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10.娘を売るくらいなら臓器を売るよ!

「領主様!」


 翌日、家族で食事を取っていると、ダイニングにぞろぞろと近所の領民たちが駆け込んできました。

 みんな何故か、鍬やシャベルを装備したり、頭にバケツをかぶったりと戦闘モードです。

 改装後のダイニングが明るすぎて目がショボショボしていたお父様が、不思議そうに首を傾げました。


「ああ、マーク。どうしたんだい、朝も早くに」

「どうもこうもあるかぁ!」

「屋敷が急にピカピカになったもんだから、みんなどえらいびっくりしただよ」

「ついに領主様が臓器でも売ったのかと思ったわ」

「失礼だなぁ!」


 お父様が苦笑いしています。


 みんな我が家の窮状はよくよく理解していますので、リフォームのお金がないことなどお見通しです。

 そしてお父様に資金援助を取り付けられるような政治的手腕も、一発当ててお金を稼げるような商才もないということも、お見通しでした。


「だって領主様が間違えてミントを植えた庭まで綺麗になってたんだぞ」

「あれを根絶やしにするなんて尋常じゃねぇ」

「どんな手を使ったんだ」

「わたくしの魔法ですわ」

「お姫様ひいさま!」


 わたくしが口元を拭いて一歩歩みだすと、ご近所さんたちがわたくしに向き直ります。

 そして近寄ってきて、ぽんぽんとやさしく背中を叩いてくれます。


「えがった、お姫様も無事だったんだな」

「おらたち、てっきり領主様が臓器かお姫様を売ったもんとばかり」

「だから失礼だなぁ、みんなして!」


 娘を売るくらいなら臓器を売るよ! とお父様が叫んでいました。

 いえ、臓器も売らないでほしいのですけれど。

 そしてわたくし両親から、魔法学園でどこか良いところのご子息に見初められて結婚することを勧められているようなのですが、それは実質人身御供ではありませんこと?


 わたくしは集まったみんなに向かって、えっへんと胸を張ります。


「わたくしの魔法にかかればこんなもの、チョチョイのチョイですのよ!」

「えらいなぁ、お姫様は」

「チーズ食うか? 木苺は?」

「おらはお姫様はやればできる子だって思ってたっぺ」

「めんこいのぅめんこいのぅ」


 みんなが蝶よ花よと甘やかしてくれました。

 わたくしはますます胸を張ります。


「もちろん! わたくしは魔法学園に通うのですもの!」

「そうかぁ」


 わたくしの言葉に、マークおじさんがゆっくりと頷きます。

 その表情は笑顔でしたが……どこか、寂しげでもありました。


「春には王都に行っちまうんだったなぁ」

「寂しくなるだ」

「ここらで子どもはお姫様だけだったからねぇ」


 しんみりと言い出すものですから、わたくしまで少々おセンチな気持ちになってしまいます。

 王都に行くのは楽しみですけれど……みんなと離れるのは、寂しいですから。


『ちょっと、お嬢サマ』


 壁際に控えていたフィルが近づいてきたかと思えば、脳内に彼の声が流れ込んできました。

 わたくしの脳内に直接話しかけているようです。


『高齢化が深刻だよ、君の領地』


 余計なお世話でした。


 仕方ないのです。不作もありますが、その前から休みのない第一次産業に嫌気がさした若者が、都会に出て行ってしまっているのです。

 必然的に子育て世代もいないので出生率が下がり、高齢化が進んでいます。


『過疎化も深刻』


 黙らっしゃい、と強く念じてみました。

 フィルにも伝わったようで、彼は軽く肩を竦めると知らんぷりで顔を背けます。


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