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十話 メリアの過去

「り、龍の加護?龍と言ったら、」

「神龍様だよ」

アレスはメリアの言葉に被せた。

「えぇー!?本当なの?」

メリアは驚きベッドの端まで仰け反った。

「うん、俺の家の御先祖がはるか昔に気に入られたらしくてな」

「それって凄いなんてもんじゃないわよ」

神龍とはあらゆる御伽噺に出て来る龍の神様で世界中で信仰されている。

千年前の大戦以降は姿を見せていない為ほぼ伝説の存在だ。

「その通り、だからこの力(神龍の加護)は使う気はなかったんだ」

「え、でも」

「メリアの言う通り使った、あの時のメリアの苦しそうな顔を見たら体が勝手にな」

アレスは笑った。

「私やっぱりアレスのこと好きだよ」

メリアはとても嬉しそうに微笑んだ。

「そ、そうかありがとう」

アレスはメリアの笑顔にクラっと来た。

「今日一緒に眠っていい?」

「え、なんでベッド二つあるだろ?」

(メリアが一緒の部屋がいいって言ったから変えたのに)

「今日はそういう気分なの、いいでしょ?」

「わ、分かったよ」

アレスは根負けした。


二人は同じベッドに入った。

「おやすみアレス」

「おやすみメリア」

(俺今日眠れるかな?)

アレスはふとそんな心配をした。





そして不幸中の幸いと言うべきなのかフレアドレイクとの激戦で疲労していたアレスとメリアはすぐに寝ることが出来た。

(朝メリアの顔が目の前にあった時は流石に思考停止したけどな)

アレスは朝は早い方なのでメリアより先に起きたのだ。

「んー、やっぱり難しいわね」

俺達はノイスを出発してファリスに向かっていた。

「いやな、そう簡単に闘気が扱えるようになったら俺の立つ瀬がないよ、それに教えてまだ一日しか経ってないのに闘気を感じれるって本来とんでもなく凄いことなんだが…」

俺はちょっとメリアに呆れた。

「アレスが使っているの真近で感じたから何となく分かるのよ」

「メリアは微細な力を感じ取るのが得意みたいだな」

「そうなのかな?」

「ああ、闘気というのは体を強化する力っていうのは説明しただろ?」

「うん」

メリアは頷いた。

「普通は魔力を扱うものには闘気を感じるのは難しい」

「え、そうなの?」

メリアは首をかしげた?

「魔力が常に全身を回っているのに対して闘気は腹の下のここにしかないだから普通魔力を先に知ると闘気を感じることが難しくなるんだよ」

俺はお腹の下辺りを指さした。

「なるほど、それでアレスは私が細かい力を感じるのが得意だと思ったんだね」

「メリアは魔力操作も俺より上だしな」

「それは単純に経験の差だよ私は小さい頃からやって来たからねでもアレスも扱える魔力量は確実に増えてるよ」

メリアは片目をつぶって言った。

「そうなのか?」

「アレスはもっと魔力の深淵を知れば魔力が見えるようになるよ」

「スキルを取得するにはまだかかるか…」

俺は少し考え込んだ。

「焦る必要はないよ、今でもアレスは十分に強いんだから」

メリアは嬉しそうに言った。

「たとえそうだとしてももっと上を目指したいと思うのは当たり前だろ?」

「それは私も一緒よ、だからアレスから闘気を習ってるんだから」

俺はメリアの言葉を聞いてある言葉を思い出した。

「"武人たるもの向上心を忘れるな”」

「?、なにそれ?」

「父さんの言葉だよ」

「絶対強いでしょ」

メリアは確信するように言った。

「ああ、剣の稽古で勝ったことないよ」

アレスは苦笑いしながら言った。

「本物の怪物ね」

「おい、あんまり父さんこと悪く言うなよ」

アレスは何となく理由を察しながら言った。

「だってアレスより強いって反則よ」

メリアは口を尖らせて言った。

「また戦う時は勝つよ」

「それでこそ私が知ってるアレスよ」

メリアは心底嬉しそうに笑った。




「メリアって反則じゃないか?」

俺は目の前に積み重なる魔物の死体が見ながら言った。

「え、そんなことないわよ」

メリアは振り向き言った。


しばらく街道を歩いていると脇の森から百体の六級危険種フォレストウルフがいきなり襲いかかってきたのだがメリアが一瞬で光球を出し光魔法で薙ぎ払ったのだ。

(メリアの光魔法は常識外れ過ぎるな)

メリアはほぼ詠唱無しで今魔法を放っていた。

「メリアどうしてここまで光魔法を操れるんだ?」

「それは…私に光魔法しか無かったからよ」

メリアの声が沈んだ。

「メリア?」

「アレス、私はグラト魔法王国出身なのよ」

(グラト魔法王国…確かにアドモス王国西部と隣接している国だったか)

「本当の名前はメリア=エル=ファフニール、」

(貴族だと!?)

アレスは驚いたが逆に納得もしていた。

(魔法王国の貴族なら納得だ)

「でもなんでアドモス王国で冒険者に?」

「あの国はね、魔法が全てなのよ」

メリアは悔しそうに言った。

「魔法には属性があるのは常識でしょあの国はどれだけ属性を持っているかで人を見る国なのよ」

「適正属性の数か…」

「私には光しか無かったのそのせいで家は没落してしまったでも父さんと母さんは私を恨まなかったその気持ちに答えたくて光魔法を練習したの毎日ね一日もかかさず、剣はお父様から教わったのよ」

「それであそこまでに光魔法と剣を扱うのが上手いのか」

アレスは闘気を扱うバハムート流の習熟に尽力していたので魔力を扱い始めたのは十二歳になってからだ。

「父さん達が私を送り出してくれたのよ、こんな国じゃなくて違う国なら魔法が全てじゃないってね」

「メリアは引きずってるのか?」

「ううん、アレスに会って私は救われたよ」

沈んだ表情から一点メリアは笑った。

「前にも言ったけどお父様やお母様以外に私を認めてくれた人はあなたが初めてだったのよ、"あなたと一緒に居たい”、こんなこと思うのはアレスだけよ」

メリアの表情はアレスが今まで見た一番の笑顔だった。


ドキッ


アレスは自分の胸が高鳴ったのを感じた。

「本当アレスに出会えてよかっ!?」

俺は気付いたらメリアの魅力的な唇に吸い付いていた。

「んちゅ、ちゅ」

数秒重ねて離した。

「な、な、ななな!?」

メリアは顔を真っ赤にして混乱した。

(今アレスが私にキ、キスした!?)

対するアレスの頬も赤らんでいた。

「ずるいぞ、いきなりそんな事言うなんて」

アレスは自分の理性が一瞬無くなったの自覚した。

「え、えぇー、私が悪いの!?、なんかおかしいよ!?」

「行くぞメリア、日が暮れる前に村に行かないと」

「ち、ちょっとアレス待ってよ!?」

アレスはなんか無性に恥ずかしくなりそう捲し立てるのだった。


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