二十三話 乗り掛かった船
翌日の早朝、俺たちはファリスの東門を出て王都に向かっていた。
「王都までは七日の道のりだがアースドラゴンの被害が予想以上らしいな」
俺は隣を歩くメリアに話しかけた。
「うん、王都には向かわない方が良いって話を聞いたわね」
どうやら王都の周辺にはアースドラゴンの子供ジュニアドラゴンが街道に蔓延り王都には行くのは難しくなっているのだ。
「アースドラゴンの子供でも二級危険種以上は確定らしい」
スカハが槍を交差させて準備運動しながら言った。
「ギルドで聞いたのか?」
俺は昨日一人で冒険者ギルドに行ったスカハに聞いた。
「うん、ギルド長がそんな事を言っていたのを小耳に挟んだ」
「なら七日も時間をかけてたら間に合わないかもな」
「大丈夫よ、王都には強い冒険者もたくさん居ると思うしアースドラゴン本体が攻めてこなければ持ち堪えられるわよ」
メリアが俺の意見に反応して自分の意見を言った。
「でも念の為少し急ぐか、スカハ、魔族は翼があるって聞いた事があるけど飛べるのか?」
俺はメリアみたいに飛べるのかな?、と思って聞いた。
「そういう魔族もいるけど私は翼はあるが飛ぶことは出来ない」
スカハは二本の槍を背中に戻しながら言った。
「へぇ、魔族と言ってもいろいろなのね」
メリアが物珍しそうに言った。
元々魔族はこの巨大なラース大陸の遥か北にある大陸、通称暗黒大陸に住む種族なので情報が極端に少ないのだ。
(そう考えるとスカハはなんでここに居るんだろうな?、歳は俺たちと同じ十七歳だと思うから暗黒大陸から来たってことはないと思うけど、まぁ機会がある時に聞けばいいか)
「何故そんな事を聞く?」
スカハが首を傾げて聞いてきた。
「ああ、それは…」「こうゆうことよ"我が光は我と共に光翼」
俺が言う前にメリアが詠唱して背中に一対の翼を顕現させはためかせて浮遊した。
「ーーーー驚いた、メリアは神話に出てくる天使だった」
スカハは目を見開いて驚いた。
「正確には違うが似たようなもんだよ」
「何故見せてくれた?」
スカハが探るような視線で問いかけてきた。
「何故って非常事態だし、スカハには一定の信頼は寄せてるぞ、なにせ斬り合った仲だからな」
「ありがとうアレス、そう言ってくれると嬉しい」
スカハは笑顔で言った。
「とりあえず私は飛ぶからスカハはアレスが運びなさいよ」
メリアが憮然と言った。
「り、了解、スカハ俺の背中に乗ってくれないか?」
俺は腰を落とし背中を見せて言った。
「ん、分かった」
スカハは俺の肩を両手で掴み背中に乗った。
「それじゃあ、"瞬雷”」
俺は雷の魔力で脚を強化して地面を蹴り街道を走った。
◆◆◆◆
俺たちは飛んで走って休憩しての繰り返しで僅か三日で王都に到着しようとしていた。
「大変よアレス、先の方で二台の馬車が魔物に攻撃されてるわ」
メリアが上空から呼びかけてきた。
「メリア先行してくれ!、俺たちもすぐ行く」
「分かったわ」
メリアは俺の言葉に返事してから光の翼をはためかせて加速した。
「スカハ、しっかり掴まっててくれよ」
「ん、分かった」
俺は全身に雷の魔力を纏った。
「魔技 雷身!」
俺は一気に加速した。
「アレス見えてきた、あれみたい」
スカハが前方を指さした。
目の前に襲いかかる馬車程の大きさがある蜥蜴の魔物とそれを銀光剣で斬り伏せるメリアが見えた。
「行く、アレス投げて」
スカハが背中の槍を取り出し言った。
「は?、投げる?」
俺は思わず聞き返してしまった。
「早く!」
「り、了解」
