外伝、祖父の手紙(要約)
外伝です。
元警視庁特別強襲部機動制圧課第13独立部隊所属、通称“四婆鶴(Four―birds)”
新撰組を参考にデザインされた、赤い隊服を身に纏う(一部例外あり)集団で、特別に刀の常時帯刀を許された、4人の個性的なババア達を順に紹介する。
・信子さん(絶対的リーダー:祖父の元妻)。
織田信長と瓜二つで、長い黒髪を振り乱し、灼熱と冷罵の間を往復するツンデレ嬢。
自称49歳。
身長185cm、体重110kg。
・康子さん(愛称:ヤス。徳川家康と瓜二つで、祖父の元愛人)
ほぼ、オッサン。
身長187cm、全備重量285Kg(満腹時)。
10m走─0秒3。
50m走─5秒5。
100m走─2年(入院を含む)。
本当は、秀子さんの数倍以上の天才だがイロイロ面倒なので、一般の平均カワイイ女子を装う、ネイルと天ぷら好きの大食漢。
自称73歳。
・秀子さん(自他認める秀才。偽ミ○キー的な鼠顔の豊臣秀吉と瓜二つで、祖父の元愛人)
枯れ枝のような、容姿が特徴。
金髪・金眼鏡・金首輪・金腕輪・金時計・金色のカスタム隊服・金鞘の刀・金洋靴を身に付け 、暗い夜道でもピカピカ目立つ電飾の飾りを背中で光らせている。
身長209cm、体重95kg。
自称61歳。
・光子さん(祖母:明智光秀と瓜二つ)
周りが暗い雰囲気ほど明るく光る、街灯のような静かで優しい人物。
弱い運を、“経験による知識”と優秀な“風を読む先見性”で補い、乗り越えて来た苦労人。
祖父が大好き。
自称54歳。
身長224cm、体重236kg。
以上、4名。
────将来的に起こるであろう、凶悪事件に対処する為、選抜召集された4人なのだが……
当時は、そうそう凶悪な事件が起こる事が無く、部隊の個性を生かした地域貢献が、主な活動となる。
その1つとして、近所の小学校へ、節分の鬼役として出張する。
(他には、運動会に参加して混乱させたり、トナカイが襲って来るクリスマスの護衛を任されたり……)
節分では、4人全員が鬼の面を被り、木刀を振り回しながら、校内の泣きわめく生徒を恐怖の渦に巻き込み、廊下の端へ追い詰めていく。
────投げつけられる豆を、木刀で全て弾き返した。
また、豆以外の文房具や校内の大小の備品が同時に投擲されても、彼女らに傷ひとつ付けられなかった。
「彼女ら4人の歩みを止めることは、もはや誰にも出来ない。」
と、学校関係者が早々に諦めた。
それでも、自室に籠城した校長の指令で教職員による生徒救出訓練が始まり、生徒に同情した光子さんが教職員側に寝返る。
その時、生徒探索中の、教職員の祖父“本能寺-欄丸”が4人の前に偶然現れ、ついでに節分戦闘に意見を挟もうとした。
だが間髪入れず、康子さん・秀子さんが、教職員の祖父を挟むような立ち位置でキャッキャウフフし、楽しそうに装いながら、意図的に他の2人から遠ざけた。
その様子にイラついた信子さんと光子さんは、各々木刀を他の2人に投げ付け、お互い同時に腰の刀を抜刀。勢いを付けた刃と刃がガチリと衝突すると、反動で2人の体が同時に仰け反る。
その瞬間、両手に木刀を持った祖父が2人の間に割って入り、2人の勝負を止めた。
すると、激昂した信子さんが、光子さんを片足で蹴り飛ばして祖父から遠ざけ、祖父と一騎討ちを怒り顔で挑んだ。
「秀子!、光子を押さえて邪魔させるな。ヤスっ!!、カタナよこせっ。」
「御意っ!」
「御意っ!」
秀子さんは、即座に抜刀して、光子さんの前に壁として立つ。
康子さんは手際良く、信子さんの愛車“スズキ・GSX400Sカタナ”という漆黒のバイクを信子さんに横付けした。
それを見て、慌てた秀子さんと光子さんは、構わず一緒に逃げ出す。
祖父は両手の木刀で挑発しながら、信子さんに向かってニヤリと笑い、
「夫婦喧嘩、久し振りではないか?」
と、問う。
「昔の事など……覚えておらぬんふ!」
少し顔を赤らめた信子さんは、手間取りながら納刀してバイクに股がり、エンジンを吹かして祖父へ突進を開始した。
─── 祖父は笑顔で横に1歩動いて、簡単に突進を避ける。
信子さんはソノまま走り抜け、廊下の行き止まりで操舵技術で918°向きを変えて、強引に停止させた。
エンジンを再吹かしして、再び祖父へ向けてバイクを突進させる。
────笑顔の祖父は、自身の大きなクシャミに突然視界を奪われ、回避行動が遅れた。
刹那、他の3人が素早く動き、祖父を3人同時に蹴り飛ばし、最大の危機を救う。
直後、康子さんと秀子さんの目論見どおり、そのまま通り過ぎた信子さんのバイクが、ガス欠で止まる。
────信子さんは、悔しそうな顔をして、バイクから暫く降りて来なかった。
『ソノ瞬間、節分イベントは、全校生徒全員が外のグランドへ怪我なく避難して、無事に終了した。』
と、祖父は締めくくった。
『その後、教職員も参加の修羅場反省会から合コン5次会まで色々あって、光子さんは、次の年に祖父との間に赤子を出産しました。
────その子が、貴女です。』
突然の告白に、私は全身の力が抜け、手の震えが止まらなくなった。