十一話 鍛治都市ファリスと決闘
「あー、見えてきたよアレス」
メリアが門を指しながら言った。
「お、ホントだ」
鍛治都市ファリスの歴史は長くアドモス王国建国初期からあるらしくとても発展している。
ファリスは街を鉱山に囲まれている為に豊富な資源が取れることや迷宮がある事で有名な大都市だ。
「確かに門は大きいね!」
メリアは初めての街に興奮しているようだ。
「なぁ、メリア?迷宮ってなんだ?」
俺はファリスの説明板を見ながら言った。
「迷宮というのはね、簡単に言うと魔物が沢山居てお宝を守ってる場所よ」
「宝?」
気になった事を聞いた。
「ファリスの迷宮が何階層あるかは知らないけどより深層に行くととってもレアなお宝が手に入るのよ、その分魔物は強いけどね」
「へぇー、初めて知ったよ」
俺達はそんな会話をして鍛治都市ファリスに入った。
「冒険者ギルドってどっちですか?」
街に入った瞬間街の広さに驚き、迷いそうだったので門番に聞いた。
「冒険者ギルドか?、それならこの通りを真っ直ぐ行ったところだよ」
「ありがとうございます」
俺達は門を離れた。
「先にギルド長の依頼を完了するのね?」
「ああ、それから宿を探そう」
俺達は通りを進み冒険者ギルドに向かった。
ファリスの冒険者ギルドはノイスの冒険者ギルドよりも更に大きかった。
「大きいわねやっぱり」
メリアは妙に納得しながら言った。
「街がこの広さだからな」
俺達はギルドの中に入った。
(人はそれなりにいるんだな…今は昼前だからてっきり少ないと思っていた)
「メリアはここで依頼でも見ててくれ」
「了解よ」
俺は受付に向かった。
「ここのギルドマスター宛の配達依頼です」
「依頼書と手紙をお見せ下さい」
俺は依頼書と手紙を渡した。
「これで依頼完了です…これが報酬ですね」
依頼報酬金貨一枚を貰った。
「ここでおすすめの宿屋を知っていますか?」
俺はついでに聞いた。
「もしかしてファリスは初めてですか?」
「ええ、今日着いたばかりです」
「それなら"銀の聖杯亭”がおすすめですよ」
「ありがとうございます」
俺は頭を下げた。
「いえいえ、これも仕事ですから」
受付のギルド職員はそう謙遜した。
「なんだと貴様!?」
唐突にそんな大声が聞こえた。
俺が声がしたほうを向くとメリアと冒険者?と思われるパーティーが居た。
周りの冒険者達は、またアイツか、と言った表情だ。
「あなたなんてアレスの足下にも及ばないわよ」
メリアは俺は指差しながら言った。
「お前がアレスか?、お前僕と決闘しろ」
メリアと話していた男はいきなり言ってきた。
アレスはとりあえずその男を通り抜けメリアのところに向かった。
「メリア、状況がイマイチ分からないんだけど?」
「あの男がいきなり自分のパーティーに入れって言ってきたから断っただけよそれでも食い下がるからアレス以外に興味無いって言ったのよ」
(なるほどね)
アレスは何となく状況を把握した。
「お前僕を無視するな!?」
「スマン、それであんた誰だ?」
俺は純粋に疑問に思ったことを聞いた。
瞬間ギルドが静まり返った。
「この僕を知らないとはね」
男は誇るように言った。
「僕は銀鉄級パーティー《朝焼けの光》のノルドだ」
(恐らくこいつらの歳は二十代前半、俺とメリアのようなイレギュラーを除けば実力者なのは確かなんだろう)
「まじかこの街で俺達をを知らんとはな、まさか初めてこの街に来たのか?」
パーティーメンバーの男が聞いてきた。
「そうよ」
メリアが答えた。
「そいつは運が無かったな」