スカハの急かす声に反応して俺はメリアが暴れている反対側から攻撃しようとしている魔物を視界に捉え身を捻りスカハを投げた。
「一ノ槍 螺穿」
スカハは一本の槍に魔力を螺旋状に収斂し飛んでいった。
「うわぁぁぁ」
「ふっ!」
ちょうど人に襲いかかろうとしていた魔物の頭に横から槍を突き刺した。
「へ?」
襲いかかられていた男は突然の状況変化に戸惑った。
「下がってこの魔物たちは私が倒す」
スカハは槍を油断なく構えて背中越しに男に向かって言った。
「わ、分かりました」
男はとりあえず目の前の人の言葉に従った。
「全部で五匹、一気に倒す」
スカハは跳び上がり視界に五匹の魔物を捉え二本目の槍を取り出し魔力を槍に纏わせた。
「幻槍流 刺烈驟雨!」
魔力が猛り槍の先が幾つにも分裂して雨のように魔物たちに降りかかり串刺しにした。
「やっぱり俺と戦ったときは本気じゃなかったか」
俺はスカハの戦いを見てそう呟いた。
「俺もいくか、双魔刀技 蒼雷斬!」
俺は龍星と月夜を抜き蒼雷と闘気を纏わせ斬撃を飛ばした。
「ガァァァ!?」
二つの斬撃は一体の魔物の体を斬り裂いた。
「遅いわよアレス、ふっ!」
メリアが周囲に二台の馬車を包み込むように光の半球を作り人をその中に誘導して銀光剣で魔物を倒しながら言った。
「悪いな誰でも空を飛べるわけじゃないだ、よっ!」
俺は流れるように二本の刀で二匹の魔物の首を斬り落としながら言った。
「分かってるわ、言ってみただけよ」
「全く、とりあえず全部片付けるか」
俺は嘆息し二本の刀を構えて言った。
「ええ、馬車の人達は結界に入れたから大丈夫だし、賛成よ」
メリアは銀光剣の魔力を使い翼を一対から二対に増やし光翼と銀翼をはためかせた。
周囲に二人の魔力が猛り魔物たちはその量と密度に生まれて初めて恐怖というものを感じるのだった。
数分後
「とりあえず全部倒したな」
俺は魔物の死骸で埋まる周りを見渡しながら言った。
「うん、あらかた片付いた」
スカハが二本の槍を背中に戻しながら言った。
「後方も片付いたのか、流石だな」
「これくらいは幻槍流皆伝の私なら当然」
スカハは胸を張り誇らしげに言った。
「二人とも来てちょうだい、この人達から事情を聞くから」
俺とスカハはメリアの言葉に従いメリアが張った半球の結界に入った。
結界の中には馬車の横に数十人の男と女の人が居た。
「それじゃあ二人も来たことだし事情を聞きましょうか、ちなみに私達は銀鉄級冒険者パーティー《雷光》よ」
メリアが初めに自己紹介した。
「私達はここから北に行ったところにあるラウル村の住人で私は村長のギークと言います私達はこの混乱を逃れる為に王都に向かっていましたがそこに魔物の襲撃を受け護衛の方も逃げてしまい……」
ギーク村長は言葉の途中で項垂れてしまった。
「事情は分かりました、あなた達は《雷光》が王都までは護衛します俺たちの目的地もそこなので」
俺は周囲に聞こえるように言った。
「おお、本当ですか!」
喜色を顔に浮かべる村人たちの中でギークさんが確認してきた。
「乗り掛かった船ですから、どうやら馬車も壊れていないようですし、また魔物が来る前に王都に向かいましょう」
「わ、分かりました」
ギークさんは村人たちに声をかけ出発の準備を始めた。
「という訳でメリアは二台の馬車の間に俺は馬車の正面に行く、スカハは後方を任せていいか?」
俺は振り向き二人の顔を見て言った。
「任せて」「了解よ、アレス」
二人は笑顔で了承するのだった。
十二話のメリアがラミエルの光を受け継いでいるという描写を少し変えました。




