをして納骨してあげることも何もできない。いつまでも実感ができず、私だけがココに取り残されてしまったんだという事実を突きつけられる。娘はまだ二歳だぞ。このやるせない気持ちはどこにぶつけたらいいんだ!」
悟さんの思いが全て詰まった言葉に俺たちはただただ下を向いていた。
俺たちにできることはないのか。この人達を助ける事は出来ないのか。
俺たちは、それぞれ考えていた。
プルルルル・プルルルル
喫茶店に電話がかかる。
奏が泣いてる自分を必死に抑え、受話器を手にする。
奏「お、お電話ありがとうございます。喫茶店miiuです。」
?「・・・・」
奏「もしもーし?」
?「・・・・」
奏「あのー・・・」
奏の様子に皆が奏を見る。
美琴「何。こんな時にイタ電、、?」
?「・・し・・もし」
ツー・・ツー・・
奏「え、、、おとう、さ、、ん、、」
奏の手は震えていた。
奏母「え、?何言ってるの?ねえ?奏―?」
奏「お父さんだった。あれはお父さんの声だった。俺にはわかる。お父さんは生きてるんだ。」
俺とあきらは奏の言葉を聞いて急いで、電話の履歴を確認する。
でもそこには電話がかかってきたという履歴はなかった。
俺とあきらはお互いに見合ってうなずいた。
ほんの少しの期待が頭をよぎる。
あきら「おいおい、おいおい!」
美琴「何よ、うるさい。」
あきら「わかったぞ。やっぱりだ、パラレルワールドなんだよ。」
あきらの言葉に何人かが首をかしげる。
絢「パ、、パラレルワールド、、、?って何ですか。」
美琴「あっちゃん、それって!」
奏「ま、じかよ!」
奏母「ねえ、奏どういうことなの。」
皆がそれぞれに疑問を投げる。
俺「これはあくまで予想なんだけど、可能性がないわけじゃないと思う。今、俺たちは確かに電話が鳴ったのを聞いた。だけど、履歴には何も残ってない。通話記録も。普通ならあり得ないけど、もう既にあり得ないことが起こりすぎてるならあり得るかもしれない。奏の聞いた声がお父さんっていうのは、かなり信用性があると思う。」
悟「なるほど、、普通なら馬鹿馬鹿しい話だが、あるかもしれないな。パラレルワールド。」
絢「ああああの、パラレルワールドとはつまり、?」
悟「パラレルワールドとはつまり、並行世界。この世界とは別にある違う世界の事だ。」
絢「い、異世界、、?という事でしょうか。」
あきら「異世界とは違うんだなーまったく別の世界ってわけじゃないんよ。」
絢は眉間にしわを寄せて、詳しく説明しろと言わんばかりに俺を見ている。
奏「あの、そろそろ、情報交換しませんか。」
奏が奏のお母さんの背中を揺すりながら悟さんにいった。
悟「そうだな。私から話すよ。私は娘と妻の他に猫二匹を飼ってたんだ。あの日、帰るともう、家が青く染まっていて立ち入ることができなかったんだが家が溶けるように無くなったあと、飼い猫二匹は取り残されていたんだ。人間には入れないサークルだが、どういうことだか猫には何も感じないようだった。私が行った他の家も飼っている動物だけは取り残されていた。そこで私の飼い猫一匹にカメラをつけてサークルの中の撮影を試みたんだが、カメラはサークルに入るや否や、黒く溶けて液体化した。飼い猫は何にもなかった。どうやら、サークルの外から人間のナニカがそこに入ると黒く溶けて液体化し消滅するらしい。」
美琴「人間以外の生物には反応しない、、んーーーわかんない!」
悟「それだけじゃない。もっと面白いことがあったんだ。サークルに入ろうとするとすごい耳鳴りが聞こえるといったがその時頭の中に何かの声?が聞こえたんだ。その声は何人かの叫び声というか、とても何かを伝えているようには思えなかったが、沖縄にサークルが出て行ったときはソレがはっきりと聞こえたんだ。『調べるな。』『近づくな。』『関わるな。』
『危険だ。』まだ少し曖昧だが、おそらくそう言っていた気がする。この四単語をいろんな人がそれぞれ口にしているようだった。私は今日君たちに会うまでは、それが死者の叫び声だと思っていたんだが、パラレルワールドだとするともっと調べる必要があるな。」
奏「なるほど、悟さんの調べ方は結構ストイックというか、、怖いもの知らずというか、、」
あきら「まあ。家族なくしてんだ。でも、そのおかげでこっちも情報をつかめたんだし、ありがとです、さとるんさん。」
