五話 イビルトレント討伐
「そういえばアレスのそれって刀よね?」
依頼にあった魔物がいる森まで歩いている時にメリアが聞いてきた。
「ああ、そうだ、こっちが月夜でこっちが龍星っていうんだ」
「二本使うの?」
「二本使ったほうが手数が増えるからな」
「私と戦った時は抜かなかったよね?」
メリアが不満そうな顔で言った。
「あのな、あれは模擬戦だから本気を出さなかったんだよ、それにメリアだって本気じゃなかっただろ」
「そうだけどーそうじゃないの」
何故かは分からないがあまりメリアの機嫌が良くない。
「だったらいつか本気で戦うと約束する」
「本当に?」
メリアが上目遣いで聞いてきた。
「本当だよ」
(本音を言うと俺も本気のメリアと戦ってみたいしな)
アレスもメリアも生粋の武人の為お互い全力で戦いたいと思っていた。
しばらくすると依頼の魔物がいる森が見えてきた。
「この森にいるイビルトレントを二十体討伐か」
俺は再び依頼書を見ていた。
ちなみにイビルトレントとは樹木の姿をした魔物らしい。
「確かにこの森魔力の濃度が濃いわね」
「そんなことも分かるのか?」
「幼い頃から鍛練の賜物ね」
「なるほどな」
そういうものだと納得したアレスとメリアは依頼書をしまい森に入った。
「気配が多いな、いったい何体いるんだ?」
「んー、百体くらい?」
「イビルトレントの強さが分からないから多いのか少ないのか分からないな」
「それは戦って見れば分かるわよ」
メリアと話していると突然目の前の樹木が動いた。
「うお!?」
アレスは反射的に飛び去った。
「どおりで魔力が濃いと思ったけどこの森自体が魔物だったのね」
メリアは既に剣を顕現させていた。
「メリア!、とりあえず手分けして全部倒すぞ!」
アレスは叫びながら腰に差してあった刀を二本とも抜いた。
「了解よ!」
現れたイビルトレントが蔓の触手を飛ばしてきた。
アレスは闘気で身体強化し触手を避け、切り落とした。
「どんどん来るわよ!」
「了解!」
俺は雷属性の魔力を足元に意識して、技を発動した。
「"雷よ・集え・瞬雷”!!」
メリアはアレスが消えたように見えた。
(アレスが消えた!?、いや違うあれは…)
瞬きした瞬間アレスはイビルトレントの後ろにいた。
一瞬で振り抜かれたアレスの斬撃でイビルトレントが斜めに斬られていた。
(雷を足に纏って移動速度を上げる魔法ね!)
アレスは雷の速度で移動し交錯ざまに斬ったのだ。
アレスは雷の速度で移動しながら二本の刀でイビルトレントをなぎ倒していった。
(私も負けてられないわ)
メリアは蔓の触手を避けながら詠唱した。
「"来なさい・応えなさい・我が銀光剣よ・我が光と共に!”」
メリアの剣が銀色に輝きメリアの周りに銀色の光剣が十本現れた。
「いくわよ!」
メリアの周りに顕現した剣はメリアと連動して動きイビルトレントを斬り始めた。
(なるほど、あの空中に浮かぶ剣はメリアが操作してるって事か)
アレスは空飛ぶ剣たちを見てそう思考した。
そして一時間経つ頃にはイビルトレントは全滅していた。
「ふぅ、中々数が多かったな」
「そうね、確かに多かったわ」
「折角だから死体は全部回収するか」
「アレスのアイテムボックスがなかったら回収してなかったけどね」
イビルトレントはメリアの予想を大きく超えて三百体はいた。
「んー、流石におかしいよな」
「ええ、いくら魔力が濃い森と言っても限度ってもんがあるわ」
地面を揺らす地響きとと共に森の奥から今までのイビルトレントよりも数倍はデカいイビルトレントが出てきた。
「どうやらアイツが原因みたいだな」
「そう見たいね」
アレスとメリアは視線を合わせて頷きあった。
「ガルァァァァァァァ!!」
デカいトレントは咆哮した。それだけで森が震えた気だがした。
「メリア、行くぞ!」
「ええ!」
俺達は襲いかかってくる蔓の触手を斬り伏せながら突き進みアレスが月夜で斬りつけたが弾かれた。
(通常の刃じゃ奴には通らないな)
俺はそう思考して一度後ろに下がった。
「アレスどうするの!?」
メリアが冷静に迫る蔓の触手を斬りながら言った。
「メリア!、アイツに隙を作ってくれ!俺が決める」
「分かったわ!」
メリアは蔓の触手を飛ぶ光剣で斬りながら了承した。
「ふっ、やぁ!」
メリアが俺に向かって来た蔓の触手を全て斬り伏せた。
「行ってアレス!」
「おう!」
俺は飛び上がり刀を二本とも鞘に入れ、月夜と龍星に闘気と魔力が集中した。
「闘魔抜刀"無月”!!」
アレスが一瞬で抜いた二本の刀から放たれた斬撃が合わさり巨大な剣閃に変わった。
それは巨大イビルトレントに飛んで行き真っ二つ両断した。
巨大イビルトレントが左右に別れて地面に倒れ伏した。
「討伐完了」
アレスは滑りながら地面に着地した。
「アレス!!」
メリアが走ってきた。
「アレス!、大丈夫!?」
「あぁ、少し魔力を使い過ぎただけだ」
「やっぱりアレスは凄いね」
メリアは笑顔で褒めてくれた。
「メリアも一緒に戦っただろメリアがいなかったらキツかった」
「あら、無理とは言わないのね」
「当たり前だ」
「ふふ、ノイスに帰りましょう」
なんか誤魔化された気がするが、「そうだな」と俺はそう返事をするのだった。