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04-01.保護者解約は必然ですけどなにか?



引き取られて直ぐに女は、私を罵りながら手が出るようになってしまった。

これって虐待じゃね?


いや、気に食わないなら最初から引き取るなっつの。


そして、それを見ても旦那は知らぬ振りをしている。


気に入らないのは顔か。態度か。

全部だろうか。

子どもらしさも愛想もないのは自覚している。

けれどもだからといって懐かない子ども相手に暴力をふるってもいいという言い訳はないだろう。


ちなみに、歩み寄る努力はしましたよ。

苦手な相手に対し、頑張ってみましたよ。

けれど無意識に態度に出たのか何なのか…歩み寄りは確実に失敗したわけです。


そんなわけで、女についてはもはや好意などなく、むしろ負の感情しかなくなった。

殴られて好意を持つとか無理だって、絶対。

そんなの、どこのドМかってね。


そしてたぶん「そう」作用した。


なぜわかるかと言うと、女の肩にキラリと光るソレが付いたからである。

「幸運」が付いたのだ。


私も今世で初めて見たのだが、どうやら能力が作用すると肩に光が付くようなのだ。

知らなかった。


突然現れて、しかも昼間でも確認できるほどだ。

そんなに目立っているのに周囲の人は何も言わない。


ということは、他の人には見えていないということだろう。私にしか見えない光だ。


だから「たぶんそう」なのだろうと推測している。


しかし輝きは鈍い。酷く仄暗い光だ。

それが私の「負の感情」を表している気がする。


幸運はその人にとって最も欲しいものを与えるきっかけを作る。

欲しいものを手に入れるチャンスを与えてしまう。

それにより、他人よりも自分は優れているような錯覚を起こしてしまう。


手に入る幸運を自分の能力のように思い始め、傲慢になっていく。


私には「運がある」。

「ついている」。

だから「何をしても良い」と。


なんの三段活用だろうか。


運があろうが無かろうが、やっていけない事は、やってはいけないだろう。

だが不思議な事に「幸運がついている」というだけで、たいていの人間が傲慢になり、狂って行くのだ。


自分が「運づいて」いると思い込んだ人間は、なぜか蔑みの対象として私を罵ってくる事が多い。

馬鹿にしてくるのだ。

こればかりは理解できないのだが、そういうことになるのである。


なぜだろうか。


この養母もそのパターンだった。


(どうでもいいけど)


興味のない人間が何を言ってこようと関係がない。

そんな私の態度がまた気に食わないらしい。

そうだろうな、とは思う。


泣いて怯えれば良いのだろうか。

縋って、許してください、愛してくださいとでも言わせたいのだろうか。


こんな奴に愛されたくなどないけれど。


だが残念ながらとっくに私は壊れている。

人間不信からの派生だろうか。

他人に興味を持つことができないのだ。


こればかりは前世でも全快しなかった。


誰がいつ自分の「力」に気づき、監禁してくるかわからないから、という事もあるが、自分が興味を持ちすぎると「幸運」により、なにかしら相手を壊してしまう可能性を知っているせいだ。


だからといって何を言われても傷つかないわけではない。

ないが、それは相手にはわからないらしい。

良くも悪くも自身が抱く感情で相手に強く作用してしまうこの力は、相手にとって毒にしかならない。


だが一度手にした幸運を信じている女が、ソレに気づく事はない。


よく保った方だとは思う。幸運に気づくのがもっと遅ければきっと、もうしばらくの猶予はあっただろう。


だが今世、私の力が強すぎるのが原因だ。

幸運を手にした事に気づかれるのが早すぎる。

それだけ効果が早い=力が強いのである。


まだ「私」が「幸運」を撒き散らしていると思われてはいない。だから狂うのだ。

これで、私のせいだと気づかれたら大変である。


女は傲慢な性格だった。そして自信家だ。なによりも自分に自信を持っている。

その()()()でまさかこんな貧相なガキの私が、彼女に幸運を与えているとは想像もしないし、認めないだろう。


もしも私が原因だと気づかれたらそれこそ監禁コースだろうと思う。そのあたりは慎重に過ごしたいと思っている。



この世界の人間は一度手に入れた幸運を手放したくない生き物ばかりだ。強欲な人間が多いのだろう。

そしてその為ならば倫理や道徳を犯しても問題ないと考える人間が多い。

それを私は、身をもってよく知っている。


養父母が決まったばかりの頃はまだ良かった。

相手も猫を被り、良い養父母を演じていたからだ。

他人の目がある場所では可愛いと言われて構われた。扱いがペットくさいのは気になったが。


しかしそれも一ヶ月保たなかった。

つまり、彼らはすぐに飽きたのだ。


こいつらは子供を引き取るどころか、生き物を飼ってはならない性格だったのだ。というか、子どもには意外にお金がかかることに気づいたらしく、嫌になったらしい。

驚きの理由である。


どうして自分が自由に使えるお金を削ってまでしてこいつを養う必要があるのかと、何度も目の前で怒鳴られた。


そりゃお金かかりますよね。子どもですからね。

そこは最初に気づこうよ。バカなのか。


むしろ、引き取られたのが私で良かったのではないかと思えてきてしまう。


こんな奴らに普通の子どもが引き取られていたら、その子が可哀想すぎるだろう。

もちろん、私にも我慢に限度というものもあるのだけれど。


だから孤児院に入れときゃ良かったのに。



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