美琴「お次はうちらの番ですかー、あっちゃん頼んだ!」
絢「あ、あの、実は、まだ誰にも言ってないことがあって。」
絢は誰一人とも目を合わせず下を向いていた。
絢「誰も、し、信じてくれないと思って、い、言えなかったんですけど、私も、、えーっと、私も見たんです。」
俺は、絢もサークルに近づいた時に同じものを見たんだと思った。
奏「見た?、、って?」
絢「さ、サークルに入ろうとした時に、見ました。え、映像が頭の中に流れ込んできました、、、」
絢が見た映像は俺が見たものとはまるで違う光景だった。
真っ白な空間にサークルがあってそのサークルの中で皆が手をつないで微笑みあっていたとか。
俺が見た映像は全くの真逆の光景。
どういうことなのかわからなかった。
あきら「絢ちゃんが見た映像、何か引っかかるな。」
奏母「サークルが何か絢ちゃんに伝えたのかもしれないわね。ああ、ごめんお客さん来ちゃったから私はこの辺で仕事に戻るわね。皆さんはゆっくりしてってー、、いらっしゃいませー」
奏のお母さんはまだ元気のない顔をしていたがお客さんを目の前にするといつもの笑顔を見せていた。
「絢が見たの、悟さんの聞こえた声からは想像もできないな。」
美琴「ほんと。真逆よ真逆、どうなってんのマジ。」
あきら「そうそう、俺たちがつかんだ情報の話だけど。俺たち俺の親父の研究所に夜中、忍び込んでさ、まだ実験中のJMを手に入れたんだ。」
「いきなりさらっと犯罪匂わせてくるな。」
悟「JM って、まさか、あのジェットムーンの事か!?」
あきら「よくご存じで。さすがです。でも俺たちの盗んだJMはまだ非公開の最新型。大谷研究所の中でも一部の人間しかしらない。」
「JMなんて聞いたことないな。なんだそれは。」
奏「聞いて驚くなよ、特に健大。」
「たまに来るな、ソレ、なんで俺、」
美琴「奏ってほんとすぐけんちゃんいじろうとするよね。」
あきら「まあまあ、聞いてくれや。そのJMなんだけど、わかりやすく言うと元々は月とか太陽とか近くで観察する為に作られたんだ。無人航空機で、操作はスマホ、最高速は時速330キロをたたき出した。マグマ実験も行われてて、世界初30秒も耐えることのできるた熱性、深海実験では、水深二万メートルまで行くことができこれも世界で大谷がトップの記録だ。」
悟「聞けば聞くほどすごいな。そんな優れたJMを君たちはどう使ったんだ?」
ブーー・・ブーー
絢のスマホに電話が鳴った。
おそらく相手は俺のお母さんだろう。
絢はスマホを確認したがあきらの話が聞きたいらしく無視していた。
美琴「絢ちゃん、お母さんじゃない?心配してるんだよ。連絡したの?」
美琴には七個も離れた妹がいるせいか、絢をしきりに心配していた。
美琴の言葉に絢は頭を振った。
絢は美琴の方へ行き、耳元に何か言っている。
「絢―、そー言えばもうこんな時間だぞー夜は焼肉行くんだろう?絢の好きな金髪の兄ちゃんの店行くのにおめかししないのかー?」
絢「そうだ。お兄ぃ、今日誕生日だ。北野さんに会える!絢、先に帰る!」
絢は特別な日にしか行けない『焼肉・仁義』の従業員さん、金髪の少しチャラチャラしたお兄さんに恋してるらしい。
ついこないだまで小学生だったはずの絢はもういっちょ前にお化粧をする。今じゃ当たり前らしい。
「親に夕方には帰るって言っといて。」
絢「覚えてたらねーっつか自分で連絡しろ、じゃっ!あ、あの、お兄ぃのお友達の方、さ、悟さん、ありがとうございました。ま、またお願いします。」
皆がそれぞれ手を振って絢は帰っていった。
奏「妹、反抗期?怖いな」
「俺だけに反抗期来てるっぽい」
あきら「ごめんごめん。話戻すと俺たちはJMを使って壊さない程度に色々試してみたんだ。その前にー、、、」
あきらはJMの話に至るまでに美琴と奏とどうしてサークルについて調べ始めたのか、先に語り始めた。
