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01-01.前々世の自分が死んでから、十年+年齢しか経過していなかった件について考えてみる



モモちゃんが半壊させた離宮からの帰り道。まさかの封印に反応があった。

もちろん温室の封印だ。


「辿り着かれたちゃったかぁ」


馬鹿兄弟の仕業である。

だが彼らは離宮半壊にしばらく気づく事はないだろう。

ちょっと良い気味だ。


《チッ、あいつら何してやがる》


魔の森の魔物達に向けてのムムさんのお言葉である。


毒づいているのはあれだ。魔の森の魔物達は部下みたいな状態らしいので、そういう態度なのだろう。

魔物のことは魔物に任せる。私が口を出す事ではない。

馬鹿兄弟の話も、私は関わりあいたくない。


ちなみに奴らが封印近くにいる為に、馬鹿兄弟の声が届いてくる。本当に便利だな封印。


『回復薬を作る奴がいるのはここか?』

『なぜ入れない!ふざけるな!』


むしろお前らがふざけんなだろうが。

ひと様のおうちに何しようとしてくれてやがる。


勝手に住み着きましたけど、もう私の家でいいよね?

そもそも温室の骨格しかないけれど。


まだ帰り道なのでしばらくは戻れません。

留守ですよ。


ムムさんが頑張ってくれたらすぐ帰れるけれど、そんなに頑張って帰りたくないです。

倒れてしまう。


私が戻るまでには是非ともお帰り願えませんかね。

離宮、半壊していますよ。放置していいんですかね。

誰が馬鹿兄弟にお知らせしてください。






ところで、馬鹿兄弟のクソ親に出会ったことで、気づいた事があります。


前々世以降、かなりの年数が過ぎているだろうと思っていたのだが。

もしかして違うんですかね。違いますよね。


私自身、日付とか時間とかをあまり気にしないのは、監禁されていた名残だろう。

前世でもその概念が少しズレていて苦労した。

日付と時間がわからなかったのだ。


さすがに前世はちゃんと時間を守らないといけない世界だったので勿論、すぐにわかるようにはなった。

けれども覚えるのに少しばかり苦労した理由が今なら納得できる。


時間を気にしてしまったら、自分が閉じ込められているのだという事を認識しなければならなくなり、辛さが増える。

なので気にしないように意識から除外していたようだ。


この世界に戻ってきて、私は無意識にソレを自分でしてしまっていたのだろう。

そのせいで気づくのが遅れたということもある。


自分を監禁していた、あの馬鹿兄弟のクソ親が生きているのである。


先ほど思い出してしまった記憶のあいつはそれなりに若かったが大人だった。

元々中年太りみたいな体型だったけどな。

あの頃はまだたぶん、子どもはいなかったはずだが…そこそこ良い年齢だったはずである。


あそこから別の場所に売られ、それから自分がどれぐらい生きていたかは思い出せないが、少なくともあいつは中年にしかなっていない。

死んでいなかった。


ちなみに、私の帰りを待ってくれていたというムムさん達にも聞いてみた。


彼らは一度目の生からずっとこの世界にいる魔物である。

主従契約をしている関係上、私が死に、その後、この世界に再び魂が帰ってくるとわかると言っていた。

だから、私がどれぐらいの頻度で帰ってきていたのか尋ねたのだ。


そしたらなんと、死んでから再び転生するまでの間は、いつも十年ぐらいで戻ってきていたらしいのである。


頻繁すぎないか私。

え、そんなに頻繁じゃなくてよくね?

辛い人生を自転車操業の勢いで繰り返していたわけ?


そして今回に関しても同じで、なんと、前回から十年も経過していないらしいのである。





さてここで計算があわない事実がある。

私は前々世、この世界に転生して死んだが。…前世に関してはまったく違う世界…つまり、異世界転生していたのだ。


にもかかわらず十年しか経過していないとはこれいかに?


前世で、まったく文化の違う世界に飛んで過ごしたはずの人生はどこいったのだろうか?

私、あの世界ではそこそこ長生きしたはずなのだけれど。


前世はそれなりに長く生きましたよ。

監禁されなかったし、色々あったけどそれなりに平穏でしたし。

医療も充実していたし、不慮の事故ったりしないかぎり長生きするしかない環境だったので。


なのにそれが、この世界ではたった十年に凝縮された感じですか。

むしろ今までの経緯を考えると、なかったことにされていませんかねソレ。

それとも、時間の流れが違ったのかな、あの世界。


どちらにせよ事実は事実である。

つまりいつも通り、十年経過後すぐに転生した感じになっているのだ。


という事は、である。

すくなくとも前々世で私を監禁しやがったあいつらが、この世界でまだ生きている可能性が高いという事だ。


とりあえず監禁野郎がまだ、そこかしこにいるはずである。

記憶が戻り次第、復讐がしたい。

ふつふつと怒りが湧き出てくる。


今ならば幸運を逆手にする事も可能である。

むしろライバル系統の幸運を上げるってのも良いかもしれない。

本人が人生を諦めきっていたとしても、幼女や少女や女性を一人監禁して、人生をめちゃくちゃにしておいて、何もお咎めがないってありえないだろう。

もちろん穏やかに暮らすけれど、機会さえあれば断罪してやる。


というわけで。


戻ったら馬鹿兄弟はいなくなっていた。

あれだ。町に戻っていったみたいである。

魔法伝達でようやく離宮が半壊した事が伝わった模様で、慌てて馬鹿兄弟は帰って行ったらしい。


やったね!

これで一安心である。


「とりあえず、ちょっとこの領地から出てみたいんですが」


馬鹿どもがいない間にとんずらしよう。そうしよう。

だがしかし、残念ながら私一人では何もできない現実がある。


今回の馬鹿兄弟クソ親の件だって、三匹が居てくれたので出来た話だ。

安全に連れて行ってもらって、モモちゃんが離宮を半壊させた。

以上である。


なのでたとえば監禁ヤローを見つけたとしても、私ができるのはせいぜい、そいつのライバルに幸運を与えるとかそういう嫌がらせ程度だ。

嫌がらせ、してみたい気もするけれど。


ただ、その計画にしても、そいつが(私にとって)良い奴じゃないと上手くいかないという不安定さ。

好感度が高ければ幸運値は上がると思うが、嫌な奴だと自滅してもらうことになってしまう。

言葉に反応した三匹は、おおむね方向性は一緒だった。


《良いと思う》

《さいせーい、さんせい!ぜったいについてく!》

《カンキンヤローをかみ殺すタビ!さんせい!》


モモちゃんだけなんか違う方向に突っ走っている気がするけれど。


「…いや、ちょっとここ以外の場所で安住の地を探してみたいというか」


この温室は実に居心地がよいのだけれど、いつまた襲われるのかわからないので、別の場所も探しておきたいというか。

どうやら魔力はそれなりに大丈夫そうなので、他にも隠れ家をですね。

手に入れておきたい小心者です。


もちろん、この温室のような都合の良い場所がそうそうあるはずもないので、のんびり探して、ダメなら別の手段を考えたいと…。

どちらにせよ、探す為には一度、外に出る必要がある。


引きこもりがちな弱々精神なので、やる気のある時に動くのが必須事項です。


《それならば旅の支度をせねばならんな》




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