三十二話 スカハの過去
俺たちは王城内の応接室に通された。
緑髪王女様によるとここは国王様が私的な用事で人と会うときに使う部屋らしい。
しばらく待っていると豪華な装飾をした服を着た緑髪の男と長髪の男が入ってきた。
「どうも初めまして《雷光》のアレス・バハムートと言います」
俺は自己紹介をした。
「エレンから話は聞いているよ、私はアドモス王国国王アドラ・スレイ・フォン・ファウルーナ・アドモスだ、そしてこっちは宰相のヤンド」
「ーーー」
長髪の男ヤンドさんは静かに俺たちに頭を下げた。
国王様は俺たちの向かいに座りヤンドさんは国王様の後ろに立った。
「ーーー」
国王様は静かに俺たちを見回した。
俺たちが内心疑問に思っていると国王様が口を開いた。
「まだ、成人したばかりとは思えない魔力量に、銀髪の君は翼を出したなんて報告もある君たちは随分と面白い力を持っているね」
「「「!?」」」
俺たちは普段から抑えてる魔力を見抜かれ事に驚いた。
「これでも国王になる前は冒険者をやってたからね、それくらいの観察眼はあるさ」
国王様はそう言って笑った。
「まずはアースドラゴンを討伐してくれてありがとう、あれが今も野放しだったら近いうちに王都を捨てなければならなかったからね」
「アースドラゴンに関しては冒険者として依頼されたことですから、それで何故俺たちをここに呼んだのですか?」
俺は単刀直入に質問した。
「一つは報酬についてとお願いかな?、ヤンド」
国王様は宰相さんに目配せした。
「冒険者パーティー《雷光》にはアースドラゴン討伐報酬として王金貨六枚と王国宝物庫から国宝を進呈致します」
「「王金貨!?」」
俺とメリアは同時に驚きの声を上げた。
何故なら王金貨とは白金貨のさらに上の価値をもつ通貨で一枚で一生遊んで暮らせると言われている、驚くなという方が無理だ。
(しかもそれが六枚、スカハも驚きで固まっているし)
俺は目を点にして固まっているスカハを見ながらそんなことを思った。
「超級危険種討伐報酬には不満かな?」
「「(ぶんぶん)」」
俺とメリアは国王様の言葉に激しく首を横に振った。
「それとお願いだ、これに関しては君たちにも利点がある、簡単に言うと一週間後の謁見の場で近衛騎士団長と戦ってほしいのだ」
「戦う、ですか?」
俺は内心の疑問を吐露した。
「父上いえ、陛下はアースドラゴンを討伐したアレスさんたちの力を見たいのですわ」
王女様が横から補足した。
「アレス、国王陛下の言う通り私達にも利があるわ」
メリアが小声で言った。
「具体的に?」
「アースドラゴンを討伐をした私達を取り込もうとする勢力はたくさんあると思うけど一番確実に取り込もうとしてくるのはこの国の貴族よ、それを牽制するならこのお願い、悪くないわ」
「なるほど、メリアありがとう」
俺はメリアの頭を撫でた。
「ふふ、これくらいどおってことないわ」
(メリアは元貴族だからそこら辺の知識があるのは助かるな)
「スカハ、謁見の場で戦ってくれるか?」
俺は右隣に座るスカハを見て言った。
「ん?、私、何故?」
「スカハが一番戦いたそうにしてただろう?」
俺は戦いと聞いた時にスカハの目の奥に煌めいた闘志を見逃さなかった。
(本音を言うと俺は月夜が折れてて本気が出せないしメリアは何より目立つからスカハが適任なんだよな)
「むう、アレスは聡い」
スカハは若干そっぽを向いて恥ずかしそうに言った。
「構いませんよね、国王様?」
「私としては誰が戦っても構わないよ、魔族の技も見てみたいしね」
国王様の了解は得た。
国王様との話し合いが終わった後は俺たちは冒険者ギルドに向かっていた。冒険者ギルドの依頼の報酬を貰う為だ、国王様がくれるのとは別だ。