要約すると、あきらと美琴が遊んでいる時に奏のお父さんの話を盗み聞きしてしまい、奏に電話すると交通事故にあってしまったと言われた。それ以上何も聞けなくなりサークルについて無知だった二人は調べ始めた。手始めに現場に行ったり、被害者の話を聞いたが何もサークルについてはわからなかった。そこでネットに頼ってみた所、流石のネット社会。このサークルにあきらのお父さんの会社、大谷研究所が深く関わっている事やパラレルワールドの事も書いていた。情報が少しづつ集まってきたころに奏も誘ってみた所、興味はあると言われ三人で動き始めた。あきらと美琴は、もしかしたらサークルに飲み込まれても死ぬわけじゃないと思っていたが、奏の顔を見るたびにそんな確信のもてない話はできないと思い言わなかったといった。
あきら「ここからが本題だ。俺たちはJMでサークルに真正面からぶつけても破壊されることは知ってた。俺のお父さんの資料を少し見た時にJMでもあと一歩で敗れなかったと書いてあったんだ。だからJMの得意分野の飛行で挑んでみた。JMを真上に高く飛ばし上からサークルを見てみた。するとサークルの外側のバリアが一部薄くなってる場所を見つけたんだ。そこからJMを突入させることに成功してサークルの中に入った。」
悟「え?入れたのか?いや凄すぎるなJM」
美琴「こっからなんよー、入れたのはいいけど中身は空っぽ。なぁーんもない!ただただ一面青くなってるだけ。」
奏「健大の頭ん中と同じだった。」
「奏そろそろヤルゾ!」
あきら「そうそう。中に入ってわかった事は、あのサークルの中には酸素がない。そしてサークルに入っている間はJMの操作が効かなくなってまさに無重力空間状態だということ。」
悟「無重力空間で酸素もない。普通に入れば溶けて液体。ますます恐ろしいな。サークル。」
ゴーン・ゴーン
奏母「ちょうど小腹の空いてきた時間ね。良ければ召し上がってー」
悟「もうこんな時間か。私は知り合いと待ち合わせがあるからこの辺で失礼しようかな。」
美琴「さとるん。もっと話したかった。」
悟「私もまた君たちの話が聞きたい。私の名刺置いとくから困ったことがあったらいつでもかけてきなさい。」
奏母「ありがとうございましたー。またお越しください。」
悟さんは名刺と引き換えに去っていった。
奏「健大、名刺見てみろよ。」
「なんだ?次は俺の名前でも書いてあったか?、、何も書いてない。」
奏「そう。裏も表もなんも書いてない。」
あきら「はぁーーー?あいつ俺たちの情報聞きだすだけ聞き出して逃げたな。」
美琴「え?マジじゃん。白紙。さとるんの情報何か内容薄かったもんね。」
奏「パラレルワールドがあるとしたら、あっちのスパイか?」
美琴・あきら・俺「・・・ないない。」
美琴「だってさとるんの家族の話、あれは嘘に思えないよ。」
あきら「まぁ、確かに。あの顔はガチだったな。」
美琴「んんーーってかそろそろうちらも解散するか。けんちゃん誕生日だもんね、おめでと!」
あきら「おめでとう。健大!誕生日の日に暗い話ばっかでごめんな。」
「おお、ありがとう。俺が聞きたかったんだし謝るなよー」
奏「わかった。謝らない。」
「いや、お前は俺に対してのすべての行いにおいてっーー、、、」
奏「はいはい、俺の家健大と近いからこのうるさいの連れて帰るわ。」
美琴「ほんと、奏はけんちゃん好きだねーうちはあっちゃんと帰るわ。」
あきら・美琴・俺「ごちそうさまでしたー」
奏「俺、先に家帰ってるわ。」
俺らは奏のお母さんの喫茶店を出て、美琴とあきらと別れた。
奏「俺実はさ、。」
「なんだよ。」
奏「お父さんの顔が段々思い出せなくなってるんだ。」
「え?どういう事?」
奏「お父さんの顔が段々思い出せなくなってるんだ。」
「だから、聞いたって、ふざけてる?」
奏「結構ガチで、声も記憶も顔まで思い出せなくなってるんだよ。」
「でも皆の前で、あんなにスラスラその時の記憶話してたじゃん。」
奏「それは、時間がたつに連れて薄れてくお父さんを忘れたくないと思ってスマホのメモに残したから、当時の記憶は正直うまく思い出せない。」
「なんか関係あんのかな、ってかなんで俺にそんな大事な話を。」
奏「俺、健大は一番信用できるから。」
なんだそりゃと俺は言って奏の肩を叩いた。
それは突然訪れた。
奏「おい!みろよ!」
大きい声なんか普段出さない奏が真っ青な顔をして真正面を指す。
奏の指さす方を見て俺は『絶望』した。
指の先には俺の家が。何十年も住んできた俺の家が。
今日の夜焼肉に行く予定だった家族が待っている俺の家が。
青く染まっていた
初めまして。
遠藤 木の葉です。
サークルってなんだ?気になりますね!