19-01.性格が悪い事など百も承知だ
魔物と知らない間に契約をしていたらしい。
押し付け契約だ。押し売りか。
クーリングオフは効きませんでした。
数百年前の話なので、今更とも言う。
しかも押し売りしてきた子が先に亡くなっているってどうなんだ。
思い出すと自分が情けなくて落ち込むので、前を向くことにした。
諦めきっていたせいで、監禁生活だったからな!
それに、亡くなってしまった子達はどうしたって帰ってこないのだ。
だがやれる事はしようと決めた。
あの子達が暴れた記録は残っているようなので、とりあえず調べて、知る事から始めよう。
今までは自分がいなくなった後…万が一監禁された後もちゃんと生きていけるようにと、三匹にはご飯を毎日出していなかった。
自分でちゃんとご飯を獲って食べる、半野良でいてね、という意味あいだったが、それももう必要ないだろう。
謝罪して今後、ちゃんと毎日ご飯を出すという話を三匹にした。
意思の疎通ができるのならば先に言って欲しかった。
別に意地悪で毎日出さなかったわけじゃないんだよ。
ごめんよ。
というか、今後、万が一、私が連れ去られたとしても、居場所がわかるので取り返しに行くと言われました。
三匹が頼りがいのある優しい子で心強すぎます。
涙が出る。
契約をしているので居場所がわかるらしいですよ。
知らない間にマーキングされていました。私が。
私も三匹にしているけど。
「というか、ご飯は何が好きですか」
この子達、出したらなんでも食べるんだよね。
買ってきた惣菜でも穀物でも、適当スープでも。
ぶっちゃけ、洗っただけの生野菜もガリガリ食べていた。
《主様、魔物は人間のような食事をしない》
とんでもないカミングアウトが来た。
え、じゃあ何食べて生きているの。
あれ、その前に、君たちが勝手に押し付け主従契約をした理由って、私があげたというご飯じゃなかったっけ?
《もちろん、主食は魔物の種によって違うが、我々はそこらにいる光の球を吸収する種族だ》
光の球ってあれか、私が自然球とか呼んでいるやつだろうか。
《主様の周りにはとてもよく集まる傾向にある。だからその、》
気づいた。
あれか、私の周りによく集まってくるから、こいつについていれば食いっぱぐれないんじゃないかという。
まさかの誘蛾灯扱いだった!
なるほど、チョロすぎる。
この子達に少しでもメリットがあってよかった。
何もしてあげられないのに契約なんてして、縛りつけてどうするんだと思っていたからだ。
「契約って解除できないの?」
《魔物にとって主従契約は生涯に一度だけだ。主様が亡くなっても魂が消滅しない限りは続く》
そんなご大層なものを私としちゃったのか。
マジで申し訳ない。
しかもむやみやたらと転生を繰り返すような奴でごめんよ…。望んでやっているわけじゃないですけどね。
なんでか知らないけど、転生が繰り返されるのだ。
いい加減、私も静かに眠りたいんですけど。
というか君たち、そんなものを簡単に契約してはいけません!
ちょっと!この子達の親御さん!
子どもの無謀すぎる契約は止めようよ!
目を離しちゃダメでしょうが!
しかしそうか、生涯で一度きりなのか…それじゃあ仕方がない。解除は諦めよう。
その代わり、なにかメリットを探そう。
今までごめんね。なんでもしてあげるよ本当に。
でもあれか。ご飯はいらないのか。
でもその割には、出したら出しただけ、がっついて食べていましたよね、君たち。
《食べることは必要ないだけで、嫌いではない》
《パリパリしたのがすき!》
《にく!にくー!》
喋り出してから、モモちゃんを見る目がちょっとずつ変わっていく気がする。
《ちなみにだが、主様が作ったものだと自然球が入りこむので、そういう意味では食べたことになるのかもしれない》
…それってアレですか、ちゃんと作れって話ですか。
すみません、手を抜いていて。
町行った帰りだと毎回、完全に手抜きなお惣菜ばかりでした。
作るの面倒だな、自分で食べるだけだしいいか、とか思っていてごめんなさい。
これからはちゃんと作ります。
「煮込みスープとかでもいいですか。凝った料理は得意ではアリマセン。むしろ料理、あんまり得意じゃないデス」
そこは何でもよいと言われました。ありがたい子達です。
ただし、モモちゃんは肉をご所望です。
はい。肉は入れたいと思います。
彼らにとって、味とかはあんまり関係ないらしい。
どちらかというと食感のようだ。
とりあえずは自分の食生活を改善する方向で、一緒に歩み寄ろう。
今までホント、すみませんでした。
これからお願いします。
けど、モモちゃんの肉って…肉の噛みごたえとか、食感が好きって…あまり深く考えないようにしよう。
《ちなみに主様》
「はい」
《俺たちは犬じゃなくて狼の魔獣だ》
犬扱いがバレていた。
そこはやっぱりこだわりなんですね、すみませんでした。




