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11-01.魔物にも幸運は効くのだろうか



三匹が懐くようになった。

あの日以降、触らせてもらえている。


遊ぶついでに浄化や水浴びをさせたので、毛並みがさらにふかふかし始めた。

可愛いし、触り心地が気持ちいい。


彼らはいつもいるわけではない。

いない日もある。

姿が見えないからといって心配するわけでもなく、たまに遊びに来る感じである。




不便かなと思い、勝手に名前をつけた。

ムム、メメ、モモ、である。

センスがないのは承知している。


自分が呼ぶだけなので適当でいいだろうと思ったのだが、だとしても適当すぎたかもしれないと今は反省している。


彼らはそのまま認識してしまったので、今更変えるのも面倒でそのままにした。

彼らは尻尾を振ってくれているので良しとする。


どうやら一匹がオスで二匹がメスだったらしい。

兄妹なのだろう。たぶん。

魔物に兄妹があるのかどうかは知らないのだが、外見が似ているからきっとそうだと思う。


ちなみに最初に罠に引っかかっていたのはムムだった。

食い意地が張っていて、妹たちの面倒を見る、一番勇敢なお兄ちゃんだ。




騎士団への納品は相変わらず続いている。


そういえばクスタさんに付き合ってもらって魔道具のお店に連れて行ってもらった。

魔法と同じような効果を持続的に使うことができる道具を売っているお店である。


大抵は回数制限か、もしくは時間制限がある。

火をおこしたり水を出したりするものが主流である。


自身の魔力を流して使うもので、火の魔法が使えなくとも魔道具を介することで使えるようになるものである。


隠蔽の魔道具とかもあるらしいけれど一回きりのものだった。

魔法が複雑すぎて壊れるらしい。


火の魔法は使えるし水も出すことができる。

よって必要はなく…他にはあまり便利そうなものはなかったが、封印の魔道具を見つけた。


(なるほど。封印を金庫みたいに使うのか)


封印にはあまり良い思い出が無い。

監禁されている際に使われていたせいである。


本来は他人に奪われたくない「物」を入れる為の物らしいが、その中に自分が入れられていたのだ。

使う人間側の倫理観の問題だ。


封印の魔道具はその人の魔力に反応して開くものである。

規模が大きければその分魔力を消費するし、封印している間はずっと魔力を消費し続けるので、使い方には注意が必要である。


複数人を織り交ぜればそれだけ複雑な封印になるし、魔力も分割して負担される。


封印した相手が命を落とすと解けてしまうので、厳重な封印には複数人が適しているのだが、金庫にそこまでするのはよほどの金持ちだろう。

だがそんな理由もあり、強盗は家主を殺す事が多くなってしまっている。


とりあえずは気分的な問題として、放置しておくのが危険そうなお金をしまうため、魔道具を購入した。

魔物に襲われるかもしれない危険を冒してまでして、わざわざ魔の森にまで強盗に来る奴はいない気はするけれど。


この魔道具は回数制限ではなく消耗型だった。

元となっている魔法が、魔力を常に引き出す契約系のせいだろう。

壊れるまでは使用できるらしい。

その分そこそこお高いが、必要なものである。


戻って直ぐにお金類は必要ない分を一度、封印した。

一人ならば開錠するのも再封印するのも自由である。


(うーん…これってもしかして)


地下室は寝床であるが、中に入った時は内側からつっかえ棒みたいなので止めている。

だが中にいない時は何もできていない。


今のところ人間には襲撃されたことが無いので…というのは言い訳だが、そろそろなんとかすべきだろう。


この場所が見つからない、という前提で、作成した回復薬などは地下室に置いてあるし、なんなら生活用品等はすべてそちらに隠してある。

必要な分だけ持って出るスタイルだ。


これなら誰かが温室に迷い込んだとしても、人が住んでいるようには見えないのではないかと期待している。


(これぐらいの広さだとどれぐらい消耗するんだろう)


試しに地下室の入り口に封印をかけてみたのだが。


(あれ、意外に消耗量が少ない?)


封印には嫌な思い出ばかりだが、自分で自分にかける分にはいいだろうと思う。

むしろ自分を殺さないと解けないのならば中に入ってしまうのは都合が良いだろう。

これはいい。そうしよう。




魔力を使いながら唐突に思い出したことが一つあった。


(そういや最近、なにか使えるようになった気がする)


回復薬を作り続けているからか、力が上がっている気がする。

回復薬自体、効果がまた良くなったみたいで騎士団からは喜ばれているけれど、隣町にもその評判が立ってしまっているらしく、なにやら揉めているらしい。

どこで回復薬を仕入れているのかと問い詰められているそうだ。


例のクソ野郎な薬屋主人の動向も気をつけなければならないのに、面倒な事である。


使うことができる魔法は何かを見て確認できるわけではなく、自身の感覚だ。

こればかりはこの世界の住人にならないとわからないものだろう。


(…隠蔽魔法?)


影が薄くなる系のアレである。


(え、今かー…もう少し早くに欲しかったな)


ここの温室生活に慣れてしまいおひとり様が快適だった。

だがこれは良いかもしれない。

逃げるのには便利そうである。


(これで少しは厄介ごとから逃げられる気がする)


これは嬉しい。かなり嬉しい。

今度から使おう。そう思った。



今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。

良いお年をお迎えください。

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