表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/62

23-01.実の親の残しやがったアレが今頃キタ



そんな騒ぎのせいで、身も心も休まる日がないというのに。

突然、領主が「子どもを捜している」という話が広まった。

いや、突然というわけでもなかったらしいけど。


実はじわじわときていたらしいのだが、知らなかった。

ここは、領地的には端の方だったので、どうやら伝わるのが遅かったらしい。





何が始まっていたかと言うと「保護すべき少女探し」だ。

どうやら、領地にいる子どもを片っ端から「確認」しているらしいのである。


念には念を入れ、少年に変装している可能性も視野に入れての捜索の為、時間がかかっているという。


いやどんだけ念入りに長い事探しているんだろうか。

私がここに来てもう、二年以上経過していますが?


つまりは私を売ろうとした実の親の取引相手が、まさかの兄領主だった件である。


私の記憶の戻りが早かった為、早めに逃げる事ができ、それがきっかけで発見を遅らせる事に成功していたもよう。


グッジョブ私。


大丈夫だ。

今世は監禁なんてされてたまるか!





そうだろうとは思っていたけれど、やはり私はここの領地の生まれではなかったらしい。

領民管理が杜撰な場所で大変助かりました。

ありがとうございます。


実の親がわざわざ隣領に跨いで私を売ろうとしていたのには、理由がある。

自領の民だと、子どもだろうと「献上」させられてしまうんだよね、この世界。

最初からそうだったから、その制度は相変わらずなもよう。


有益な子どもは、領主に取り上げられてしまうわけですよ。

領民のものは領主さまのモノ。

俺様思考が酷すぎる。


そこで、あいつら…今世の両親は考えたのだろう。

他領主が相手ならば、売りつけることができるんじゃね?と。


自領ではただ取り上げられる。

だが他領であれば、さすがに取り上げられはしない。


「取り上げられるぐらいなら買ってください」と泣きついたというわけだ。


そしてそれは正しく、たまたま連絡をしたここの兄領主が取引に応じたのだろう。

そのせいで、奴は幸運の少女の存在を知っているのだ。


だが、待てど暮らせど現れないソレに痺れを切らせ、まさか渡すのが惜しくなって逃げたのではないかと考えたようだ。


こっそりと隣領主の行動もチェックしていたらしいが、そんな噂はまったく出て来ない。


自領であれば子どもが取り上げられる可能性があるので、幸運の少女の親はこちらには来ているはずだと推測された。


どうしたものかと手をこまねていている時にようやく、こちらに向かったという連絡が届いた。

だがそれは死者からの連絡だ。


この世界、通常は「魔法を使うことができれば」魔法伝達で早いはずなのだが、私の親は魔法伝達を使わず、わざわざ手紙を送ったらしい。

そのせいで遅れたようだ。


わざと時間をかけたかったのだろうか。

手紙にした理由はもうわからない。


届いた手紙を読んだものの訪れない待ち人に、これはもしやどこかで事故にでもあったか、盗賊たちの襲撃にあったのではないかと、兄領主は考え至ったのだろう。


なかなか良い線ではないでしょうかね。

すごいですねー。

事故らせて逃げましたからね、私。


けれどもこの世界、事故や襲撃なんてものは日常茶飯事である。

子どもがどのあたりでいなくなったのか判別ができず、連れ攫われた可能性が高いとされ、探しているという事だった。


ちなみに「幸運の少女」とは言われていないが、「稀有な力を持つ少女の為、是が非でも保護しなければならない」としているそうだ。


兄領主自らが率先して探している。


もちろん、引き取られれば裕福な暮らしが待っている。

わが子に良い目をみさせたい親たちが、そしておこぼれに与かりたい者達が、「うちの子ではないでしょうか」とひっきりなしに推薦している事もあり、捜索が難攻しているそうだ。


グッジョブ皆さんの強欲さ。

今回ばかりは両手を挙げて喜びたい。


しかしお子さんが認定された暁にはたぶん普通に、良くて軟禁、普通に監禁コースだと思われますよ。


美味しい話など、この世にはないのである。





もちろん兄領主とて暇ではないので、捜索は部下にさせてみるものの、「稀有な能力の少女」などという不確定なものを探す事が難しいだろう。

おかげで今頃、というわけである。


領地の端であるこの地域に探しに来るのは、本来ならばもっと時間がかかったはずだ。

だが残念な事に、騒ぎ立てた馬鹿がいた為に、余計な事になってしまった。

主に腐れ貴族崩れである。


あの野郎、弟領主だけでなく兄領主にも恩を売ろうとしていたらしい。

連絡しやがったのである。


腐れ貴族崩れからの連絡を受け、もしや宮廷魔術師の孫ではないかという私がその「稀有な能力者」ではないかと踏んだのだろう。

あいつマジで余計な事しかしねぇ。

やはり息の根は止めるべきなのか。


というか兄領主。

買う予定だった「幸運の少女」を探しているのではなかったのか。

もはや脱線していないか?


あいつらの話を総合しても、幸運の少女というよりはたぶん、「効果の高い回復薬を作る、元宮廷魔術師の孫」ってだけだと思うのだが。


それともあれか、その回復薬を作る人間が「幸運の少女」を奪い去ったとかそういう方向なのか?


犯罪者が匿っているという話を鵜呑みにして、連れ攫われた子どもかもしれないという可能性にかけているのかもしれない。


どっちにしろ厄介な事この上ない話である。


そしてこの話を誰から聞いたのかと言えば、メメさんだった。


メメさん、最近姿を見かけないなと思ったら、情報収集に行っていたそうだ。

ナニソレ有能すぎませんか。


聞くところによると、私の魂が戻ってきた際、いつも捜索活動の役割を分担していて、メメさんは情報収集係だそうである。


そんな小さな身体で!?と心配したら、小さいほうが便利だそうだ。

それは一理ある。


魔物って実はかなり賢いよね。

知らなかったけど。


そういえば魔物に対して、人間ほどの恐怖がないのは私、魔物に襲われたことがないからだと気がついた。


いつもいつも監禁されてしまっていたので、人間の方がよほど怖い存在だと思っている。


他の魔物もほとんど見た事がない。


三匹がいるせいでこのあたりの魔物は制圧済みだそうで、彼らが君臨しているので、襲われる事はないそうです。


そうですかありがとうございます。

本当に、三匹には足を向けて眠れません。



入れば危険だが、町が襲われる事がないという魔の森の様子が気にかかるとかいう大義名分で来やがった兄領主は、自衛団を大人数引き連れてやってきた。


それ、完全に私を捕獲しますという喧嘩を売りに来ていますよね?

三匹と一緒に、買っていいですかね?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