男は心底可哀想にといった感じだ。
「まさかこんな奴にアレスが負けると思ってるの?」
「あぁ!?当たり前だろノルドは俺たちの中で一番強いんだからな」
男は至極当然のように言った。
「私は嫌よこの子私より綺麗だもの」
パーティーの一人の女が忌々しそうに言った。
「そんなこと言うなよオリビア」
ノイドが女をなだめていた。
「アレス、コイツらぶっ飛ばしてもいい?」
「落ち着けメリア」
俺は今にもキレそうなメリアの頭を撫でた。
「ちょ、ちょっと!?」
メリアはアレスの行動に動揺した。
(あ、でもちょっと気持ちいいかも…)
メリアはアレスをバカにされてキレそうになった心が癒された気がした。
「いいぜ、お前の決闘受けてやるよ」
アレスは断ろうと思ったがメリアの顔を見て考えを変えた。
「ほぅ、まさか僕に勝つつもりかな?」
「ああ、ぶちのめしてやるよ」
アレスはニヤリと笑った。
「その言葉覚えておけよ!」
ノイドは烈火の如き表情で言った。
俺達はギルドの奥にある練習場に出た。
冒険者同士の諍いは決闘で解決することが多いためギルドにはこんな場所がある。
(観客はかなりいるな…みんな暇なのか?)
練習場にいる冒険者達を見てそんな事を思った。
「アレス!、そんな奴ボコボコにしてね」
「任せろ」
俺はメリアにそう返した。
「僕にやられる覚悟は出来たかな?」
ノイドは嘲るように言った。
「その言葉そっくりそのままお返しするよ」
アレスはノイドの言葉をそう受け流した。
「ちっ、ぶちのめしてやる」
ノイドは憤怒の表情で言った。
(コイツは見る限りは剣士だがおそらく魔法も使えるな、それに恐らくだが持っている剣も魔剣か?)
アレスはメリアとの特訓のおかげで少しずつ他人の魔力を見ることが出来るようになっていた。
「それでは冒険者アレスと冒険者ノイドの決闘始め!」
アレスは闘気で身体強化をし地面を蹴り斬りこんだ。
相手も剣を振り下ろした。
アレスの刀とノイドの剣が幾度となくぶつかり剣戟音が激しく鳴った。
「ぐっ、コイツ」
「どうしたんだ銀鉄級冒険者」
俺は挑発した。
「死ね!?」
ノイドが剣に魔力を込めたかと思うと相手の剣の重量が増した気がした。
アレスは数歩下がった。
「やはりその剣魔剣か」
「その通り魔剣グラルだよ」
ノイドは更に距離を詰めてきた。
(だがなんとくだがあの魔剣はメリアの魔剣ほどの力はないな)
アレスはノイドの剣を捌きながら思考した。
メリアが使う銀光剣は魔力に不慣れなアレスにさえ知覚出来るほどの魔力を発していた。
(恐らく魔剣の中でも中位と言ったところかそして能力は剣の重量を増すことか)
「くそ、なんで斬れないんだ!?」
ノイドが苛立ちはあらわにしながら言った。
「単純だよ、お前は格上の相手の勝負に慣れてないだけだ」
つまりそういうことである人は自分より強いもの戦わなければ強くなれないのある。
「剣で斬れないなら…」
ノイドは大きく後ろに下がった。
「"炎よ集え・球になれ・火球”!!」
そして幾つも火球を飛ばしてきた。
アレスは正眼に月夜を構えた。
「燃え尽きろ!」
「魔刀 嵐閃!!」
月夜に風の魔力を集中させ幾つもの斬撃として放った。
火球が全て真っ二つになった。
「なんだと!?」
アレスは驚いている相手の隙を突き接近し相手の顎を蹴り上げた。
「がはぁ!?」
ノイドは地面に倒れた。
練習場が静まり返った。
「し、勝者冒険者アレス!!」
先に我に返った審判が言った。
「「うぉーーー」」
瞬間雄叫びような歓声が上がった。




