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荒ぶる悪鬼の恫喝(アダム)

「ユリウス殿下が、今すぐにティエラ様を保護しなければ、北国の制圧が終わり次第、次は北方の部隊を丸々王都へ向かわすと仰っています」


 ユリウス兄さんがベアトリーチェにそんな脅しをかけたようだ。


 自室で、トリスタンの報告を聞いていた。


 こちらに攻め入ってきた国を逆に制圧した勢いのまま、次はその切っ先をここに向ける気か。


「脅しじゃないね、兄さんは本気だよ。北方に送られていた部隊は地方の平民出身者ばかりだから、躊躇なく信頼を寄せるユリウス兄さんの命令に従うだろうね。本当に、母と呼びたくはないあの女も、子爵家の者達も面倒な事をしでかしてくれるよ。奴隷狩りまで利用して、姉さんの身代わりの死体を用意するつもりだからね。例え偽物の死体でも、そんなモノが兄さんに差し出されたら、国が消滅しかねない」


 早くティエラ姉さんを見つけて兄さんをなだめない事には、僕の目指すものが遠のく。


 それに、兄さんには他の神から契約の打診がいっているようだ。


 下手すればこの国で、神の利権をかけた代理戦争が起きかねない。


 ティエラ姉さんの身の安全には細心の注意を払っていたのに、まさか兄さんの部下が暴走するとは思わなかった。


 煽ったのは、リゼットであり、ダンスト子爵家だ。


 さらに子爵家を焚き付けたのは、ベアトリーチェだ。


 母は早々に負けを認めて大人しく引っ込んでおけば良かったものを。


 リゼットも、あの程度で本当にユリウス兄さんが相手にするとでも思ったのだろうか。


 ユリウス兄さんはバカじゃないんだから、ティエラ姉さんがいなかったとしてもあり得ない。


 さて………


「姉さんは、時を操る力を使って、全力で逃げ回っているから、常人では捕まえるのは不可能だ。ちょっと予定よりは早くなったけど、ちょうどいいから、ユリウス兄さんに直接出向いてもらおうか。その間に僕の用事を済ませられるかな。トリスタン。兄さんに僕の伝言を伝えてくれないかな?」


「仰せのままに」


 伝言を託したトリスタンが退室すると、懐から手鏡を取り出した。


 銀色の一見シンプルな何の変哲もない手鏡だ。


 僕の契約神が与えてくれた“真実の鏡”。


 知りたい事を教えてくれる神具。


 これでティエラ姉さんの居場所は分かるけど、姉さんの逃走能力が高くてスルリスルリと逃げられている。


 その鏡を覗き込む。


 鏡の中に映るのは、自分の姿ではなく、一人の派手に着飾った女。


 “あの女さえ殺せば、私が王妃になれるはずだったのに!!”


 “何でこんなことになったの!!”


 “あの女の子供も、あの女と同じように殺してやる!!”


 ヒステリックに喚きながら、そこら辺の物を投げ、家具を壊して、当たり散らしている。


 見るに耐えない姿を晒している女は、自身の母親だ。


 王妃を殺し、王には毒を盛り再起不能にし、自らの欲に溺れた人。


「まったく、何で僕はこんな人から生まれて来たのか……」


 この人が何処かの段階で何かを思い留まってくれていたら、せめて命くらいは救いたかったけど……


 ここまで来てしまっては、それをするつもりはない。


 この国の毒を全て吐き出させる事が、僕の目指すものの第一歩だ。


 親殺しの罪は、いつまでもこの身に刻みますよ。母上。










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