プロローグ
それに気づいたのは、わたくしがまだ10歳のころでした。
鏡を見て、ふと気づいてしまったのです。
あら? あらあらあら?
わたくし、もしかして、すっごく、可愛いのではないかしら????
つやつやさらさらストレートの金色の髪、陶器のように白く滑らかな肌。全体的に色素が薄いけれど、そばかすや赤みは目立ちません。
アイプチいらずのくっきり二重まぶた、こぼれそうなほど大きな青い瞳に、それを彩る長い睫毛。
桜色の頬、薔薇のつぼみのような唇。つんと通った鼻筋、鼻プチいらずの文字通り小さな小鼻。
小柄だけれど手足がすらりと長くて、華奢な身体。
リボンのついたふわふわひらひらのネグリジェを着ていてもまったく違和感がありません。
寝起きですらこれです。お化粧などしておしゃれなお洋服に着替えたら、どうなってしまうのでしょう。
これなら、駅でぶつかった相手が、わたくしの顔を見て舌打ちすることもない?
可愛いフリルやリボンのついたお洋服を着ても、笑われない?
お化粧やダイエットを頑張っても、「どうせ無駄なのに」って言われない?
その瞬間、脳内にぶわりと「前世」の記憶が蘇ってきたのです。
ぱっちり二重も、つやつやのストレートの髪も、白く滑らかな肌も、大きな瞳も、長い睫毛も、小さな唇も、通った鼻筋も、長い手足も、華奢な身体も持っていなかった――何ひとつ持っていなかった、前世の記憶が。
かわいくなかったけれど……強く「カワイイ」に憧れて焦がれていた、あの日の記憶が。