01-03.前々世の自分が死んでから、十年+年齢しか経過していなかった件について考えてみる
店を飛び出すと同時に、青騎士団の人達が来るのが見えていた。弟領主の命令を受けて動いているのだろうか。
「いたぞ!」
「逃がすな!」
指名手配犯みたいな事になっている。
「なんか面倒な事になってる気がする」
うげぇ、と声が出てしまう。
団長がいる。彼も領主の味方だろう。
まぁそうだよね。
騎士団なんて、領主のおかげで成り立っているようなもんだものね。
「嬢ちゃん!」
その団長が、私を見つけるなりなぜか焦った顔をしている。
うん?どうしたんだろ?
泣き落されても私は捕まらないぞ。
なんて思っていたら、さらに面倒な事になっていた。
「嬢ちゃんが作っていたのか?あの回復薬!」
おぉ、なぜかバレている。
なんでだ?と思ったら、彼の手に持っているもので気が付いた。
以前の納品書だ。
だが別にそれで私が作っていたという判定にはならないはずだ。
あれには毎度、仮の父親の名前が記載されていて、私の名前ではない。と思っていたのだが。
「あ」
二枚もってやがる。
ん?と考え…やべぇ、あれか、と気づいてしまった。
最初の回復薬売った時のサインでバレたのか!
やっちまった!
たしかに、バレるかな~とか思った記憶がある。
筆跡は変えているけれど、魔力が乗るから、波力判定されるとバレるな、と。
しかしここの騎士団、そもそも最初は納品数や内容もチェックしているか怪しかったし、備蓄数さえ確認しないようなガバガバだったので平気だろうと思っていたのだが。
弟領主の指摘か何かで、今更になって確認したのだろう。
面倒な。
バレてしまったのならしかたがない。
もう逃げるしかないだろう。
筋力増加剤、飲んでいて良かった!
ちなみに隠蔽魔法は、これだけ視線を集めていると効かないのが難点だ。
隠蔽魔法のかかったままのムムさんに、ちょっとだけ大きくなってもらって背に乗るというのもアリな気がしたけれど、そんな時間もないぐらいに押し寄せてきている。
《捕まりそうになったら噛んでやるから、大丈夫だ》
ムムさんの頼もしいお言葉に甘えて走り出す。
騎士団員たちの合間をすり抜けた。
爽快だ。
「待て!嬢ちゃん!」
いやいやいや、待てと言われて待つ奴はいませんって。
さようなら、団長。
ちなみにあれだ。幸運はそのうち消えるので、色々と頑張ってください。
主に魔の森の魔物について。
あれだ。
ムムたちも私と一緒にお出かけをする。
今までは私がちょいちょい町に降りていたので、ムムが彼らに「姿は見せないように」と言ってくれていたみたいなので、魔物たちもおとなしくしくれていたらしく、そんなに目立った動きはなかった。
けれど今回、私が森から出てしまうので、もう遠慮をする必要はないというわけだ。
むしろ、「後の事は任せた」的な感じらしい。
温室さえ人間どもの手から守ってくれれば、後は好きにしていいと。
魔物なので、あんまり抑圧するのはよくないそうだ。
ストレスが溜まるらしい。
ムムの立場はつまり上司的な感じなので、解放されたらたぶん、好き勝手やりだすと思います。
あとはよろしく。
頑張ってください。
「メメとモモは?」
《心配しなくていい。主様の隠蔽魔法も掛かっているし、問題ない。勝手に帰って来るだろう》
暴れなければ、だけれども。
結局、封印の魔道具しか買えなかったが、急いで出た方がいいだろう。
《ご主人さま!》
メメとモモは直ぐに戻ってきた。…口に何かをくわえて。
「何拾ってきたの」
それはまた小汚い布だった。
しかし彼女達からは、獲物を取ってきた獣特有のドヤ顔で渡される。
「いや、これ何…?」
広げても小汚い布である。
袋状にはなっているが、紐などが括られているわけでもない。
《まほうぐ!》
《まほーぐ!》
二匹ともに褒めて褒めて、というドヤ顔である。
「これが?何の魔法具…」
《主様、それは荷物が多めに入る布だ》
布に顔を突っ込んだムムが説明してくれる。
臭くないんだろうか。
「え、これが?」
《まほうぐ!》
《まほーぐ!》
えっへん、と胸を張る子犬よ…。
可愛いけど。
ムムが突っ込んでいた顔を出す。
《そんなに大きくはないが、見た目よりは入る》
「マジですか」
この小汚いのが。
「どこから持って来たの」
《まどうぐやのゴミ箱!》
あー…あのお店の倉庫に遊びに行っていたのですか。
そして見つけて持ってきてしまったと。
ゴミ箱の中って…。
それ!
ゴミ箱の中だとしても泥棒って言うから!
やっちゃダメなやつ!
しかし、もう返しに行けない。
行くと私が捕まるやつだ。
隠蔽魔法で行ってもいいけど、見つからないという確信はない。
音出したらバレるしね。
そんな恐怖の中、行くことは無理です。
(…あのおっさんに通報されたしな)
何もしてないのに通報されて捕まりそうになりました。
監禁される時のいつものパターンでした。
あれは絶対にダメなやつである。
(もういいや。もらっとこう。そうしよう)
これだけ小汚いから、ゴミ箱に捨てたって気もするよね。
なくなった事に気づかない可能性もなくはないよね。
などと言い訳を考えながら、荷物を入れてみたところ。
「おぉ」
確かに、見た目よりも入る。不思議だ。
○次元ポケットとはまさにこんなカンジ!?
鍋とか、絶対に入りそうになかったものが入りました。
吸い込まれた。
しかも、入った後も重さが変わらない。すげぇ。
「え、これどれぐらい入るのかな」
《見た目の二十倍ぐらいじゃないか》
「にじゅうばい」
それって結構すごくないですか。
見た目、二つ折りにするとティッシュ箱ぐらいのサイズの布ですよ。
と思って回復薬の本とか薬草の本とか、回復薬とか回復薬とか回復薬とか…詰め込めるだけ詰め込もうとしたけれど無理でした。ですよね。
《他に何かを入れられるぐらいの余裕は持ったほうがよくないか、主様》
「ソウデスネ」
すみません、欲をかきました。
いやここに置いておく事を考えると…置いといた方が安心なものもあるのか。
結果、メメさんとモモさんのおかげで、持っていけるものが増えました。
自作の回復薬を多めに持っていけるようになった為、私の精神は少し安定しました。
ありがとうございます。




