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七十二話 新たなる敵

リーダーを倒した後すぐに王女様があらかじめ呼んでいたカリスの騎士団が到着して倒れた戦闘員を逮捕したり死んだ戦闘員の死体を片付け始めた。


そして俺たちは《暗黒の空》の本部である建物に入っていた。


「うわ、見てエレンこれ王国の貴族の名前じゃない?」

「ーー伯爵…確かに我が国の貴族ですわね、違法奴隷に税金の横領、酷いものですわ」

メリアと王女様は何やら紙の束を見て顰め面を作っていた。


「ほう、何やら禍々しい気配を感じる刀剣たちでござるな」

輝夜は部屋に飾ってあった剣や斧を見てそう呟いた。


「触るなよ輝夜、何があるか分からないんだからな、スカハは何をしてるんだ?」

俺は輝夜に忠告してからメリアたちが手に取った紙束とは別の紙束を真剣に見ているスカハに聞いた。


「さっきのリーダーの男の変化は魔族が覚醒すると起こる"進化”に似ていた、もし人間を強制的に覚醒させる薬を作った魔族が本当に居るんだったらそいつは"覚醒(ヴァリアブル)化”してる、そして覚醒に至っている魔族を私は父以外に一人しか知らない」

スカハは一枚の紙を見つけてボソリと呟いた。


「あった、カーズ・オルテシア、やっぱりアイツが…あ!」

「ええとなになに…《暗黒の空》のダリスに《降魔の盃》のカーズ・オルテシアが"覚醒薬”を送る、《降魔の盃》はザハーク帝国を拠点とする組織、《暗黒の空》はその下部組織だったか」

俺はスカハが持っていた紙を奪って読み上げた。


「アレス!」

「ダメだスカハ、俺たちは帝国に復讐しに行くわけじゃない、スカハの両親のお墓を作る為だ」

抗議の声を上げるスカハの瞳に確かな憎しみがあったのを俺は感じていた。


「俺はスカハを死なせなくない、この魔族を恨むなとは言わない、だがこの魔族を殺す為だけに帝国に行くつもりなら俺はスカハを帝国へは連れていかない」

アレスは紙に書かれた"カーズ・オルテシア”の名前を指して冷たく告げた。


「けど!「その件、私が調べてもいい」、アリス?」

反論しようとしたスカハの言葉に新たに部屋に入ってきたアリスが被せて言った。


「私の冒険者の拠点は帝都ザハークだし、その《降魔の盃》とかいう組織の情報が知りたいなら調べてもいい」

「ーー何でそこまでしてくれるんだよ?」

「理由は二つある、一つはお前たちに協力したいと私が個人的に思ったからだ、、もう一つは《降魔の盃》という組織の情報を私は帝国皇家の秘匿依頼で集めているから、そのついでだ」

「《白仮面》のアリス様は帝国皇家から依頼を受けていると?」

メリアと一緒に紙束を調べていた王女様が紙束を置いて言った。


帝国皇家とは簡単に言えばアドモス王国でいうところの王家のことだ、そんな権力者から依頼を受けているのは幻鋼級冒険者という証からも有り得なくは無い。


「その通りだ王女殿下、この要塞都市カリスに来たのも元々は《降魔の盃》が支援している組織を調べる為だった、だから私にとってバハムートからの依頼は渡りに船だった、、バハムートが気になったのは事実だけど…」

