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27.さすが国内随一の魔法学園

 フィルと一緒に街を歩きます。


 あら、あちらの店先に飾ってあるのは、この前学園の先生が被っていて素敵だと思ったお帽子と同じ形。王都では流行っているのでしょうか。


 さすが王都、街行く人が身に付けているお洋服もおしゃれです。

 貴族の間で流行ったものが少し後に庶民にも流行ると聞いていましたけれど、確かに昨年流行った鮮やかな黄色の小物を身に付けている女性が多くいます。


「お嬢サマ」

「何ですの?」

「休みなのに、何で制服なの?」

「……学生の正装は制服ですから」


 思ってもいないことを言ってフィルから目を逸らしました。


 学園に通い始めて、先生方のお姿を見てわたくしは感銘を受けたのです。

 さすが国内随一の魔法学園だけあって、皆さま派手な印象はありませんが清潔感があって――それでいて、洗練された教職としての威厳を損なわない気品のあるお洋服を着ていらしたからです。

 そしてわたくしの頭に、一つの疑問が浮かびました。


 もしかして、都会の人は皆あのくらい、おしゃれなのかしら?

 そう思ったら、私服で街に出かけるのに気が引けてしまったのです。ええ、日和ってしまったと言ってもいいでしょう。


 だって今まで暮らしてきた環境と、あまりにも違うのですもの。

 実家にいた時から、アンテナを張ってリサーチはしていましたが……それでも、実際に見るのも行くのも、初めてでした。


 そういった時、制服と言うのは便利なものです。学生ならこれさえ着ておけば、白い目で見られることはないのですから。

 一度街の人たちがどのような服装なのか確認しておくために、今日は制服で出かけることを選択したのでした。偵察ですわね。

 お気に入りの服を着て個性を出すのは、この後でいいでしょう。


 街の人を見たところ、わたくしが持っているお洋服でも浮くようなことはなさそうです。

 貴族の方は知りませんけれど……一応、ドレスも持ってきましたし、正式な場面では制服かドレスで問題ないでしょう。

 何より、どれもカワイイわたくしにとびきり似合うことは確認済みですから。


「ねぇ君」


 少しお高いお店の並ぶ通りを歩いていると、男の人に声を掛けられました。

 振り返って周囲を確認しましたが、どうやらわたくしに声を掛けているようです。


 ぱっと見た感じ、身なりのよい方です。裕福な商家の方といったところでしょうか。


「その制服、魔法学園の制服でしょ? 珍しいね、こんなところ歩いてるなんて」

「え?」


 言われて、首を傾げます。学園の皆さんは、お休みの日もお出かけをなさらないのかしら?

 お金持ちはお家に外商の方が来ると聞いたことがあるけれど、あれは迷信ではなかったのね。


「ええと。わたくし、まだこのあたりに不慣れで。見て回ろうと思っていましたの」

「よかったら案内するよ」

「まぁ! ありがとうございます!」


 ぱちんと手を合わせて、お礼を言いました。

 都会の方は冷たいと聞いていましたけれど、そんなことはありませんのね。こうして親切な方もいるんですもの。


 この街の方に案内していただけるなら、きっとそれが一番安心ですわ。

 もしかしたら、ローカルな方しか知らない安くてカワイイお洋服のお店を教えてもらえるかもしれません。


 男の人はにっこり笑うと、ウインクを交えて言いました。


「お礼を言うのはこっちだよ。君みたいな可愛い子と一緒に歩けるなんて」

「カワイイ」


 カワイイ。


 わたくしはその言葉を反芻しました。

 同時に、それが頭の中で何回もリフレインします。


 カワイイ。カワイイ。

 わたくしが、カワイイ?


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