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13-02.こちらが招いていない以上、客ではない



魔力回復薬を沢山準備して、魔道具に骨格を設定した。


温室、でかいんだよね。

それでもちゃんと認識してくれたことにホッとする。


必要魔力想定量が計算されて表示されたけれど、それがどれぐらいかわからない。

というか自分の全体の魔力量を知らないせいだ。


普通は数値で換算するものなのだろうか?

けれど魔力量測定なんてしたことがない。

魔力回復薬があればそれでいいか、なんてアバウトな事を考えている。


見た目…感覚だけれど、大きさに対して、そんなに多くなさげな気がする。

地下室よりはもちろん多いけれど、こちらは状態維持がかかっているわけでもなく、ただ広いだけである。


地下室の維持魔力量は、まったく気にもしないほどの量なのだ。使っているという感覚さえない。


少しだけ覚悟をして、試しに起動してみる。

が、何もわからなかった。

やはり魔力を使っている感覚もない。


様子を見ながら回復薬を口にすればいいと思っていたのだが、まったく必要がない気がする。


もしかして、魔力が足りなくて不発した?と一瞬不安になったのだが、いらぬ心配だった。


「おぉ…」


温室全体が薄く光っている。


そういや地下室の入り口もそうだった。

光っているとむしろ目立たないだろうか。

いや、目立って逆に防犯効果?

ここ、セキュリティかかっていますよ的な。


(まぁいいや)


感知機能の薄い膜だけを張ることもできるんだっけ。

出入り禁止ではなく、誰かが出入りをした事を感知するだけのものである。

そちらは当然、出入り禁止を張るよりも少ない量である。


「…どれぐらいか試しておこう」


魔力回復薬を常時持ち歩き、温室の封印を起動したままで一日を過ごした。

魔力を使いすぎると出るはずの、だるいという感覚もない。

地下室も起動したままだけれど問題なさそうだった。


ただ、確かに何かが通るたびに引っかかる。


出入り禁止のせいだ。

小動物達が出入りできなくて困る気がするので、感知機能であるセンサーだけの方に切り替える。


「誰かが来るって情報が手に入れば、先に張っておけるけどな…」


そういえば三匹が吠えた翌日、周囲を確認したけれど何もなかった。

巨大型の魔物が来たのではなかっただろうか。


別に周囲をなぎ倒されているという事もなく、魔物避けの木も無事だった。


「またあの子達が吠えたら、出入り禁止に切り替えてみようかな」


もし間に合わなかったとしても最悪、地下室に逃げ込めばいいのだ。

そもそも最初の予定はソレだった。


そして、それが活躍する日は意外に早かった。




*-------------------*




三匹が再び尋常ではない吠え方をしたので、慌てて温室全体に、出入り禁止の封印を起動した。


起動しながら、ポケットに入れている魔力回復薬の確認をする。

ちゃんとあることにホッとする。


飲む必要はないかもしれないけれど、お守りみたいなものである。


様子見で地下室に逃げ込むのは少し待つ事にした。

なぜなら封印をしたのと同時に、三匹が吠えるのを止めたからである。


なにやら声が聞こえる事に気がついた。

やはり封印自体に近寄った音声を拾うらしい。

すごいな魔道具。


『なんだこれは』


声に、うわぁ、と思う。

副団長の声だ。

また来たのかこいつ。


というかやっぱり疑っていたか…畑があるの見られたからなぁ。

誰かいるように見えるよね、普通。


私も畑を見て、誰か住んでいるのかもと思ったのだ。

結果、誰もいなかったのだけれど。


先日の調査の時に彼は、ここが隠れ家かもしれないと当たりをつけたのだろう。

失敗した。


放置すれば諦めるかもしれないが、せっかくの畑や薬草たちを荒らされたくはない。

入ってくんな!


青騎士団が来た後、踏み荒らされた畑と野草達が不憫でならなかった。


あいつら、踏んで良いものの見分けもつかないのか。

脳筋め。


『以前は入れたはずだぞ』


怪訝そうな声である。

本当に何しに来たんだこいつ。


声は一人ではなかった。複数人いるくさい。

魔の森に入るぐらいなのでそうだろう。

単独は普通、無理である。


しかしやはり青騎士団は辿りつけてしまうらしい。

幸運の作用が本気で憎い。


危ない。

マジで危なかった。

買いに行って良かった、魔法具!


そして副団長を不審人物認定します。

怪しすぎる。


温室が封印されている事には気づかないらしい。

うっすら光っていませんかね?

見たらわかると思うんですが…迂闊に触れたのだろう。


バチッと音がし、『うわっ』と悲鳴も上がっている。


『結界か?』

『こんな場所にですか?』

『いや、入れたはずだ。先日まではなかったぞ!』


えぇありませんでしたとも。張ったばかりですからね。

だから何しに来たんだお前ら。

帰れ。


『引き返しますか?』

『…入れる場所があるかもしれない。回れ』


しつこい。諦めないのか…長期戦かな。


というか完全にロックオンされている気がする。

これはあれか、今度納品に出かける時も、封印して出かけないといけないやつか。


面倒なことになってきた。


もう騎士団にかかわるの止めようかな。

隠蔽魔法があるので静かに買い物にだけ行って暮らそうか。


くまなく周囲を探索したらしいが入れない事をようやく理解したようである。

当然です。

誰が入らせるものか。


『クソッ、入れないか…』

『どうしますか』

『仕方がない、一度戻るぞ』


ようやく諦めてくれたのにホッとしながらも、封印は解かなかった。

油断させてまた来るかもしれないからな。


会話を聞かれている事にも気づいていないとは思うけれど…油断は大敵である。




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