「それにしてもやっぱり目立つわね、アースドラゴンの頭」
メリアが冒険者ギルドに向かう途中で王都の広場にあるアースドラゴンの頭を見ながら言った。
俺たちが持ってきたアースドラゴンの頭は当分の間は広場に置かれて国内の混乱がひと段落した後に解体するそうだ。
「まぁ、かなり大きいからな」
改めてよく倒せたなと思う。
正直言って龍星が目覚めなかったらヤバかった。
「スカハはどう思った?、スカハ?」
俺はスカハが広場を歩く親子を見ている事に気づいた。
「お母さん!、凄いよこれ!」
「ええ、そうね」
とても楽しそうに話しているように見える。
「お母さん」
スカハはポツリと呟いた。
俺からスカハの表情は見えないがその背中がとても寂しそうにしているのが分かった。
「どうしたんだ?」
俺はなんだが放っておけなくてスカハの頭を撫でた。
「アレス、ごめん少し昔を思い出しただけ」
スカハは見上げて俺を見た後すぐに視線を地面に落とした。
「スカハ、大丈夫?」
メリアもスカハの様子に気がついて近づいてきた。
「スカハは俺たちじゃ駄目か?」
「アレス、それは…」
「今の貴方は一人じゃないでしょ」
メリアはそう言って人懐っこい笑みを浮かべた。
「部族の勢力争いに負けて私以外みんな殺させれるまでは父と母と一緒に暮らしていた」
スカハは顔を上げ何処か遠くを見るように言った。
「強い父と優しい母だったでも勢力争いにみんな死んでからはもうレヴィアタンは私だけになった」
スカハはとても悲しげ顔を伏せた。
「槍はお父さんに教わったのか?」
「そう、幻槍流は決して途絶えさせてはいけないと言われた」
(スカハが槍武術を大切にするのは一族の最後の形見だからか)
スカハと会った時からずっと思ってたことだ、スカハは槍の事しか考えていない、まるで槍が家族だとでも言うかのように。
「俺とメリアじゃスカハの寂しさは埋められないか?」
「アレスはズルい、貴方のおかげで私の槍を守れたことを事実、それに関しては感謝している」
スカハは俺の目を見て言った。
「スカハは復讐はしようとは思わないの?」
メリアが横から聞いた。
「魔族の世界は弱肉強食、弱ければやられるでも復讐心が無いわけじゃない母に禁じられた、復讐に囚われず前に進んで欲しいと」
スカハはメリアの方を向いて言った。
「だったらスカハは二人のお墓を建てましょう、あなたの家があった場所に、無いんでしょ?お墓」
メリアは両手を腰に当て堂々と言った。
「確かに逃げるのに精一杯で作れなかった」
「やっぱりね、帝国のスカハの家まで行って作りましょう、協力するわ」
メリアは片目をつぶって言った。
「何でそこまでしてくれる?」
「なんでって」
「仲間だろ、俺たちは」
俺はスカハの肩に手を置いて言った。
「ありがとうアレス、メリア貴方たちのこと大好き」
あまり表情の変化が少ないスカハだがこの時だけは少量の涙を流して笑った。
「あ、でも先に大和の国に向かっていいか?」
「ちょっと今それ言うの?」
メリアに少し小突かれた。
「構わない、アレスの刀を直すのも大切」
「助かる、月夜はラース大陸じゃ直せないからな」
「それで別の大陸の大和の国まで行くのね?」
メリアは改めて納得するように言った。
「まぁな、それじゃあ、冒険者ギルドに行こうか」
俺は再び歩き出した。
「うん」「ええ」
二人共俺の両隣に並んで歩き出した。
(帝国か、でもその前に大和の国に行って月夜を直さないと、少し不謹慎だけど目的がある旅も悪くないか)
俺は歩きながらそんなことを考えるのだった。




