閑話 オフィーリア視点
悪役令嬢さんことオフィーリア視点です。
メリちと一緒にお芝居をした日。
学校から連絡が行って、迎えが来て、ソッコーで家に連れ戻された。
怒られるんだろうなと思った。そりゃもうバチボコに怒られんだろうなと思って、まぁまぁ覚悟してた。
でも帰ってみたら……パパもママも泣いてた。
ちょっと引くぐらいガチで泣いてた。
今までごめんってちょー謝られた。
何か厳しくしすぎたせいで、頭ぱーんってなってあんなお芝居をしたんじゃないかって。
そんな感じのことを言われた。
や、黙ってるのがしんどかったのはガチだけど。それで家出? ってか一人暮らし? してみよっかなーとか、思ったのもガチだけど。
割と軽い気持ちだったっていうか。
こんなヤバな感じになるとは思ってなかったっていうか。
正直メリちたちといろいろやるのが楽しかったのもあるし、あんま深く考えてなくって。
とりま「育ててくれたのはガチであざす」的なこと言ったらまた泣かれたし。
ちょっと罪悪感エグいけど、最後は「ゆっくり過ごしていらっしゃい」「気になったらいつでも戻ってきていいんだよ」とか言われて、何か感動の別れみたいになって。
雰囲気「一件落着」感出てたから、ま、いっか! みたいな。
クロぴも一緒に来てくれるって言ってたし。
一人じゃないなら……ま、何とかなるっしょ。
◇ ◇ ◇
出発の前に、婚約者のウィリアムが会いに来た。
そういやメリち、婚約ハキ? 廃棄? って言ってたっけ。
あーしは別に、いんだけどね。婚約とか、マンガかよって感じだし。
てか……ウィリアムだって、そうじゃん?
「オフィーリア、静養に行くというのは、その……」
「あー、うん。何か? 田舎でスローロリス? するんだってさ」
「……は?」
ウィリアムが目をまんまるにしてこっちを見た。
あーし今までずっと黙ってたもんね。分かる。
「お前、……話せたのか?」
「いや話せるに決まってるっしょ」
ウィリアムの顔に「心底驚いた」って書いてあった。
前はフツーに、話してた気がするんだけどな。もう、あんま覚えてないけど。
「……すまない」
「ん?」
「お前が話さないのをいいことに、最近は愚痴ばかり聞かせて」
「何で? 面白かったよ」
ウィリアムが気まずそうにもぞもぞしてるのを見て、今度はあーしが驚く番だった。
何かめっちゃいろんな人から謝られるんだけど。何なん?
てか愚痴なんか、聞いた覚えないし。
「だって最近、恋バナとコスメと服の話ばっかだったじゃん」
「なっ」
がたんと音を立てて、ウィリアムが立ち上がる。
うわ。顔真っ赤。
「こ、恋!?」
「この前言ってたスクラブ入りの洗顔、あれめちゃイイね。リピ確定」
「ああ、あれは俺もいいと思った。メリッサベルが高くて買えないが気になっていると話していて……って違う!」
ウィリアムが机を叩いた。いや慌てすぎでしょ。ウケる。
「恋!? 俺が、あの、田舎女に!?」
「え、うん」
「ふ、ふふ、ふざけるなよ! 俺は、アイツのことなんか」
「いや好きっしょ、ちょー好きっしょ」
大慌てのウィリアムに、ついにやにやしちゃった。
照れ方バリエグくない? あれで惚気てるつもりなかったとか嘘っしょ。
「8割メリちの話しといてさぁ。好きじゃないとか、ないわ。ないない」
「ち、ちがう、俺はただ、ちょっと、……魔力! そう、魔力に興味が!」
「ふーん」
もごもご言いながら椅子に座り直すウィリアム。
あーしは机に肘をついて、わざとらしく話を変えるフリをした。
「てかメリち、あの洗顔買えてないんだ? あーしストックあるから1個あげよっかな」
「それはダメだ」
「何で」
「……アイツにやろうと思って、俺ももう一瓶買ってある」
「好きじゃん」
「ちがう」
「メロじゃん」
「うるさい!」
めちゃ否定してくるけど。無理あるでしょ、それは。
素直に認めちゃえばいいのに、意味わかんね。
「俺は、アイツがあまりに貧乏だから気にかけてやっているだけで」
「告んないの?」
「話を聞け」
ウィリアムがあーしを睨む。は? 聞いてるし。何キレてんの?
「お前、俺と婚約しているのを忘れてないか?」
「覚えてるけど。別に、婚約ハイキ? したらよくない?」
「はぁ!?」
「てかそれがセーイ? オトコギ? じゃない?」
「簡単に言うな!」
怒鳴るみたいに言われて、目を瞬く。
別に、そんなつもりはなかったけど。あーしは頬杖をついて、メリちのことを思い浮かべた。
「カワイイですわよー」とか、自信満々で言ってるメリちの顔が真っ先に出てきて、何かにやける。
だってメリちが言ってたんだもん。婚約廃棄って。
追放だって、メリちが言ってた通りになったわけだし。ほぼほぼ未来見えてる見たいなモンだし、間違いないっしょ。
あーしそこんとこ、信用してるからね、メリちのこと。
「あーしメリちのダチだから。ハンパな真似されんの嫌なだけ」
楽しくて可愛くて頑張り屋で、ちょっとブッ飛んでるけど、そこが最高なメリち。
メリちが、あーしにあーしらしくいられるチャンスをくれたんだから……メリちだってそうじゃなくちゃ。
最高に可愛くて楽しくいられなきゃ、不公平っしょ。





