05-01.聖女と名のつく奴は信用するな
とにかく聖女には関わらない方向で。
あと王都の方にも近寄らない。
そう決めていたのだけれど。
なんでまた、ここにいるかなぁ、とため息が出てしまう。
そういや思い出したのだけれど、異世界人を探している人がいやがりましたよね、迷惑野郎が。
宮廷魔術師だっけ?
名前はもう忘れた。
あいつが探している「異世界人」は誰だったのだろうか。
聖女ではないのか。また別の人間か。
今ここで「落ちてきた」という聖女が話題になっている。
王都よりも少し離れた田舎村にも「異世界人」が現れたらしいのだ。
さて、この話には一つの問題点がある。
その少し前に「召喚された」聖女がいるらしいのだ。
召喚、などと言うのは酷い話だと思う。
こっちの都合で勝手に呼び出すやつだ。
呼び出した相手に何もかも捨てさせて、突然呼びつけるやつだろう。最悪だ。
そういう話は大抵、物語では幸せになれたりするけれど、現実問題、そんなわけねぇだろ、である。
わざわざ「召喚する」という事は「何かに使いたいから」という目的があって召喚しているのであって、それなりの危険まで冒して行うぐらいである。
見返りを求められるに決まっている。
こんなクソみたいな世界に、誰がいつどこでどうして召喚なんかしたのだろうか。
ホント、勘弁してあげてほしい。
この世界に聖女は複数人存在するようだ。
ムカツクことに、敵は一人ではなかった。
複数人ということは、もちろん順位付けがあるらしく、力の差によってランクがある実力主義だそうだ。
この世界で生まれた者の中から「聖女」になる人間が輩出される。
別に異世界人に頼る必要などないだろう。
だが今、その異世界人の聖女を「召喚」し、さらに別で「落ちて」もきたらしいのである。
一体何が起こっているのだろうか。
正直、聖女には関わりあいたくないが、うちの可愛い子達に何かあっても困るので、情報は仕入れておきたい。
というわけで、情報収集することにしたのである。
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聖女が拾われたという村でまで行って、話を聞くことにした。
これに関しては、皆が知りたがることらしく、定期的に説明会が行われていたので助かった。
あちこちの村からそれはもう、聖女サマの話を聞きに訪れる人がわんさかいた。
そこに紛れさせてもらったのである。
小さい子達は聖女に憧れるらしい。
私ぐらいの年頃の子はたくさんいた。
皆、目をキラキラさせている。
反聖女派は私だけだろう。
バレてはいないと思うけれど、居心地はもちろん、良くはない。
彼らの話によると、一月ほど前に聖女サマが落ちていたのを拾ったそうだ。
拾うって言い方はどうなのかね。
まぁつまり、保護して王都までの道のりを案内したそうだ。
それはもう、見目麗しいだのなんだのといらぬ修飾子がつきまくりだった。
絶対に信用ならないだろう。
だが実は、王都ではちょうど三ヶ月ぐらい前に、聖女の召喚が成功していたらしい。
なぜ召喚したんだ。そこをもっと詳しく。
もちろん説明してくれた人はそんなことなど知らず、教えてくれたのは、その召喚された聖女が役に立たないそうで、拾われた新たな聖女が大変喜ばれた、という話だけだった。
ちなみに追い出されたらしいよ、召喚された聖女サマ。
なんだそれ。鬼畜が王都にいるじゃないか。
いや、王都には鬼畜しかいないと思うけど。
勝手に呼びつけて追い出すとか、人としてどうなんだ。
この人達は、聖女を拾ったのだという手柄を自慢したいのだろうけれど、その説明もどうなんだ。
人間としてちょっと語り合おうか、そこの鬼畜共。
ちょっと聞いただけでも不審な事だらけすぎる。
かわいそうに、無理やり召喚された方の聖女は王都を追い出され、今や行方不明だそうだ。
代わりに拾われた落とし子である聖女が今は大活躍だそうである。
それをとても鼻高々に、自分たちの手柄のように自慢しているのだ。
要は、拾った聖女が召喚された聖女を蹴落としたって話だ。
蹴落とした事が素晴らしいかのように言っているが、その蹴落とされて行方不明になってしまった聖女は、探してあげないのか?
もう何から突っ込めばいいだろうか。
とりあえずお前ら全員、血の色は赤じゃねーだろ。




