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七十話 本気の銀光魔法

「そう言えばエレンと一緒に戦うのは魔法学院の卒業試験以来よね?」

既に夜の帳が下りたカリスの街並みを駆けながらメリアは呟くように言った。


「ええ、懐かしいですわね、一年程前ですか」

エレンは薄緑色の魔力を纏いメリアと共に建物の屋根の上を駆けながら言った。


「あの時は教師や生徒の妨害が酷くて大変だったわ」

メリアはほんの一年程前の出来事を思い出して疲れたような顔を浮かべた。

「確かに大変でしたわね、生徒が設置した魔法トラップを回避したり教師自ら妨害に出てきたりしてきましたしね」

懐かしそうに会話する二人は闇夜を駆けて驚く程の速さで《暗闇の空》の拠点に接近していた。


「今になって考えると私が他の属性も持っていなかったのは私が天使様の生まれ変わりだからなのよね」

「メリアが創世神様の眷属でミカエル様と双璧をなしたという伝説があるラミエル様の生まれ変わりとはにわかには信じられませんわ」

エレンとメリアは屋根を踏み締めて同時に飛び上がりメリアは翼を生やしてエレンは風を纏って建物と建物の間を移動した。


「私も信じられないけど普通の人はこんな翼は生やせないでしょ?」

メリアは背中に生える一対の光翼を指しておどけるように言った。

「自分の目は誤魔化せませんわ」

エレンは諦めるように首を振った。

「この力もまだまだ完全に使えてないけどね」

「あの光輪まで出してたのにですか?」

光輪は天使の力の源だと伝承には書かれている為、カリスに来るまでにメリアの本気を少しだけ見たエレンは驚きの声を上げた。


「うん、まだ完全じゃない、でも《光》の使い方は沢山考えたのよ」

そう言ってメリアは立ち止まった。

目的地が見えたからだ。


「なるほどそれは楽しみですわ、ね!」

エレンとメリアは同時に屋根から飛び下りて《暗闇の空》の本部と思われる建物の前に歩み出た。


エレンは風魔法を使い声を張り上げた。

「我が名はアドモス王国第二王女《暴風姫(テンペスト)》エレネシア・スレイ・フォン・ファウルーナ・アドモスである!、王国に仇なす組織《暗黒の空》を偉大なる国王陛下に代わり誅を据えに参った!、降伏するなら受け入れる!」

メリアは光球を幾つも浮かべてエレンの姿を照らしながら思った。

こう言った宣言は大きくより相手を畏怖する必要がある、王族であるエレンはそれを熟知しているが敵地のど真ん中でやってのけたのは余程の自信があるのか、だが相手はそうは思わなかったようだ。