「ん?、アリス最後の方が聞き取れなかったんだけど?」

「うるさい!、とにかく明日にでも帝国へ戻って調べてあげる、どうするのスカハ・レヴィアタン?」

アリスはアレスに怒鳴ってからスカハを見て言った。


「私は復讐を母に禁じられた、けどあの男が今ものうのうと生きていると考えただけで私は自分の憎しみと怒りを抑えられない」

そこまで言ってからスカハは握り締めた拳を解いて小さく息を吐いた。


「アレスが私に言ったことは当たり前、死にに行くような人を連れて行けるわけがない」

復讐が善か悪か、そんなことは成人したとはいえまだまだ子供の俺たちには分からないが復讐が自分の身を滅ぼす行為だと言うのは分かる。


「でもそれを分かった上で私はアリスに《降魔の盃》に所属するカーズ・オルテシアという魔族を探って欲しい」

「スカハは復讐しに帝国へ行くの?」

メリアが伺うように言った。


「違うメリア、私はアレスが大好き、メリアも輝夜のことだって好きだから私は過去を断ち切る為に帝国へ行く」

堂々言うスカハの瞳には先程見た憎しみは浮かんで居らず明確な"意志”が見えたことに俺は自然と自分の口角が釣り上がるのを感じた。


「拙者も一人の友としてスカハに協力するでござる」

「もちろん私もよ、友達に協力するのは当然よ」

輝夜は胸に片手を添えてメリアは腕を組んで言った。


「アレスは?、はぐっ」

「愚問だな、スカハ、恋人と離れるわけないだろ、もちろん一緒に行くさ、帝国へ行ってスカハの仇の魔族を見つけて倒してスカハの両親のお墓を作る」

俺はスカハのおでこにデコピンしてから言った。


「話は纏まったな、うわ!?、ちょ!、止めて!」

「ありがとうアリス!、貴方には感謝しきれないわ」

「うん、ありがとうアリス」

「拙者もアリス殿には感謝するでござる」

その後にメリアたちがアリスに感謝してもみくちゃにするという変事はあったがその温かい空気に俺は再び口角が釣り上がるを感じた。


◆◆◆◆


話が纏まった俺たちは一度建物外に出た。


「バハムート、一応言っておくが帝国へ入るのだったら冒険者ランクは全員銀鉄(ミスリル)級へ上げといた方が面倒が少なくて済むぞ」

俺たちの最後尾を歩いていたアリスが唐突に俺に向かっていった。


「全員銀鉄級に?、理由を聞いてもいいか?」

俺とメリア、スカハは銀鉄級だが輝夜まだ銀鉄級をとっていないために俺は聞き返した。


「理由は帝国の国風にある、あの国は力があれば優遇されるが逆に力が無いものは徹底的に潰される国なんだ、それは冒険者も同じで門番によっては銀鉄級より下のランクだと入れてもらえない可能性があるからだ」

「帝国の"弱肉強食”精神は噂でしか聞いたことないけどそこまでなのね」

メリアがアリスの言葉に若干慄くように言った。


「ふむ、つまりは拙者が銀鉄級冒険者になるまではアレスたちは帝国に行けないと?」

「俺は輝夜を置いていくつもりは無いぞ、スカハには悪いけど帝国へ行くのも急いでるわけじゃないしな」

「大丈夫、だからアリスが先に先行してくれるんでしょ?」

前を歩いていたスカハが振り向いてアリスを見て言った。


「う!、そ、そうよ、私は帝国と王国を行き来しているから国境警備隊の面倒臭さを知ってるから忠告しただけよ!、別にバハムートのことが心配だとか、そういうことじゃないんだからね!」

いつの間にか素の口調に戻ったアリスが俺を指さして吠えた。


「なんだ、心配してくれたのかアリス…うお!?」

矢が俺の脳天を狙って飛来し俺は咄嗟に身を屈めて避けた。


「だ、黙りなさい!、撃ち抜くわよ!」

「何でだよ!?、おかしいだろうが!?」

更に追加で矢が飛んで来た。


「まぁ、とりあえずエレンの依頼はコレで終わりね」

アリスに矢を放たれ避けるアレスを見ながらメリアはエレンに言った。


「ええ、一先ずコレで王国内部は安定しますわ、改めてありがとうですわメリア」

親友(エレン)の依頼だもの受ける以外の選択肢は無かったけど礼は受け取るわ」

「けれどアレス様やスカハを見るとやはりメリアが羨ましいですわ」

エレンはアリスから逃げ回るアレスと輝夜と仲良く話しているスカハを見て言った。


「エレンは王女という立場が嫌いなの?」

「いいえ、王族の責務を放棄するつもりはありませんわ、ただこれ以上メリアたちに協力出来ないのが悔しいのですわ」

エレンはアドモス王国の王女だ、王国内での幅は効くが他国はそうというわけにいかず更にエレンは暴風姫(テンペスト)、風魔法が巧みに使える王女として国内外で有名だ。

立場的にも知名度的にもメリアたちに協力することは出来ないのだ。


言外のエレンの気持ちを感じてメリアは小さく笑ってエレンに向き直った。

「エレンがそんなことを言ってくれて嬉しいわ、けれど人には出来ることと出来ないことがあるわ、エレンはこれからも自分の王国を守って欲しいわ、それに私たちが友達なのはこれからも変わらないでしょ?」

「ふふ、そうですわね、(わたくし)は大人しくメリアの冒険の安全を祈っていますわ」

「んーん、安全かどうかはアレス次第かなー」

メリアはもう一度アレスに視線を向けた。


「アレスは誰も知らない新しい"伝説”を作る気がするからこれからも忙しくて危険かも」

「そんなことを言う割には満面の笑顔なのは何故ですか?」

メリアは見た者が特大の幸せを感じるような笑みを浮かべていた。


「それがアレスの成すことなら私はずっと隣に居て支えるからよ!」

「ふふ、本当にメリアは綺麗になりましたわね」

嬉しそうに笑う二人を夜明けの光が眩しく照らすのだった。



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