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08-01.嫌な奴には大抵遭遇するとかあるよね



なぜだろうか。嫌な奴には大抵遭遇する。


幸運が自分に対して作用していれば、会うことはないのだろうか。

考えると悲しくなるのでやめているけれど。


身体回復薬と魔力回復薬を作成して納品するようになった。

物作りは性格にあっていたようで、意外に楽しくてやりがいがあるな、と感じる。


騎士団と専属契約で、作れば作っただけ買ってもらえるというのがありがたい。

そういう契約にしてもらえたのだ。


だが無理は禁物である。

欲を出してたくさん作っても、倒れたら意味がないので、持って行く量は決めていた。

液体と瓶なので、重くてそんなに持ち運べないしね。


そういや契約時に、税金とかってどうなりますかと尋ねたら、子どもがそんなことを気にするのかと騎士団の人が目を丸くしていた。


いやまあ…ソウデスネ。


しっかりしているな、と笑われたが、知っておきたい理由はもちろんあるのだ。


兄弟仲の悪い領主の話を聞かなければ私も忘れていたと思うのだが、税金未払いとかで捕まったりした場合を想定し、さらに何かの拍子で能力がバレたりしたら。


考えただけでもゾッとするわけである。


そのまま監禁コース一直線ではなかろうか、と。


ちょっと考えすぎでは?と思われてしまうような思考だが、本人は真剣なのだ。


領主と関わりそうな事はできるだけ回避しておきたい。


権力者には近づいてはいけない。

何度も嫌な思いをした私の教訓である。



*



税金についてはちゃんと契約書にも書かれていた。


騎士団に直に卸した場合、騎士団の方で支払ってくれるらしい。その分、買取り額から引かれるのだそうだ。

細かい数字の記載がなかったけどな。


税金分を引かれていても、あのクソ薬屋とは比べ物にならないほどお高い買取り額なので、ありがたい話だと思う。


もしや薬屋が取るはずの利益分、上乗せしてくれているのではないだろうか。


心配して尋ねたら「それでもあのクソ野郎から買うよりもずっと安いから大丈夫だ」とクスタさんに言われた。


クソ野郎はどれだけぼったくっているのだろうか。




契約時に親のサインがいると言われて仕方なく一度持ち帰った。

ご両親からもらってきて、だそうだ。そりゃそうか。


もちろん両親などいないので、サインするのは私である。慌てて名前を考えることになってしまった。


名前…とりあえず親の名前は『ジュウ』にしておいた。なんとなく。

どうせまた変えればいいや程度で。


ここで前世の…唯一平穏無事に暮らせたあの時の名前を覚えていたら、ゲン担ぎついでにそれを名乗るのだけれど、残念ながら覚えていなかった。

そもそも記憶も曖昧な部分が多いし、知識もかなり抜け落ちてしまっていると思う。


児童虐待かつペットのように元養父母に付けられた仮の名前は名乗る気は一切ない。

むしろ無かった方向で。


あれを名乗る事であいつらに存在がバレるのも困るが、なにより、あんな奴らにつけられた名前なんか使いたくない。

そんなことをするぐらいなら自分でつけた方がマシである。


私の名前も聞かれたので『セン』と名乗っておいた。

今更だけれど、そういやずっと聞かれてなかった。


あいつら皆、「お嬢ちゃん」だとか勝手に呼んでいたからな。


*



この世界の契約書のサインには、個人の魔力が乗る仕組みである。

魔力は個々に違うので、筆跡と魔力とで判別するという二重チェックである。

なので、筆跡は変えているけど、もちろん契約書のサインはすべて私が書いているので私の魔力が乗っている。


これ、バレないだろうか。


納品している回復薬ももちろん同じ魔力で作成されているので、むしろ親が作っているようには見えているのか。


しかし受取時のサインでバレそうなものだが、何も言われないのが不思議である。

いちいち、魔力での個人判定はしていないということだろうか。


バレていないのか黙認されているのか。

わからないので黙っておく。



*



契約が確定し、週に一度、作成した分を納品することになった。

当日はいつもクスタさんが街の入り口まで迎えに来てくれる。


納品物をそこまで運ぶ事ができれば、あとは彼女が運んでくれるのでありがたい。


そういえば納品する度になぜか購入金額が少しずつ上がっていっている。


六割だったのがいつの間にか八割になり、最近はさらに上がっている。

高く売れるに越したことはないけれど、いいのかな、と思っているとクスタさんが「効果がいいから問題ない」と言ってくれた。

どうやら彼女が交渉してくれているようだった。


騎士団的には安く買えた方がいいだろうのに、「安く買っていて納品してくれなくなると困るから」という理由だという。

よほどあのクソ野郎な薬屋とかかわり合いたくないらしい。


効果、いいのか…知らなかった。


自分で試している分でも確かに、作るたびに効果は上がっている感じはしていたけれど、たぶんあの野性味溢れた薬草のおかげだろう。

自由にのびのびと育っているからだ。


クスタさんの一言があるとしても、ちゃんと値を上げてくれるとは良い騎士団だ。見直した。




回復薬作成にはそれなりに体力がいるので、身体回復薬を多めに作って飲みながらやっている。

栄養ドリンクみたいな扱いで。


そういえば、本に筋力増強剤ってのがあったので作って試してみた。

温室から町まで持ち運ぶ回復薬が地味に重くてきつかった為だ。


ドーピング?とか思ったけれど、補助魔法の薬版みたいな感じで、時間経過で切れるタイプだった。


幼女なので仕方がないのだろうけれど、思うほど力が出ないし、疲れやすい。

町から帰った翌日は確実に倒れて動けなくなるので、身体回復薬を飲んでいます。


おかげで地下室の瓶には大体なにかしらの液体が入っている状態になっている。

ストックは申し分ない感じである。



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