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16.個人情報はきちんと保護されていますの?

「ねぇお嬢サマ」

「はい」

「僕と契約したのは、身を守るためとか何とか言ってたよね」

「ええ」


 フィルの言葉に、わたくしは頷きます。

 カワイイわたくしが誘拐などの危険から身を守るため、精霊との契約を(勝手に)早めに決行したのです。

 その甲斐あって、こうして早速魔法の特訓に取り組めているのですわ。


 目の前にいる、お母様の精霊さんと対峙します。


「それなのに練習してるのはこのヘンテコ魔法って、どうなの?」

「好きこそ物の上手なれ、まずは得意なものから練習すべきですわ」


 精霊に向かって手をかざします。

 この仕草が必要なのかは分かりませんが、この方が「っぽい」ですから。


 詠唱はフィルにも伝えてありますから、共通認識もある状態です。

 しかもお屋敷全体に何かするわけではありません。

 きっと今度は、うまくできるはずです。


 小さく息を吸って、わたくしは呪文を唱えます。


「スタートゥインクルマジーック☆メーイクアーップ!」


 詠唱とともに、小さなワンピースが現れてお母様の精霊を着飾らせます。

 ……が、ディティールのクオリティがイマイチです。精霊さんも嫌そうなお顔をしていました。いえ、小鳥さんなので雰囲気の話でしかありませんけれど。


 嫌そうなお顔になるのも納得です。

 まずワンピースが現れるときのエフェクトが地味です。もっときらきら、変身バングのようなどきどきわくわくするような演出がしたいのに。


 そして肝心のお衣装もそうです。

 小鳥さん的フォルムの精霊さんに着てもらうなら、スタンドカラーよりもローカラーの方が良かったでしょうし、シャーリングも少なすぎました。

 改善の余地あり、ですわね。


「やっぱり、フィルも一緒に言ってくれないといけないのではないかしら」

「僕が? その詠唱を? 冗談キツいよ」

「でも共通認識が目的なら、きっとその方が効果的ですわ」


 唇を尖らせるわたくしに、フィルがやれやれという風を隠しもせずにため息を吐きました。

 だって「マーブルスクリュー」だって2人で言うじゃありませんの。


「誘拐よりも気にした方がいいこと、あるでしょ」

「え?」

「君、ヒロインなんでしょ、悪役令嬢モノ? の」


 フィルの言葉を、わたくしは首肯します。

 わたくしの知る限り、ここは間違いなく悪役令嬢モノ小説「転生したら悪役令嬢でしたが(中略)もう遅い〜」の世界です。


「君の記憶を漁った感じ、悪役令嬢モノって本来悪役のはずの悪役令嬢が、転生だかタイムリープだかでいい人になって、その対比としてもともとはヒロインのはずのキャラクターが悪者になったりする。そういうジャンルってことでしょ」


 やたらと造詣が深いのは何故なのでしょう。

 わたくしの記憶がどこまで漁られてしまったのか、不安になってきましたわ。

 プライバシーは? わたくしの個人情報はきちんと保護されていますの?


「悪者とは限りませんけれど、あくまで主役の悪役令嬢さんの引き立て役ですから。悪者のパターンあり、空気のパターンあり、逆に悪役令嬢さんを持ち上げるパターンあり。そんな感じですわ」

「どれでも、ヒロインであるところの君は結局その『悪役令嬢』さんのために割を食うんじゃないの?」

「まぁ、そうかもしれません」


 頬に手を当てて、首を傾げます。

 「悪役令嬢モノ」でさえなければ、本来チートやら何やら、そういうものはヒロインの特権のはずですもの。


 まぁわたくしは、「カワイイ」という一番の特権をすでに手にしていますので……それ以外にはさしたる興味もないのですけれど。


「じゃあアレじゃない? こんなところでチマチマ魔法の練習なんかしてないで、前世の知識を使ってバーッと無双ってやつ、しちゃった方がいいんじゃないの?」

「貴方、わたくしよりもそのあたりの用語を使いこなしていますわね」

「だってそうでしょ。この先何が起こるのか分かってるんだから、いくらでもやりようはあるじゃない」


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