メリアたちの目の前に続々と建物から戦闘員たちが現れた。

そしてその中から一人の黒づくめの男が現れた。


「いやはや、こんな小汚い所にまさか王女殿下が現れるとは驚きだ、しかし高貴なる王女殿下はこのような場所にいるはずは無い」

男は腰から漆黒の杖を取り出して邪悪に笑いながら言った。


「我が組織を嗅ぎ回っていた()()を駆除してくれるわ!」

戦闘員たちは男の言葉に従うように一斉に武器を取り出した。


「先手必勝よ!、"光よ・集え・我が銀天の空・流れる地よ・堕ちろ・銀墜流岩(プラチナスター)”!」

メリアが銀光剣を掲げると周囲に銀色の大岩が多数出現して敵に降り注いだ。


戦闘員たちはすぐに散開して避けた。

「"風よ・集え・あまねく万風よ・荒らせ・風迅乱舞(ウィンドエアリーズ)”!」

そこにまるで戦闘員たちが避ける方向を予知していたかのようにエレンの杖の先から無数の不可視の風の刃が飛んだ。


戦闘員たちの中でも実力の低いものはその風の刃に対応出来ず首を切り裂かれた。


「は!、二人共魔法師なら、"縮地”を使ってせっき、あひ?」

周りの戦闘員たちと一緒に攻撃を仕掛けようとしていた双剣を持った男の額に矢が突き立った。


「なぁ?、うぼ!?」「うぁ?」「ひは!?」

最初に矢が突き立った男の周囲に居た戦闘員たちの額にも次々矢が突き立った。


「うわ、凄!、ほんとにあの距離から撃ってるんだ凄いわね」

メリアはアリスが矢を放っている建物を見るような愚は侵さず再び剣を構えて詠唱を唱え始めた。


「"光よ・広がれ・照らすは闇夜・明日の(そら)・銀迅は我に従え…」

メリアの詠唱が厳かに周囲に響いた。


「あの娘を止めろ!!、詠唱を続けさせるな!」

男は自身が魔法師であるが故に銀色の少女に集まる魔力の量に危機感を覚えた。

「私を無視しないで欲しいですわ!」

隙を見せた黒づくめの男を見逃さずエレンは不可視の風の刃を叩き込んだ。

黒づくめの男は紙一重で回避して周囲を見たが既に半数が倒れていた。

「ちっ!、誰でもいいあの詠唱を止め、くっ!」

額へ迫った矢を辛うじて杖で弾いたがその隙に銀色の少女の魔法は完成した。


「天の怒槌(いかづち)が堕ちる・光の咆哮・白銀照シルバリー迅閃雷(・ラルクボルド)”」

メリアが言い放った鍵言と共に夜の世界を白銀が照らし銀色の風刃が吹き荒れて空から堕ちるような銀雷が街に轟き戦闘員たちは一瞬で吹き飛ばされて壊滅、更に銀光線が目の前の建物までも抉った。


「あ、あ、」

メリアが作り出したこの非常識な光景にエレンは唖然として口を半開きにして固まってしまった。


「ふう、初めて本気で魔法を撃ったわ」

そんなエレンに対して銀色の光輪と六枚の翼を顕現させたメリアは満足そうに言った。


「メリア貴方、今の魔法は?」

エレンは恐る恐る聞いた。


「私の《光》は想像次第でどんなものでも作れるの、それが風でも雷でもね」

自信満々に言うメリアに呼応して背中の翼が輝いた。


瞬間抉れた建物が爆発して人が飛び出てきた。


「おい!?、今の魔法はメリアだろ絶対!?、俺たちが侵入してたの忘れたのか!?」

飛び出してきたのはアレスとスカハに輝夜だ。


「あ、いや、ちょっと待ってアレスぅー?」

アレスはメリアに近付きその頬を引っ張った。


「どうせあれだろ?、本気で魔法を撃ってみたかったんだろ?、そうだろメリア?」

宙を浮いていたメリアはアレスに引っ張られて悲鳴を上げた。


「い、痛い!、ご、ごめんなさい、その通りです、本気で魔法を撃ってみたかったのよー!」

大人しく白状するメリアにスカハと輝夜は呆れた視線を向けた。


「アレスは敵のボスと戦ってた所に建物が魔法で抉れて危ないところだった」

「拙者とスカハも幹部と戦闘していたでござるが先程の魔法でトドメを刺せなかったでござる」

輝夜は抉れた建物に視線を向けた。


アレスが飛び出た場所から黒いオーラが立ち昇り三人の男が飛び出してきた。


「良くも俺の拠点を破壊してくれたな!、ガキが!!」

黒いオーラを立ち昇らせるリーダーの男が吠えて一緒に出てきた二人の男も黒いオーラを立ち昇らせて各々の剣と杖を構えた。


「全く丈夫な奴らだな、それも"闇魔法”の力か?」

俺はメリアの極上の頬から手を離して男たちを見て言った。


「その通り、"闇魔法”こそ至高の力だ!」

リーダーの男は恍惚な表情を浮かべて言った。

「くだらぬ、そのような紛い物で我らに勝てぬ」

輝夜は白夜の柄に手を添えて毅然と言った。


「輝夜の言う通りだ、メリアと王女様は手を出すなよ、彼奴らは俺たちが倒す」

「う、うん、頑張ってアレス」

メリアはアレスに引っ張られた頬を労りながらエレンがいる後方に退いた。


「メリアの魔法のせいで仕切り直しになったけど今度こそお前らを斬る」

アレスは龍焔(ほむら)を抜き剣先を地面に向けて下段に構えた。

「うん、メリアのせいでやり直しだけどやることは変わらない」

スカハは二本の槍を構えて不敵に笑った。

「拙者も剣で負ける気はござらん」

輝夜は白夜を抜き正眼に構えその眼光は鋭く敵を射抜いた。


六人からそれぞれの戦気が放たれ空気が震えた。


「ズタズタに引き裂いてその首を街に晒してくれるわ!!」

「やるもんならやってみろ!」

六人は同時に地面を蹴り戦いが再び始まった。


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