表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/63

36.こんなにも、アドくていらっしゃるのに?

 あら?

 あらあらあら?


 おかしいです。悪役令嬢さん、今ですわ。わたくしに優しくするなら今です。

 とてもチャンスです。千載一遇です。

 今優しくしてくださったらわたくし、懐きますわよ? 「お姉さま」とか呼んで慕いますわよ? 同い年ですけれども。


 何とか気づいていただこうと、じっと見つめて目配せしてみますが、一瞬目が合ったものの、すぐさま逸らされてしまいました。


 これは……もしかして。

 もしかしてですが、悪役令嬢さん、筋書きをご存じない?


 ゲームとか漫画とか、ご覧にならない感じの方ですの?

 SNSはインスタとTikTokしか嗜まれないタイプのお方?


 せっかく転生なさったのに?

 悪役令嬢モノの悪役令嬢とかいう、おいしいとこ取りのキャラクターに転生なさったのに?

 転生チートをお使いになれないお方なのかしら?

 こんなにも、アドくていらっしゃるのに????


 あら?

 あらあらあら?


 それではわたくし、本来の……悪役令嬢モノではなく、乙女ゲームの筋書きどおり、いじめられてしまうのかしら?


 スローライフやら何やらがなくなるのはわたくしには一切関係のないお話ですから、一向に構いませんけれど。

 いじめられるわたくしは、きっとそれはそれでたいへんに可愛らしいのでしょうけれど。

 それでも、それは、ちょっと……嫌かもしれませんわ。


 だってわたくし、いじめられていない方が、カワイイと思いますもの。


「そもそも、いつもカワイイがどうとか言っていますけれど……貴女、ご自分が思っているほど可愛くないわよ」

「ちょっと、君たちさぁ」


 取り巻きさんの言葉に、今まで黙って後ろに控えていたフィルが口を開きました。

 わたくしの前に一歩歩み出た彼に、取り巻きさんたちが大袈裟に騒ぎ立てます。


「きゃあ、怖い! 精霊をけしかけてきたわよ!」

「これだから田舎者は粗暴で困りますわ」

「田舎者はメリッサベルだけで僕は田舎者じゃない」

「フィル」


 窘めるように名前を呼ぶと、フィルは不服そうにわたくしを睨みました。

 怒るポイントは絶対にそこではない気がするのですけれど。

 そこはわたくしも含めて田舎者ではないと言っていただきたいのですけれど。


 わたくしがさしてショックを受けていないのが気に入らなかったのか、それとも冷静なわたくしが強がっているように見えたのか。

 取り巻きさんが、さらに大きな声で、叫ぶように言いました。


「ふ、ふん! 何よ、アンタなんか怖くないし……ぜんっぜん、可愛くないわよ!」

「ふふ」


 わたくしは小さく微笑んで、その言葉を受け止めました。

 いえ、受け流しました。


 わたくしはカワイイ。

 もちろん誰かに「カワイイ」と言われたら嬉しいですけれど……それでも、わたくしの中にある揺るぎない「カワイイ」の尺度は自分自身です。

 自分自身の中にしか、ないものです。

 わたくしが可愛いか、可愛くないか。それを決める権利は、わたくしにしかないのです。


 わたくしが、自信を持って自分のことを「カワイイ」と言える限り。

 わたくしは、カワイイのです。

 まっすぐに取り巻きさんを見つめて、堂々と胸を張ります。


「わたくしは自分を磨きに磨き上げております。眩いほどに……そう、すべての『カワイイ』を反射して、光り輝くほどに!」

「……はい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書き下ろしもたっぷりの書籍版はこちら↓
i000000

もしお気に召しましたら、
他のお話もご覧いただけると嬉しいです!

転生悪役令嬢+男装モノ【第1部完結済】↓
【書籍化決定】モブ同然の悪役令嬢に転生したので男装して主人公に攻略されることにしました

ホラー風味シリアス短編↓
悪役令嬢は自称・転生者の夫に溺愛される ~どうやら破滅は回避したようです~

なんちゃってファンタジー短編↓
こちら、異世界サポートセンターのスズキが承ります

異世界ラブコメ系↓
ソシャカス姉ちゃんがプレイしてるゲームのヒロインが(都合の)いい子過ぎるので我儘を教えたい

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