21-01.どうやら幸運に恵まれているように見えるらしいが、そんな事はまったくない
まぁ、あれですよね。巻き込まれますよね。
しばらくはまた避けようと、二週間ぐらいおとなしくしてから町に来たのに、なぜか貴族崩れ野郎は待ち構えていた。
思うにこういうタイプって根気がすごいよな。
泥棒とかもそうだよな。
あいつらの根気ってなんだろうと思う。
もう少し違う方面に生かせないのか。
さすがにもう肉もなくなってしまったので買い足さないといけないし、買うには隠蔽魔法を解除しなければならないので、見つかってしまうのは仕方がないのだけれど。
「このクソガキ!見つけたぞ!」
保険として、今日も一緒に来てもらった隠蔽魔法をかけているモモちゃんが腕の中で唸った。
威嚇するような感じで。
いや聞こえないからね。
隠蔽魔法がかかっているし。
と思っていたら、威嚇音は聞こえるらしい。
相手がビビッたのが見えた。
自分が喋る事がないので知らなかったのだが、隠蔽魔法は姿が見えないだけで、音は普通に聞こえるらしい。
三匹との人語での会話は私にしか聞こえないらしいのだが、獣みたいな唸り声は届くらしい。
それはそれは。
「お前の家に案内しろ!盗品を隠しているに違いない!」
まだ回復薬を盗品だと思っているのか。
今まで、青騎士団にどれだけ納品したと思っているんだ。
むしろそれだけ窃盗があったらどこかで大騒ぎになっているだろう。
逃れようとしたけれど駄目だった。粘着質である。
これはもう、今日は買い物できなさそうだと諦めた方がいいかもしれない。
「どこで手に入れた!言え!」
あーもう面倒くせぇ。
青騎士団の奴ら、責任もってこいつを引き取りやがれ。
特に団長、責任をとれ!
「両親が作っています」
「そんなはずがあるか!あんな上等な回復薬、宮廷魔術師ぐらいしか作れるはずがな…」
言いながら、ハッとした顔になっている。
「まさか、…」
絶対違うからな。
お前の考えている事、絶対に違うぞ。
親が宮廷魔術師とか無いからな!
そんな高貴な身分に生まれていたら、あんな人生じゃなかっただろうよ。
平民だから酷い目にあっていたんだからな。
そういやこういうの、久しぶりだな、と思い出す。
なぜか私が幸運に恵まれているように見えるらしく、やけに妬まれたなぁ、と。
(そんなわけあるかっつの)
できるものならお前の人生と交換してやるぞ。
一度、人権など何もない監禁コースを味わってみるがいい。
(あれなんだよな…自分たちは好き放題使って、好きにやって、自業自得に陥っているクセに、隣の芝は青く見える症候群)
自分の事は棚上げで、相手の芝を見て不公平だとか言い出す奴な。
こいつも同じタイプである。
あーもう面倒だ。逃げよう。
《マスター、おかいものは?》
腕の中で威嚇しつづけているモモちゃんにこっそりと告げる。
「ごめん、今日は帰ろう」
《じゃまなら、かむよ!》
おう、戦闘準備万端だった。
よしよし、と撫でて「帰ろう」と言って走り出す。
普通の速度で逃げたけれど、相手は何かぶつぶつ言ったままで動かなくなったので、追いかけてくる事はなかった。




