三話 早朝鍛錬とメリアとの出会い
俺は日が昇る少し前に起きた。
「むぅ、朝か」
(今日は冒険者登録をしようと考えていたが少し早く起きすぎたな)
「鍛錬でもするか」
俺は宿を出て城壁に向かった。
(あそこなら刀を振れそうだからな)
昨日ノイスに入った時に鍛錬出来る場所を見つけていたのだ。
城壁に上がるとちょうど朝日が見え始めていた。
「おお、結構綺麗だな」
まだ春の季節の為か、空気が澄んでいたおかげで朝日が綺麗に見えた。
「さてと鍛錬を始めるか」
アレスはそういうと腰に差してある刀の内一本抜いた。盗賊を倒す時に使っていた漆黒の刀で銘は”月夜"である。
アレスは一刀の型を反復練習した。そして少しずつ速度を上げた。
「ふぅっ」
アレスは脳内で自分の幻影を目の前に作りそれと戦った。
ちょうど刀を振る速度がアレスの手が霞むようになったところで一度止めた。
「はぁ…はぁ…やっぱり闘気も魔力も無しでやるのはキツイな」
アレス自身が言った通り闘気も魔力も使わずに刀を振っていたのである。その為流石のアレスも疲弊したのである。
「ふぅ、それでいつまで見ているつもりだ?」
先程からアレスを見ている視線を感じていたが敵意がないので何もしなかったが。アレスは振り向いた。
「!!?」
アレスは驚いた。目の前の人物否少女が絶世の美女と言っても過言では無いほど美しかったからだ。
目の前の少女は背はアレスより少し低く銀色の髪に紅色の瞳でいわゆるドレス甲冑を身につけていた。
「あ、ごめんなさい君の鍛錬を邪魔したい訳じゃないの。君の剣がとても綺麗で見惚れていたのよ」
白銀の少女は少し恥ずかしそうに言った。
アレスはその言葉で思考を取り戻した。
「そ、そうだったのか隠れていたから警戒してしまったんだ」
俺はそう言った。目の前の少女の容姿に見惚れていた為少し声がどもった。
「ここに来たということは君も鍛錬か?」
俺はそう聞きながら一度月夜を鞘に戻した。
「うん、私はもここで鍛錬しようかと思っていたから」
「そうか、なら手合わせしないか?」
アレスは一瞬この少女の容姿に気が移ったがこの少女が手練だということを見抜いていた。
(俺もここまで近づかれるまで気づかなかったからな、この少女強いぞ)
「戦うの!?」
アレスの突然の誘いに少女は驚いたような顔をした。
「ああ、と言ってもあくまで模擬戦だ、俺は純粋に君と戦ってみたい」
俺は月夜を振るい、瞳に力を込めて言った。
「そ、そうなんだー、ふーん、わ、私と戦いたいんだね、いいよ」
少女は一瞬アレスの蒼色の瞳に吸い込まれるような気がしてちょっと戸惑った。
「ああ、望むところだ」
俺たちは互いに間を五メートルほど空けて離れた。
「あ、そうだ、私メリア、メリア=ファフニール、君は?」
「俺はアレス、アレス=バハムートだ」
名乗り合い、アレスは月夜を抜き正眼に構えた。
(構えに全く隙がない、アレスってとても強いみたいねでも強い人との戦いは望むところよ)
メリアは自分が最強だと思ったことはないが強者のしては自負はあった。
「メリアは武器はないのか?」
メリアは鎧こそ着ていたが武器を持っていなかったので気になった。
「大丈夫よ、私の剣はここにあるの」
そう言うとメリアは右手を突き出した。
「"いでよ、銀光剣!”」
そう詠唱するとメリアの右手に一瞬で魔力が集まり銀色に輝く剣が顕現した。
「!? やっぱり世界は広いな」
俺は一瞬混乱したがすぐに冷静さを取り戻した。
(すげぇ、今剣を呼んだのか?それとも作ったのか?)
「へぇ、私のこれを見ても驚かないんだ」
「いや、十分驚いているよ」
メリアも剣を上段に構えた。
アレスとメリアの剣気が膨れ上がり中央で衝突した。。
「いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!!」」
後に運命の相手となるアレスとメリアの最初の一戦が始まった。